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ドグマ組騒動編

4.エドワード・マクレーンという男(4)

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 エドワードさんが話したのは、開拓村の元村長が引き連れていた偽衛兵たちの正体だった。なんと、ヒューガ組の運営している警備会社の社員だったそうだ。

「当初の話では『夜盗に襲われたから屋敷の警備を行って欲しい』ということだったそうだが、いざ村に行ってみると『夜盗が集まっているから討伐して欲しい』という話に変わり、警備会社の面々も混乱していたそうだ」

「あのおっさん、最低最悪じゃないですか……」

「ここまで聞くと喜劇俳優っすよね。周りはまったく笑えないっすけど、どこまで嘘をき続けて、どういう風に人生が転がっていくのかをもう少し見てみたかったような気もしますね」

「ヤスヒト不謹慎だぞ。被害者もいるんだからな」

「まぁ、そう言うなサクヤ。ヤスヒトも悪気があって言ってる訳じゃない。俺も気持ちは分かるからな。あの男は確かに喜劇俳優だった。転がった先があの村で、物語は終わってしまったがな。腐敗貴族の中でも、権力があれば嘘を本当にしてしまえるという悪癖あくへきが染みついた者は憐れでな。力技でどうとでもできるから、気づかないうちに、まともにものを考える力がなくなるんだ」

「盤面が真っ白に近づいたオセロ盤をまったく関係のない一手で全部真っ黒にできちゃうんですから、考える必要もないですよね」

「そりゃ頭が育たない訳っす」

 警備会社の社員たちも既に仕事として請け負っている以上は業務を遂行すいこうする必要があったのだが、ミチルさんが出てきて話が変わった。

「社員の中に、ミチルに殴られた者が二人いただろう?」

「いましたね。生きてたんですかあの人たち?」

かろうじてな。お前たちは気づいていなかったかもしれないが、ほとんどの社員は刃を潰した武器を使っていた。それでも殺傷能力はあるが、基本的には拘束を目的としている為、殺害の指示には原則従わないことになっている」

「殺害指示に従わないって、いや、待ってください! それはおかしくありませんか⁉ この目で見ました! 村人は殺されそうになってましたよ!」

 サクちゃんが興奮した様子で椅子から立ち上がる。エドワードさんは「落ち着け」と声を掛け、また座るように手振りで示す。

「んー、全員同じ板金鎧姿だったし、顔も見えなかったからなんとも言えないけど、ビルさんを狙ったナイフの投擲者と、真っ先に殺害指示に従ってミチルさんに飛び掛かったのは同一人物だったのかな?」

「あり得ますね」

「いや、ナイフの投擲者は逃げ出した方だ。こちらで調べてみたところ、ミチルを襲った者と、逃げ出した者の二人だけは刃を潰していない武器を所持していた。それでその二人だが、ドグマ組の傘下の者だった」

「ドグマ組⁉ またハンとかいう奴ですか⁉」

 サクちゃんが苛立っているのが分かる。曲がったことが大嫌いな性分なので仕方ないが、怒っても仕方がないことなので、ちょっと頭に氷を置いてあげる。

「ユーゴ、これは?」

「頭を冷やしてもらおうかと思って。ここで怒鳴っても何も変わらないからね」

 サクちゃんは我に返ったようにその場にいる全員の顔を見て、謝罪しうつむいた。こんなに分かりやすく気落ちしている姿を見るのは初めてだったので驚いた。

 後で聞いたが、自分一人だけが術の開発に遅れているのをの当たりにして余裕がなくなっていたのだとか。

 気持ちは痛いほど分かった。俺も【過冷却水球】を開発するまでは不安だったし、ヤス君の【氷柱舞ツララマイ】を見たときも少し焦った。

 とはいえ、最初は棒の生成で大幅リードしていたのだし、術なしの接近戦だと俺もヤス君も敵わないのだから、どこまで一人でやろうとしてるんだという気持ちにもなる。ヒーロー願望が三人の中で一番強いのは間違いなくサクちゃんだろう。
 
 
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