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宿場町~裏社会編
18.宿場町に到着したなら毒の沼地で遊びましょう(2)
しおりを挟む「あのー、衛兵さん? これってどのくらいの情報が確認できるんですか?」
「名前と年齢と種族と階級までですね。姓と種族の詳細までは読み取れません。例えば、僕は貴族の三男坊で亜人族、半獣人の半虎人なんですが――」
衛兵が自分のカードを出して、リーダーに差して画面を見せてくれる。表示されたのはドニーという名前と十八歳の亜人であることだけ。
「こんな感じです。階級が表示されないのは、これが役所で発行している身分証明証だからです。冒険者ギルドカードだとちゃんと表示されますが、それだけですね。ほとんど何も分かりません」
「確かに。これじゃあドニーさんが話してくれた部分までは分からないね」
「ドニーでいいですよ。詳細に表示するものもありますが、それを使うのはこの読み取り器が警告表示を出したり、貴族が自己申告した場合に限ります。得られる情報が少なければ、僕らも余計な厄介事を抱えなくて済みますから、このくらいが丁度良いんですよ」
「なるほどねー。詳しく教えてくれてありがとう」
いえ、当然のことです、と笑顔でドニーが言う。
犬歯がやや鋭く、瞳孔が縦長であること以外は、まったく虎の要素が見えない好青年な衛兵ドニーに手を振って、俺たちは毒の沼地のある森へと向かった。
歩き始めの時点で、こっそり歩幅をフィルに合わせるようにお願いしようと思っていたが、俺の考えていることがヤス君とサクちゃんには既に伝わっていたようで、自然と歩みはフィルの歩幅に合わせたものになっていた。
それでもやはりフィルは無理に急ごうとしたので、三人で代わる代わる止めて談笑しつつ歩いた。
「あ、止まってください」
二十分ほど歩き、毒沼のある森を目前にしたところで、不意にヤス君がそう言った。俺たちを手で制し、すぐに森を指差す。
木陰から、小型の鹿のようなものがこちらを見ていた。数は二頭。
「あれって魔物? 回答は早押しでお願いします」
「お、おぉ? 何言ってんだお前?」
「デモディアだね。魔物だよ」
「どうします? もう気づかれてますけど?」
小声で遣り取り。警戒しつつデモディアと睨み合う。距離は三十メートルほど離れている。ヤス君が気づいていなければ不意打ちを食らっていたかもしれない。そして俺のボケは見事にサクちゃん以外からは流された。
「どうしよっか? 僕がここから攻撃する?」
「それは少し待って欲しいっすね。サクやんは何秒で距離詰めれます?」
「三秒は掛かる、と思うが分からん」
「ヤス君、まずは俺がアレ仕掛けてくるわ」
ヤス君が頷いたので、俺は前進しつつ小型の【過冷却水球】を五メートルほど先に適当に置いていく。
距離が二十メートルほどになったところでデモディアが一頭木陰から飛び出し、突っ込んできた。もう一頭は、突進の準備をしている。
俺は角を向けて突進してくるデモディアを横に転がって躱す。顔を上げると、跳躍中のサクちゃんが棒を振りかぶっているのが見えた。
シッという空気を吐き出すような声と共に、サクちゃんが棒を振り下ろす。
それは凄まじい勢いでデモディアの頭を打ち、そのまま地面に叩きつけた。
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