【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人

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宿場町~裏社会編

33.マッドピエロ戦とアルネスの街への帰還(3)

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「よっしゃあ!」

 二人の歓喜の声を聞きつつ、俺は転倒したマッドピエロに駆け寄り蹴り上げる。念動力を加えて、二発、三発と蹴りを入れて持ち上げていく。

 こいつ重いな! あ、氷の分か! 氷結解除! よし、ある程度浮いたな!

「サクちゃん!」

「任せろ!」

 サクちゃんが助走後に跳躍し、マッドピエロの顔面を棒で捉え、そのまま地面に叩きつける。するとパーンッと風船が割れるような破裂音。

 辺りに色とりどりの紙吹雪が舞い、ファンファーレが鳴った。

「おー。演出もピエロっぽいな」

「そっすね。あー疲れた。初苦戦じゃないすか?」

「攻撃は大したことなかったけど、鬱陶うっとうしかったね。フィルもいなかったし」

 階層主の部屋は、倒した魔物が姿を残さず消えてしまう仕様になっている。ドロップアイテムなるものがあるそうだが、まだ一度も取得できていない。

「おーい、フィル、大丈夫か」

 声を掛けると、フィルはすぐに目を覚ました。ハッとした顔で周囲を確認する。戦闘が終了したことを伝えるとがっくりと肩を落とした。

「ごめん……。僕、役立たずだった……」

「いや、今回はフィル君のお陰で勝てた感じっすね」

「あー、やっぱそうか」

「どういうことだ?」

 怪訝な顔をするフィルとサクちゃんにヤス君が説明する。それは俺が予想した通りのものだった。

 俺たちがマッドピエロの【ラヴァーズマリオネット】に掛からなかったのは【魅惑無効】スキルを持っていたからだ。

「つまり、俺たちが操られなかったのは、フィルの神樹もなんたらかんたらの笑顔のお陰ってことだよ」

「神樹も花咲く絶世の笑顔だろ」

「サクやん、よく覚えてたっすね。まぁ、今回ばかりは真面目に危なかったっすね。【魅惑無効】持ってなかったら詰んでた可能性大っすよ」

 ヤス君の深い溜め息を聞いて、ようやく事の重大さに気づかされた。急に血の気が引いて、背筋が凍ったような感覚に襲われる。

 そうだよな、誰かが死んでたかもしれないんだよな。

 俺だけかと思ったが、サクちゃんもフィルも、笑顔ではあるが青褪あおざめていた。俺たちは調子に乗っていた気がする。

「まぁでも、これでシルバー階級までは上がれる条件が整いましたね。これからはまたじっくり鍛えて対策練っていきましょう。まだまだ先は長いっすよ」

 ヤス君が上手くまとめて締めてくれたので、おかしな空気は払拭された。

 俺たちは決意を新たに、次の階層へ進む部屋の扉を開け、そこにある転移装置を使ってダンジョンを脱出した。そして、ビンゴさんの解体屋に向かった――。

「普段は面倒でやらねぇけど、今回は一部目録用意したから、そこの積荷はお前さんたちの【異空収納】に入れてくれ。そしたら全員乗れる」

「ありがとうございます。今回もお世話になります」
 
 
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