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カナン大平原編

13.カナン大平原を越えよう(13)

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 つまむものがなくなったところでとばりが落ちた。

 星空の輝きが凄い。

「あー、これ魔物さえいなきゃずっと見てられるんすけどねー」

「警戒を怠る訳にはいかないからね。ヤス君の探知はあるけど、【光球】は幾つか浮かべておかないと」

「俺も手伝おう。何かダンジョンの上層を思い出すな」

 サクちゃんと一緒に【光球】を四方に浮かべる。

「そんなことしなくても、もう【箱庭】に入っちゃえばいいんじゃないの?」

「遊牧民とニアミスは避けたいんだよ。ユオ族だっけ?」

「そうそう。移動集落を拠点に遊牧してて、春夏期は北部にいるんだけど、秋冬期は南に移るって話。もう秋一期に入ってるから、南下してるはずなんだよ」

 カナン大平原の遊牧民は、土魔法で家屋を作り、畑で作物も作る。種族は獣人の狼人で、争いを嫌う平和な種族であるユオ族と、攻撃的なワブ族が存在する。

 ユオ族は平原西、ワブ族は平原東を縄張りにしている。

「ユオ族が風の祠を祀ってるんだよ。エノーラさんとこに行ったとき屋台の箸巻きみたいなの食べたでしょ? その屋台の店主がワブ族出身なんだよ。この話も、そこの店主から聞いたんだ」

「あー、確かに狼人だったね。あの人、盗賊だったの?」

「どういうことっすか? なんか急に物騒な話になったんすけど」

「えーっとね、ワブ族は旅人、商人、周辺の村を襲撃して略奪を行うことで盗賊として悪名高いっていう話が出回ってて、それで僕も店主がワブ族出身って聞いて驚いたんだけど、族長が変わる前はそうじゃなかったらしくてね。前の族長が亡くなったときに逃げてきたらしいよ。一年くらい前のことだって」

 フィルが話している間に、馬に乗った人影が幾つか見えた。かなり遠いが、徐々にこちらに向かっているのが分かる。

 サクちゃんが立ち上がり、指差す。

「おい、あれ」

「遊牧民との遭遇だね。問題は、ユオ族かワブ族か」

「ユオ族だよ。まだ中央に到達してないんだから」

「野盗の可能性もあるだろ。ヤスヒト、どうだ?」

「難しいっすね。探知範囲には入りましたけど、警戒してるような動きとしか言えないんで。こんな場所に光球浮かべてテーブル囲んでる連中がいたら、野盗でなくても警戒はするでしょうし」

「まぁ、それが狙いでもあったんだけどね。明るいと目立つし」

 おそらくはユオ族だと思われるが、念の為に後片付けをして待つ。しばらくすると、馬の数は五頭というのが判然とした。すべて人が乗っている。
 
 
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