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ドグマ組騒動編
18.ドグマ組長のお見舞いに行こう(13)
しおりを挟む「お帰り。遅かったね」
「いやー、参りましたよ。途中で立ち往生したんす。馬車の転倒事故があって通行止めになってて、迂回しなきゃいけなくて」
「ごめん、僕を探すのにも時間を取られちゃったっていうのもあるんだよ。今日は皆がいないからヨナ婆ちゃんのとこに行っててさ」
「すいません、お出迎えもせず」
ミヅキさんの言葉に「あ、お構いなく」と笑顔で返すフィル。
「違和感が凄いよな」
「遣り取りが日本人だからね」
サクちゃんとこっそり会話している間に、エドワードさんとレイさんがドグマ組長の側に移動していた。部屋の皆がそこに集う。
レイさんがドグマ組長の着物の胸元を開け、肌着を捲る。そして露になった胸元を見た瞬間、驚愕の表情を浮かべ目を見開く。
「これは……⁉」
「何か分かったんですかレイさん⁉」
「いえ、何も見えないのでね」
こいつもか。紛らわしい。
「呪いが発動しないと見えないってのは厄介っすよね」
「レイさん、見えるようにするものとかないんですか?」
フィルに訊かれ、レイさんは【異空収納】から虫眼鏡のような物を取り出す。
「一応、こんなような見えないものを見ようとして覗き込んだりする魔道具はあるにはあるんですがね、本来は天体観測用でして必ず見えるとも限らないので、どれどれ、ああ、大丈夫ですね」
ドグマ組長の胸元にかざされた魔道具のレンズ越しに文字が浮かび上がる。レイさんは難しい顔で唸った後で、かぶりを振った。
「これは駄目ですね。解くと命を落としますね」
「なっ――⁉」
サクちゃんとミヅキさんがレイさんに詰め寄る。
「魔物化するという推測も正解ですね。これは常に許容量を超えた魔素を体内に吸収し、身体増強効果を与える命令式が書き込まれていますね」
「それは魔素過多による弊害は起きないんですか?」
レイさんが驚いた顔で俺を見る。
「良くご存知ですね。関心です。これはとても嫌らしい命令式でね、魔石の粉末を経口摂取するなどの直接的なものではないので臓器を傷めることはなく、また魔力経路のダメージも増強効果として発散させることで抑えているようですね。更にはすこぶる調子が上がる為、魔素過多による具合の悪さを感じさせないんですね」
そもそも魔力とは、外部から取り込んだ魔素を魔器という目には見えない臓器に溜めて変換させたものだそうだ。魔力が時間経過と共に自然回復するのはその為。
レイさんによると、この呪いは長期的に若干量の魔素過多状態を継続させることで魔器をじわじわ侵食し、やがて魔石に変えるのだという。
「どうやらラグナス帝国が絡んでいるというのは間違いなさそうだ。クリス王国でこのような呪いを研究するなどあり得んからな」
「そうですね。クリス王国でこんなものの研究などすれば即刻牢獄行きですね」
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