180 / 409
ドグマ組騒動編
18.ドグマ組長のお見舞いに行こう(13)
しおりを挟む「お帰り。遅かったね」
「いやー、参りましたよ。途中で立ち往生したんす。馬車の転倒事故があって通行止めになってて、迂回しなきゃいけなくて」
「ごめん、僕を探すのにも時間を取られちゃったっていうのもあるんだよ。今日は皆がいないからヨナ婆ちゃんのとこに行っててさ」
「すいません、お出迎えもせず」
ミヅキさんの言葉に「あ、お構いなく」と笑顔で返すフィル。
「違和感が凄いよな」
「遣り取りが日本人だからね」
サクちゃんとこっそり会話している間に、エドワードさんとレイさんがドグマ組長の側に移動していた。部屋の皆がそこに集う。
レイさんがドグマ組長の着物の胸元を開け、肌着を捲る。そして露になった胸元を見た瞬間、驚愕の表情を浮かべ目を見開く。
「これは……⁉」
「何か分かったんですかレイさん⁉」
「いえ、何も見えないのでね」
こいつもか。紛らわしい。
「呪いが発動しないと見えないってのは厄介っすよね」
「レイさん、見えるようにするものとかないんですか?」
フィルに訊かれ、レイさんは【異空収納】から虫眼鏡のような物を取り出す。
「一応、こんなような見えないものを見ようとして覗き込んだりする魔道具はあるにはあるんですがね、本来は天体観測用でして必ず見えるとも限らないので、どれどれ、ああ、大丈夫ですね」
ドグマ組長の胸元にかざされた魔道具のレンズ越しに文字が浮かび上がる。レイさんは難しい顔で唸った後で、かぶりを振った。
「これは駄目ですね。解くと命を落としますね」
「なっ――⁉」
サクちゃんとミヅキさんがレイさんに詰め寄る。
「魔物化するという推測も正解ですね。これは常に許容量を超えた魔素を体内に吸収し、身体増強効果を与える命令式が書き込まれていますね」
「それは魔素過多による弊害は起きないんですか?」
レイさんが驚いた顔で俺を見る。
「良くご存知ですね。関心です。これはとても嫌らしい命令式でね、魔石の粉末を経口摂取するなどの直接的なものではないので臓器を傷めることはなく、また魔力経路のダメージも増強効果として発散させることで抑えているようですね。更にはすこぶる調子が上がる為、魔素過多による具合の悪さを感じさせないんですね」
そもそも魔力とは、外部から取り込んだ魔素を魔器という目には見えない臓器に溜めて変換させたものだそうだ。魔力が時間経過と共に自然回復するのはその為。
レイさんによると、この呪いは長期的に若干量の魔素過多状態を継続させることで魔器をじわじわ侵食し、やがて魔石に変えるのだという。
「どうやらラグナス帝国が絡んでいるというのは間違いなさそうだ。クリス王国でこのような呪いを研究するなどあり得んからな」
「そうですね。クリス王国でこんなものの研究などすれば即刻牢獄行きですね」
0
お気に入りに追加
435
あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる