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宿場町~裏社会編
5.逆転の発想と熟練冒険者との出会い(5)
しおりを挟むサクちゃんからOKが出たので再び模擬戦の場へ。審判のヤス君を中央にして、離れて向かい合い一礼。楽しみで鼓動の速度が上がる。
「じゃあ、どうぞ。はい、始めてください」
気の抜けた開始の合図で、サクちゃんが棒を生成しながら距離を詰めてくる。
俺は【過冷却水球】を作る準備をしつつ警戒。
一定の距離を保つことに努める。が、棒の生成が完了したサクちゃんが脚力にものをいわせて突っ込んできた。間合いが迫る。
はやっ!
俺はどうにか反応できた。後方に飛び退きつつ、サクちゃんの足元に当たるようにピンポン玉サイズの【過冷却水球】を設置する。
やばいやばいやばい間に合わーん!
一個目を作り終えると同時に二個目の生成も始める。
焦る。次は手の平サイズにしたかったが生成速度が遅くて無理。作りかけで位置と高さをずらして配置し念動力で留める。
サクちゃんは、その両方を脚に受けた。
それを確認しながら、サクちゃんの着地するであろう位置に三個目をと思ったが無理。まったく間に合わない。生成速度が全然足りない。
「うぉ、冷てぇっ!」
着地後、サクちゃんが叫ぶように言った。着衣の氷結を確認することに気を取られている隙に、足元付近に【過冷却水球】を生成し落下させる。
「うわ、また!」
サクちゃんが忌々しそうに俺を睨んで距離を詰めてくるが、明らかに動きが鈍くなっている。どうも凍りついた着衣が邪魔をしているようだ。
よし、これならいける!
サクちゃんの直接攻撃の範囲に入らないように距離を取り、手の平サイズの【過冷却水球】を置くタイミングを見計らう。進行方向を見定めて、なるべく死角になる場所に置いて衝突を狙いたい。
そう考えていた矢先に突っ込んできてくれた。
後方に飛び退きつつ【過冷却水球】を設置。着地する位置を目算で測ってもう一つ設置。生成に掛かる時間とサイズの兼ね合いが分かってきた。
でも、まだまだ遅いから要練習だな。
「冷てぇー!」
そう叫んだ後で、サクちゃんは尻餅をついた。設置した術がすべて命中。太腿から下が、まばらに氷結していた。
俺が素早く距離を詰めると、サクちゃんが両手を上げて降参のポーズを取った。俺は術を解除し、サクちゃんの脚から氷結を消す。
立ち上がり、作務衣に付いた砂埃を払いながらサクちゃんが口を開く。
「参った。これはヤバイ」
「いやー、やっと一勝できたよ。どんな感じだった?」
「置かれたのは分かったし見えてもいたんだけどな、そのときにはもう体が止められん状態だったから、諦めて受けたんだが、思った以上に冷たいし硬いし、転んだ瞬間に詰んだと思ったな」
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