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宿場町~裏社会編
15.ビンゴの祝福(4)
しおりを挟む「ユーゴ、代わってもらっていいか?」
サクちゃんが、荷台から顔を覗かせて言った。俺の姿を認めるなりという感じで、顔がしかめられている。
「どうしたの?」
サクちゃんはビンゴさんの方を気にしながら手招きする。俺が荷台に近づいて顔を寄せると、耳打ちするような素振りで、尻が痛いことを明かした。
「ハハハ、お大事に。俺が走り疲れたら代わってもらうことにするよ」
「くそっ、さっきまで勝ち誇っていた自分を殴ってやりたい気分だ」
フィルはどうしているのか様子を見たら寝ているようだった。荷箱に挟まれてとても窮屈そうに見えるのだが、狭いところが安心するのかもしれない。
「そういえば、依頼ってどんなの受けたの?」
「ん、ああ、ユーゴはトイレに行ってたな。ダンジョンの中層以降に出るイビルバイパーとかいうでかい毒蛇の素材と魔石の納品だ」
「中層以降って、大丈夫なのそれ?」
不安になって訊ねると、御者台でヤス君にされたように、サクちゃんにまで肩を竦められてしまった。
「納品期限が一ヶ月あるし、納品個数も少ないから大丈夫だろうってミチルさんがな。ちなみに納品数は三匹分だ。何人も命を落としてるらしい」
「そんな危なそうなの、よく皆納得したね」
「報酬がな。全員の一段階ランクアップと金貨二十枚だ」
「い! 二十枚はでかいね。一人五枚か」
「いや、実は買い取りの方が得なんだ。魔石含めて、金貨十枚が素材の相場らしい。だから損はするんだが、金は他で十分補えるから大差はないってフィルが言うもんでな。ブロンズへのランクアップを優先した感じだな」
ブロンズに上がるには、アイアンの依頼を三回、もしくはブロンズの依頼を一回成功させた実績と、ダンジョン中層到達の実績が必要。
一つ上の階級の依頼までは受注可能なので、アイアンのサクちゃんがいたからこそこの依頼が受注でき、且つ俺たちはスピード昇級が狙えるという訳だ。
取らぬ狸の皮算用になるが、この依頼を達成すれば、俺たち全員がその条件を満たすことになる。
だがノービスからの飛び級は認められていない為、サクちゃん以外の昇級はアイアン止まりになる。
「まだ先の話だけど、この依頼を達成した後、アイアンになった俺たちがブロンズに上がるにはどうすればいいのかね? 条件達成してるけど」
「アイアン以上の依頼を一回でもこなせば昇級だそうだ。フィルもまったく同じこと訊いてたぞ。たまたま知り合いと会って挨拶してたからちゃんと聞けなかったが、階級が高いと信用がどうとか。まぁ、何にせよ運が良かったことは確かだな」
「信用は貸家のことだろうね。見た目が子供だから、ランクで示すしかないってことでしょ。それで、運がいいって?」
「この依頼はギルマスが依頼主でな、滅多に出さない上に報酬も安いが、ランクアップ用のボーナス依頼みたいなもんなんだそうだ。ブロンズ依頼の中でも比較的簡単な方なんだと」
流石に呼吸が乱れてきた。へー、と生返事をして話すのを止め、馬車の横に移動。息を整えつつ走る。
体感で四五十分ほど経過した頃、街道脇の林の側に壊れた馬車の残骸らしきものが見えてきた。
俺は御者台の横に並ぶ。ヤス君もビンゴさんも気づいていた。残骸に近づこうと走る速度を上げると「慌てなくていい」とビンゴさんに止められた。
「どうせそこで止める」
ビンゴさんは調子を変えずにそう言った。
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