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アルネスの街編

45.神樹も花咲く絶世の笑顔(5)

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 ミチルさんとエドワードさんが食堂から出ていくと、入れ代わりにまた見知った顔が現れる。この店が大繁盛だいはんじょうする切っ掛けを作ってくれた兎人の女性冒険者クロエさんだ。階級はシルバーで、ノービスの俺たちからすると大先輩になる。

「よっ、今日も来たよ」

 そう言って、こちらに向かって手を振る。俺は営業スマイルで歩み寄る。

「よく飽きませんね?」

「ここのカキ氷に飽きる奴なんていないと思うけどね」

 互いに苦笑する。クロエさんは白髪で肌が褐色かっしょく、身長が女性にしてはやや高めで、耳を含めると俺たち渡り人組を超える。

 熟練冒険者らしい鋭い目つきで、いつも革の胸当てを着用しており、素人目にもなんとなく良いものだと分かる槍を手にしている。

 勿論、危険がないように穂先ほさきに鞘が被せてあるし、そういった武器管理がされてさえいれば、武装して街を歩くことも認められているので何も問題はない。

「クロエさんは、あんまりカキ氷ってイメージじゃないんですけどね」

「あー、それは相棒にも言われたよ。けどユーゴに言われても腹立たしくないね。上品なイメージとか言ってくれるんだろ?」

「ええ、ヤス君もフィルもそう言ってましたよ。クールビューティーだって」

「アハハッ、お世辞でも嬉しいね。実際、カキ氷が似合いそうなのは相棒の方なんだけどね、あの馬鹿、誘っても来やしないんだよ。『カキ氷なんてガキの食うもんだ』なんて言ってね。失礼な奴だよ」

「そういうイメージを払拭ふっしょくできるように頑張りますよ」

 会話しているうちに、クロエさんが最前列になった。

 ヤス君が代金と引き換えにカキ氷を渡す。

「クロエさん、ちょっとオマケしときました」

 ヤス君がこっそりそんなことを耳打ちする。だがヤス君は間違えた。

 クロエさんの耳は頭の上だよヤス君。

 それでもクロエさんにはちゃんと聞こえていたようで、一瞬、驚いたような表情にはなったものの、感謝の言葉と苦笑をヤス君に返して食堂を出ていった。

「間違えました」

「うん、見てた。屈んだから頬にキスでもするのかと思って焦ったよ」

「うわー、そうかー。そういう勘違いされちゃったかもしんないっすね!」

「誤解は解けてるんだから大丈夫でしょ。ユーゴ、そろそろ氷切れそう」

「え、もう? 早いな」

 フィルの削り速度が相当上がったので、カキ氷の生産速度もまた上がる。その結果、時間効率が跳ね上がり、最近では昼過ぎには完売している。

 氷を作る速度は俺の方が上なので、ある程度魔力が減少するまで俺が担当している。その間、ヤス君には氷の維持を任せている。手が空けば接客や器の回収、洗浄、補充などを交代しつつ行っている。

「接客代わりま――あ!」

「よう」

 食堂の出入口から、リンドウさんが顔を出した。

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