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ウェズリーの街編
22.半月斧を持つ赤い鎧の青年はかく語りき(3)
しおりを挟む「依頼を、受けた、のは、昨日です。ぼ、僕は、見ての通り、緊張、して、上手く、話せない、から、人付き合いが、苦手で、き、昨日も、一人で、依頼を――」
何を話せば良いか分からなくなってしまう場面も出てきたので、途中で質疑応答に切り替えて話を聞いた。それによると、ルードは人と関わることが苦手で、いつも一人で依頼をこなしていることが分かった。誰に頼ることもなくコツコツと鍛練を行い、二十歳にしてゴールド階級にまで昇級した優秀な青年であることも。
そんなルードは、昨日、受付の職員に頼み事をされた。それがサラマンダーの捕獲依頼の受注。期限が翌日、つまり今日と差し迫っているのに、誰も受注してくれないからどうにか頼むと頭を下げてお願いされた。
ルードは悩んだが、今日明日と二日あればなんとかなるだろうと渋々ながらも引き受けた。だが話はそれで終わらなかった。他にも冒険者は大勢いるにも拘らず、十分過ぎる程に忙しくなったルードに、その職員は更に仕事を押しつけた。
「あ、丁度良いんでー、追加でこれもお願いしまーす」
今度は一切悪びれることもなく、そんな軽い言葉で、新米冒険者の引率を丸投げしてきた。ルードは当然、断った。こともあろうに、何故、自分なのかと。
すると職員は「え、ゴールド階級ですよね? 信じられなーい。このくらいできて当然だと思いますけどー?」と嘲笑混じりに煽ってきた。
「なんか、聞いてるだけで腹立ってくるな、その職員」
「都合のいいように利用してるよね、絶対」
「まぁまぁ、最後まで聞きましょ」
ルードは無理なものは無理だと断ったらしいのだが、途中で後ろがつっかえているからと追い払われてしまったという。人がいなくなるのを見計らって受付に行くと、何故か新米冒険者の面倒をみることを引き受けたことにされていた。
文句を言おうとしたが、言葉がつっかえて上手く出てこない。そうこうしている間にまた人が来て追い払われてしまった。よく分からない話だが、そのときに「既に決定されているので断れば降級ですから」という脅しも受けたのだとか。
「どの職員だそれは。俺が今すぐとっちめてやる」
「はいはい、サクやん落ち着いて。しっかり事情を聞いてからにしましょ」
そんな脅しまで受けたからにはやらざるを得ない。ルードは肩を落として新米冒険者を待っていた。だが中々来なかった。
ようやく姿を現したのは集合時間の一時間後。なるだけおとなしいのが来れば良いなと思っていたら、十代前半のわんぱく盛り。イタズラ小僧のような印象の猫人の少年が三人やってきた。
遅刻を注意すると、ルードが一時間早く来たのだと言い返す始末。少年たちはまったくルードに気圧されることなく、最初からまるで言うことも聞かなかった。
それでも依頼はこなさなくてはいけないので、押し問答もそこそこに、少年たちを連れて行くように言われた坑道に向かった。奥に行けばサラマンダーもいるので、運が良ければ捕獲も可能だろうと思っていた。だがそうはならなかった。
坑道では絶対にレールの切り替えレバーに触れてはいけない。
ルードは少年たちに厳重にそれを言いつけていた。少年たちは「分かりました!」と元気良く返事をしたはずなのだが、いざ坑道に入ると、あっという間にレバーを操作し、トロッコ同士の激しい衝突事故を引き起こしてしまった。
鉱夫のドワーフが乗っていなかったから良かったものの、トロッコは全壊、周辺に鉱石が散らばる大惨事。その上、少年たちは逃げ出してしまった。
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