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海辺の開拓村編
15.相手が子供でも棍棒で殴られたらそりゃ折れる(3)
しおりを挟むうん、痛みはない。完全に回復したようだ。
俺が右腕を上げて構えると、ゴブリンが明らかな動揺を見せた。
その隙に、俺は素早く距離を詰め、森から最も遠い位置にいる向かって左側のゴブリンを右拳で軽く殴りつける。
顎の側面に綺麗に入った。頭がグリンっと動いたのを確認しつつ、バックステップ。
真ん中のゴブリンが棍棒を振りかぶって飛び掛かってきたので、サイドステップし、顔面に右足でハイキック。
ゴブリンが地面に落下し、大の字になる。俺はまた距離を取って構えた。
最初に殴ったゴブリンを確認。武器の棒切れを手放しふらふらになっている。この状態なら、しばらく放っておいても大丈夫だろう。
残る一匹と向かい合う。手には短刀。錆びてボロボロだが、刃物であることには違いない。
斬撃を受けるのは避けたいんだよな。
傷より血を失うことが困る。回復術では血液を増やすことはできず、排出された体液も戻せない。それが常識。おかしいと言われる俺の術もそこは同じようだった。
そういった訳で、短刀持ちのゴブリンを最後にしたのは怯えて逃げてくれないかという淡い期待を抱いてのことだったのだが……。
こりゃ大失敗。仲間思いな奴だったか。
怒り狂って、凄まじい威嚇をしてくるようになった。めちゃくちゃに短刀を振り回すので、余計に斬撃を食らうリスクを上げてしまった。
が、しかし、そんなことはもうどうでも良い。
実戦経験を積むために肉弾戦だけで倒したかったのだが、どうしても耐えられなかった。
臭い。とにかく、臭い。もう鼻が曲がりそうなほど臭い。よくもまぁ、こいつらは自分たちの臭気に耐えられるものだと思う。その鼻は機能しているのか本当に。
一刻も早くゴブリンから離れたいという一心で、最後の一匹の進行方向に【過冷却水球】を設置。
ゴブリンは顔面から【過冷却水球】に飛び込み凍りつく。俺はすかさず追加の【過冷却水球】を生み出し浴びせ掛け続ける。ついでに残りの二匹にも。そうこうしているうちに、ゴブリンの氷漬けが三体出来上がる。
最初からこうしてりゃ良かったなー……。
手を嗅いで確認すると真面目に眩暈がして意識が遠のきかけた。これは、生乾きの洗濯物や雨に濡れた野良犬など比にならない。最早ディーバラをも超えている。悪臭世界ランキングがあったなら、間違いなく上位勢はゴブリンで占められるだろう。
などと思ったのはさておき、ここからがまた厄介。魔物の死骸を放置すると、アンデッドに転じたり他の魔物の餌になったりするので、埋めるなり燃やすなりの処理が必要になる。それらができない場合は、街道から離れた場所に運ばねばならない。
俺は穴を掘る道具も火を起こす道具も持っていない。属性もそれらの作業に対応していない。なので選択肢は一つしかない。葛藤はあったが、俺はゴブリン三匹の死骸を【異空収納】に収めた。
魔石は……森の中に捨て置くときに取ることにした。冒険者は大変だ。
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