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カナン大平原編
17.カナン大平原を越えよう(17)
しおりを挟む「ど、どうしたんすか⁉ 急に涙ぐんで⁉」
俺は照れ笑いしながら、鼻を啜って涙を拭う。
「あー、いや、話してなかったけどね、俺にはクルス・コーキって友達がいたんだよ。一文字違うけど、クリスとも読める漢字だったし、予言の中にも示すものがあったから、多分、本人だと思う」
「ってことは、ユーゴは初代国王の友達?」
「そういうことだね」
えーっ! という声が揃う。
質問が色々と飛んできたので、俺はコーキと自分の関係について話した。コーキの家族がどうなったのかも、すべて。
不思議と胸に穴が空いたようだった。コーキがこちらで生きていたことを知って嬉しかったが、既にこの世を去っている。それが無性に寂しかった。
「結構、複雑っすね。せめて時代が俺たちと重なってたら」
「悲しいよね。ユーゴも会いたかったよね」
「うん。でもそれだとクリス王国は存在してないでしょ? 俺たちは死んでたんじゃないかな?」
「そうだな、リンドウさんがいないことに……。おい、五百年前なら、イノリノミヤと関係があるんじゃないか?」
心臓が大きく脈打った。サクちゃんの言う通りだ。
もしかしたら何らかの繋がりがあるかもしれない。
俺は口を開きかけたが、俺より先にヤス君がアープに話し掛けていた。
「族長さん、イノリノミヤ神教とクリス王国についてなんすけど、何か口伝が残ってたりします?」
アープは頼まれて嬉しかったのか、フフンと鼻を鳴らして胸を張った。
「イノリノミヤ様はー、初代様と共に戦った二人の聖女様の一人ですー。戦場では獅子奮迅の大活躍をしたと言われていますー」
「繋がった! ユーゴさん、これ、あり得ますよ!」
ヤス君が興奮気味に言って俺の肩を掴んで揺する。
「ヤス君、分かったから落ち着いて。二人の聖女って聞いたでしょ? そこにもっとヒントがあるかもしれないから、喜ぶのはちゃんと聞いてからにしよう」
「ハハハ、そっすね! 族長さん、もう一人の聖女様について教えてください!」
「もう一人の聖女様はー、サーヤ・シンドゥー様ですー」
「サーヤ・シンドゥー様っすか。またオリエンタルな……」
突然、ヤス君が動きを止めた。あれほど興奮していたのに、まるで凍りついたように硬直している。
「サーヤ様はー、クリス王国建国後にー、遥か東方のシッダーマリ皇国を滅ぼしー、シンドゥー王国の初代女王となられた女傑ですー。イノリノミヤ様と並んでー、クリス王国二大聖女と呼ばれていたそうですー。今は――」
俺は説明を続けるアープを手で制し、ヤス君の肩を揺する。
「ヤス君、大丈夫? どうしたの?」
「どうされました? お加減でも悪くなられましたか?」
デネブさんが心配そうに様子を見に来る。
「進藤沙綾。山で死んだ、俺の、友達です」
「え?」
ヤス君の顔がくしゃっと歪む。笑い泣きしている。
「サアヤ・シンドウっす……! 生きてたんすよ……! こっちで……!」
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