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宿場町~裏社会編

23.初絡まれテンプレ展開とダンジョン特急探検隊(1)

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 俺たちが宿場町に着いたのは午後一時半を過ぎた頃だった。門兵のドニーに軽く片手を上げて挨拶する。ドニーは笑顔で迎えてくれた。

「ああ、皆さん、おかえりなさい。闇属性は取得できましたか?」

「うん。だけど酷い目に遭いましたよ。沼からウナギみたいな魔物が出てね」

「え、沼から? まさかポイズナプリーが出たんですか?」

 名前を言われても、俺たち渡り人組は元よりフィルですら知らないので、サクちゃんに【異空収納】から魔物の頭を出してもらう。

「これは……確かにポイズナプリーですね。報告ありがとうございます。それにしても、皆さんは運が良かったですね」

「え、どういうことですか?」

 詳しく訊くと、このポイズナプリーなる魔物は繁殖期以外は姿を見せないという。自ら現れたということは、その繁殖期に入った証拠で、特に繁殖場所の沼は危険が増すとのこと。

 不定期で訪れる繁殖期、有毒、仲間が攻撃されると群れを成して襲ってくるなど、ポイズナプリーはかなり厄介な性質を持つ魔物で、毎年多くの被害者を出しているとか。

「繁殖期が始まった際は、間引きが終わるまでブロンズ階級以下の立ち入りを禁止にしているんです。それまでは闇属性の取得ができなくなりますから」

「あー、そういうことかー」
 
 なるほど納得。俺が何度も頷いていると、それまで苦笑していたドニーの顔がふと真面目なものに変わった。

「しかし、よく無事でしたね? 気配を隠すのも上手い魔物ですから、シルバー階級の冒険者でも怪我をすることがあるくらいですよ? まして、死骸の頭を持ち帰ってくるなんて」

「全身あるぞ。出すか?」

「だ、駄目ですよ! ここでは出さないでください!」

 慌てるドニーに「冗談だよ」と笑顔で手を振って、俺たちは宿場町の中へ入る。

 だが、サクちゃんは冗談ではなかったらしく「見せないのか?」と訊いてきた。

 フィルとヤス君はうつむいて聞こえない振りに徹していたので、俺が優しく肩に手を置いて頷いておいた。柔らかな微笑みも忘れずに。

 宿場町は西部劇で見るような町並みで、それなりに人が多かった。そしてそのほとんどが冒険者。装備品を身に着けたあらゆる種族の男女が往来している。

 取り敢えず、食事をとりたいので店を探す。途中、娼婦らしき女性たちが客引きをしているのを見つけた俺は、すかさずフィルと手を繋いだ。

 フィルは驚いた顔で俺を見たが、すぐに意図を理解したようで、非常に悪い顔をした。

「ねぇ、お兄ちゃん、僕お昼ごはんは一番高いのが食べたいなぁ」

「しょうがないなぁ、もう。ちゃんと後で返すんだぞ?」

「なんで借りたことになってんだよ! そこはおごれよ!」

「何してんだお前ら」

「兄弟を装って娼婦を避けようって考えっすね。そんなことしなくったって、相手にしなきゃいいだけじゃないっすか。あんなの」

 ヤス君は呆れたように言ったが、いざ娼婦の前を通った際に熱烈な誘惑を受けてタジタジになった。

 俺はフィルと兄弟の振りをして難を逃れたが、サクちゃんとヤス君は断り方に困ったようで、通り過ぎるのに少し時間が掛かった。

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