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宿場町~裏社会編
22.宿場町に到着したなら毒の沼地で遊びましょう(6)
しおりを挟む俺とヤス君は慌てて飛び退いたが、ちょっとした豪雨ばりに水が飛んできた為、全身に飛沫を浴びてしまった。
「うーわ、最っ悪! 何すんだこのバカちんが!」
「マジでふざけんな! こ、この、クソウナギが!」
沼から飛び出してきた魔物を睨みつけ、二人で罵声をぶつける。そうは言っても、でかいし気持ち悪いので結構引く。ヤス君も狼狽えている。
初撃は避けたが、ヤス君も襲われる直前まで気づかなかった。細かい牙だらけの吸盤のような口が悍ましい。ヤツメウナギに似てるが、ミミズにも見える。
その魔物の頭が、突如、肉を断ち切られるような音を発した。
「離れてー!」
フィルが叫んだ。その声に従い、俺たちはアワワワと慌てふためきながら沼から離れる。
ちらっと後ろを確認すると、先ほどの魔物が沼地の縁に倒れ込むところだった。
ドターンと倒れた拍子に頭が取れ、沼の水飛沫と泥濘の泥が跳ね上がる。
「こらフィル! 危うく下敷きだぞ! 助かったけども!」
「そっすよ! 順序が逆っす! 助かりましたけど!」
「ご、ごめん! 焦っちゃって!」
「ところで、ありゃ何だ?」
「知らないよ! サクちゃん収納してきてよ! 俺らもう嫌だよ!」
不満を叫ぶと、サクちゃんがたじろぎ、渋々魔物の側に行く。
魔物の死骸を確認し、胴体と転がっている頭までを【異空収納】に入れたところでまた沼が爆ぜた。
サクちゃんは素早く飛び退くが、沼の水飛沫を食らって俺たち同様びしょ濡れになる。
俺とヤス君で手を叩いて大爆笑。
何これめちゃくちゃ面白い。
「おいそこー! 笑ってんじゃねー!」
「アーハハハ、も、もういいから逃げてきなよー」
「うるせー! バカヤロー!」
沼から鎌首をもたげるようにしているウナギ状の魔物とサクちゃんが睨み合っている。
さっきの俺たちと状況は同じだ。ここでフィルが黙って【風刃】をぶつければ、再現映像が完成する。となればもうお願いするしかないだろう。
「フィル【風刃】やってくれるか?」
「何言ってんの⁉」
「ハハハハ、サイコパス発揮してますね」
残念ながら、そんな遣り取りをしている間にサクちゃんが槍を作り出し投擲。魔物の体に突き刺さった。
魔物はギィイイと耳障りな鳴き声を上げながら長い体をうねらせる。体に刺さった槍を抜こうとしているのか、絡んだ紐のように丸まり、のたうち回る。
「うおー、気持ち悪ぃっ!」
サクちゃんが叫びながら駆けてくる。そこでフィルが【風刃】を数発放ち、魔物を切り裂いた。血飛沫が上がり、沼から新たな魔物がぬっと顔を出す。
一匹、二匹。細いのや太いのが次々に増えて背筋が寒くなる。
「うおお、キモっ! 何だよアレ! 付き合ってらんねーよ!」
「収納はー?」
「うるせー! お前がやれ! 俺はいらん!」
大笑いしながらお冠のサクちゃんと合流。俺たちは水術で全身を洗浄し、フィルの風術の風を浴びつつ談笑しながら宿場町へと戻った。
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