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カナン大平原編
10.カナン大平原を越えよう(10)
しおりを挟む「瞬間的に出せば魔力消費もそこまで気にならないね」
「そうだな。範囲もそこまで大きくないから、要練習って感じか」
「ところでヤス君とフィルは?」
どこに行ったのかと思ったら、ロックサウルスの背後に回り込んでいた。二人で一緒にジャンプして姿を消す。
「何してんだあいつら?」
「いやさっぱり。フィルのジャンプ力の方にビックリだよ」
大人で、しかも鍛えたヤス君と変わらないくらい跳んでいた。一メートルは軽く超えていたと思う。頭の位置が並んでいた。
消えたってことは【箱庭】だよな。なんでジャンプなんか。
間もなく、ロックサウルスの岩甲羅の上に【箱庭】の扉が現れて、放り出されるようにヤス君とフィルが降ってきた。
「何じゃあ⁉」
「ハハハハ、あれはどうにもならんな」
ロックサウルスは俺たちに意識を向けている。甲羅の上の二人にまるで気づいていない。いつかは気づくのだろうが、そんな時間を二人が与える訳がない。
不意打ち上等とばかりにフィルが普段より鋭い角度のついた【風刃】を首の根元に連発していた。
肉が断ち切れる音が連続して鳴り、ロックサウルスの太い首が地に落ちる。間を置かずに、体も地に伏した。
ズズーンと衝撃で軽く地面が揺れる。
フィルとヤス君が岩甲羅から飛び降りる。俺とサクちゃんがそこに駆け寄って合流する。ジャンプの理由はそういうことね。
「フィル、今のって新術?」
「うん。【烈風刃】って術。初めて使ったけど、一発の威力は【風刃】の方が強い感じだったね。確実に当てられる場面じゃないと使えないかな」
「上から見ると足が竦むくらい高かったっすよ。近くで見ると迫力が凄いっすね。やっぱ三メートルはあるなー。もう一回り小さいと思ってたんすけどね」
「戦闘中に甲羅の上に乗るのは難しいと思ってたんだけどな。立ったら四メートルは超えてたもんな」
「大きいよねー。首も硬かったし、切れなかったらどうしようって、ちょっとヒヤヒヤしちゃった。こんなに簡単に討伐できるとは思ってなかったよ」
「そうだねー。ところで誰が収納する? 相当容量食うけど」
「じゃあ僕が」
とフィルが挙手したので任せた。ロックサウルスに近づき、地面に【異空収納】を出す。ロックサウルスの死体が切断された首ごと姿を消した。
「ふと思ったんだけどさ、ヤス君の【箱庭】って、あんな感じで地面に出せたりとかしない? 落とし穴みたいにして、閉じ込めちゃうとか」
「なるほど、やってみますか」
ヤス君が地面に【箱庭】の出入口を出現させる。そこに飛び込んだが、出てきたときは顔をしかめて足を引きずっていた。
「これ、天井から落下する感じになりますね」
フィルが回復術を使おうとしたが、サクちゃんが止めた。
「俺がやる」
「えー、回復術まで使えるようになってたの?」
「いや、まだ練習中だ」
「ちょっとサクやん! それ人体実験じゃないすか!」
サクちゃんのサイコパスっぷりがとどまることを知らなくなっている。ヤス君は全力で拒否したが俯せに組み伏せられてしまった。
「ええい、こうなったら!」
ヤス君が言葉を発した直後、二人とも【箱庭】に落ちた。
「フィルよ。二人が出てきたら俺が治療するよ」
「気絶してなきゃいいけど。あれお腹からいったよね」
その後、出てきたヤス君は顔面を強打していたようで、涙と鼻血を流していた。
サクちゃんはヤス君を怪我させまいと咄嗟に飛び退いた結果、着地のときに股関節が多大なダメージを負ったらしく、カニのような変な歩き方で出てきた。
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