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カナン大平原編
7.カナン大平原を越えよう(7)
しおりを挟む遥か先に飛んでいく矢を見つめ、しばらく呆然と佇む。
これは要するに、吸い込んだ攻撃をそのまま相手に返す術を生み出したということだと、俺だけではなく皆が理解しているはずだ。
ちょっとこめかみ辺りから汗が流れた。
「あのー、なんというかー、とんでもない術を開発してしまった気がするんだけども」
「これは是非とも教えてもらわないといけないっすね」
「そうだな。これは無属性だから俺たちも習得できるはずだ」
「ユーゴ、僕にもイメージについて教えてもらおうか」
カナン大平原を目にした瞬間に見せた仲間たちの清々しい顔立ちが、暗い欲望に塗れた邪悪なものに変わっていた。
そんなに欲しいのかこの術が。
「いや、イメージはさっき言った通りだよ」
だから獲物を捕らえるような手つきでにじり寄るのはやめて欲しい。そんなことをしても俺の困った顔の他は何も得られんぞ。
「普通の【異空収納】感覚でいいんすか?」
「俺はそのつもりだったんだけど、別の収納が出来ちゃってたね。収納するっていうより、吸い込むというか、攻撃を入れるイメージ。入れたナイフを取り出して投げるつもりだったし」
細かくそのときの気持ちを伝える。と、すぐにサクちゃんが似たようなものの生成に成功した。見た感じは黒い円の盾だ。
「おぉ、出来た。けどこれ、魔力がやばい」
「えー⁉ 何それー⁉ また僕だけ出来ないやつー⁉」
フィルが憤慨しているのを尻目に、俺はサクちゃんの作った異空盾に水球を当てる。バチッと音がして水球が掻き消えた。
「おー、サクちゃん成功じゃない?」
「キー! 維持できないんだけどー⁉」
地団駄を踏むフィルの頭を撫で、ヤス君はどうかと思って目を向けたのだが、俺は硬直した。ヤス君の目の前に、扉のような長方形の穴が出来ていた。
「あの……なんか俺、別物作っちゃったかもっす」
「いや、あの、何かでかくない?」
「これ、入れるんすよ」
ヤス君が長方形の異空間の中に入って姿を消す。そして異空間が閉じた。視界には平原の景色だけ。ひゅるりと風が吹く。
「おい、消えたぞ」
「消えたね。また訳の分からないものを」
「おかしいよ君たち……」
「じゃじゃーん!」
背後から声が聞こえて、俺たちはヒィッと跳び上がる。慌てて振り返ると、ヤス君が苦笑して頭を掻いていた。
「感覚っすけど、入った地点の半径三メートルくらいなら好きな場所から出てこれるみたいっすね」
「それ転移じゃん! 短距離だけど転移じゃん!」
「しかも通常の転移と違って出るタイミングも任意ってことか」
「無属性転移は不可能って本に書いてあったんだけど……」
「転移としては微妙っすね。一回使うと一分ちょっとは使えないみたいなんで。連発できれば最高だったんすけど、そう都合よくはいかないってことっすかね」
「いや十分でしょうよ。中はどうなってんの?」
興味津々で訊ねると、ヤス君が異空間に繋がる出入口を開けた。
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