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カナン大平原編
2.カナン大平原を越えよう(2)
しおりを挟むでは本物のハンはどの人相書の男なのか?
という話になったのだが、おそらくはミヅキさんの証言で描かれたハンが本物なのだろうということで話がついた。というのも、ハンと共に孤児院で過ごした者たちからの証言とも合致したからだ。
そして残る一人なのだが――。
「何でギーの人相書きがあんねや⁉」
ギーだった。人相書きが描かれた日の翌日、たまたま遊びに来ていたリンドウさんによって明かされた。
近況を報告して人相書きを見せたところ、サイガさんの証言で描かれた物を手にして声を張り上げた次第。
思わぬところで話が繋がってしまった訳である。
リンドウさんには取り敢えず落ち着いてもらったが、これが後々響いてくる。助力を請う必要があると思っていたマモリの二人が悩みの種になるとは思ってもみなかった。
ちなみにその日はシラセの二人とマモリ見習いの二人も来ていたので、ミヅキさんとフィルも交えて楽しく過ごした。
シラセの二人はフィルとも随分と打ち解けて、三人でお菓子を食べているところを見ていると心が和んだ。
サツキ君は相変わらずヤス君とオセロを楽しみ、ミヅキさんはスミレさんとのお喋りに興じていた。
最初は塞ぎ込んでいたミヅキさんも、スミレさんのお陰で少しだけ元気になった。辛い経験をした者同士、分かり合い、また分かち合える部分があったのかもしれない。
同じ種族な上に義理堅い性格もよく似ている二人は、なんとなく生き別れた姉妹のようにも見えた。まさか本当にそうだったりして、と思って口に出したら赤の他人だった。
俺の勘は相変わらずよく外れる。
そういえば、ミヅキさんはドグマ組長の形見になる魔石も受け取ったらしい。サクちゃんから伝えられたが、今後はミヅキさんと共に孤児院を運営するとか。
「そのまま一緒に暮らせば?」
「そうなるかもな」
冷やかしたつもりが、サクちゃんの口からあっさりとそんな言葉が返ってきて驚いた。
二人とも頬を染めて、満更でもない様子だった。
ドグマ組長がいたらもっと良かったんだけどな。と、感傷的になったのは蛇足。
構成員やハンの経営する店舗職員から得られた情報に関しては詳しく聞かなかった。というのも、サイガさんが押さえたドグマ組長の専属医から得た情報で、ハンがラグナス帝国と関係があることが既に判然としていたからだ。
エドワードさんが「この件に関して俺は何も知らないし見ていない。ゆえに法的措置はない」と断言したことで、サイガさんの脅しと拷問が大活躍し、医者は言葉通り何もかも吐いたそうだ。
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