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アルネスの街編

46.神樹も花咲く絶世の笑顔(6)

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「魔素溜まりの対処が済んだから、困ってることでもないか思うて久々に様子を見にきたら、なんや、カキ氷屋て。しかも大繁盛しとるし。おもろ過ぎるやろ」

 扇子で顔を扇ぎながら愉快そうに大笑いしだすリンドウさんの背後から、シラセの二人がひょっこり顔を出す。

「ユーゴ!」

 俺と目が合うなり、サイネちゃんが満面の笑みを浮かべて飛びついてくる。

「おー、サイネちゃん、よく来てくれましたね。外は暑かったでしょ」

「そうなのです。腹立たしいほどの快晴なのです」

 若干プンスコするサイネちゃんの頭を撫でてから片腕に載せるように抱っこして、迷惑にならないようにお客さんの列から離れる。

「ユーゴさんすいません、ちょっと離れます」

「うん、了解。お願いね」

 阿吽あうんの呼吸というのは、こういうこと。一から十まで言わなくとも、俺にはヤス君のしようとしていることがしっかりと伝わった。

 ウイナちゃん、寂しそうだったもんな。

 ヤス君は、ウイナちゃんと一緒にサクちゃんの所に向かったのだ。リンドウさんに転移をお願いして。

 そして多分、連れて帰ってくる。ヤス君ならそうする。そんな気がする。

「フィル、ごめん。一旦お客さん止めるよ」

「うん、分かった。多分、サクヤも来るんでしょ?」

 よく分かったね、と驚きをもって返すとフィルは「まぁね」と苦笑した。

「そのくらいは分かるよ。なるだけ急ぐね。あ、その子にこれあげて」

「おー、流石フィル、助かるよ」

 フィルがカキ氷を手渡してくれた。俺はそれを手に列の最後尾に立つ。

 初日の経験を生かし、予期せぬ事態への対処用に完売立て札を作ってある。

 俺はそれをカキ氷と入れ替えるようにして【異空収納】から取り出し最後尾に置く。そして再び取り出したカキ氷を、抱っこしたままのサイネちゃんに渡した。

 サイネちゃんはカキ氷を見て目をパチクリさせる。

「ユーゴ、これは何なのです?」

「カキ氷って言うんだよ。食べてみて」

 サイネちゃんが耳をピコピコ動かしながら、恐る恐るといった具合に匙でカキ氷を一掬ひとすくいする。その後、ちらりと不安そうに俺を見る。

「大丈夫。美味しいよ。ウイナちゃんの分もあるから心配しなくていいからね」

 俺がそう言い終えると、サイネちゃんは嬉しそうに笑い、すぐにカキ氷を一口ぱくりと食べた。

 それと同時に、ピーンと耳と尻尾が逆立った。毛が細かくざわついている。

 目を丸くした状態で固まり、さじは口に入れたままで身じろぎ一つしない。

 予想だにしなかった反応に困惑する。

 もしかして、食べさせちゃいけない物だったか?
 
 
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