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アルネスの街編
43.神樹も花咲く絶世の笑顔(3)
しおりを挟むトータル二十食ほどで魔力枯渇。十食の追加分は即完売。フィルも魔力が枯渇寸前になったのでそこで閉店。
元手に使ったのはシロップ代金の金貨一枚。二百食余り作れる量を用意できたが、たっぷり残して終了となった。
一つ銅貨五枚での販売で百五十食売れた。翌日以降の釣り銭確保の為、銅貨での支払いをお客さんにお願いしたので売上は銅貨七百五十枚。
うち二割を店主に渡し、シロップ代金を差し引いて儲けは金貨五枚分。
ヤス君は金貨一枚分で十分だと言い、俺とフィルに銅貨を二百枚ずつくれた。数えるのが大変だった。
そこから翌日のシロップ分の代金をそれぞれから徴収。五十食分は浮いているので、合わせて二百食に届く程度の原料を購入しに行く。
シロップは古い方から使い早めに消費。いくら砂糖を使い加熱もしているとはいえ、季節は夏。お客さんが食中毒にでもなったら作った俺の寝覚めが悪くなる。
食べ物は危険だ。細心の注意を払って管理して当然。それを怠る奴は料理なんてしてはいけないと俺は思っている。
安全第一、品質第二、生産第三。何かを生産する者は、これが鉄則。工場勤めの際に安全会議で口酸っぱく言わされ続けてきた言葉を思い出す。
うちのカキ氷生産者は衛生面でも精神面でも全員健全だった。俺は今日一日の皆の働きを思い返しながら、一人でうんうん頷いていた。
さて、その生産者の一人であり唯一の削り担当であるフィルいわく極薄削りは風の操作が難しく、かなり魔力燃費が悪いらしい。
一食で三十程度の消費。つまりフィルは五千近い魔力を保有しているということになる。
それを枯渇間際まで使わせるって……。
お給金、全員が同じでいいのだろうか?
見た目子供なハーフエルフのみブラックな環境。
駄目な大人になった気分に襲われ、人知れず精神にダメージが入ったが、アイデアと調理と雑用と接客は俺たちがやっているからと立ち直る。持ちつ持たれつだから問題はない。ないはずだ。
「ふぅ、久し振りにギリギリまで魔力使ったよ。これはいい修行になるね」
「間違いないっす。それに儲けもでかいですよ。ちょっと怖くなっちゃったくらい。二百食完売だと一人金貨三枚っすよ」
「でかいよねー。お客さんの反応を見た限り、リピーターは確実に出るよね。口コミで宣伝もされるだろうから、二百食売り切れる日は近いかもね」
「いや、あのさ、僕たちの魔力が保てば今日で完売達成してたと思うよ」
フィル、それを言うなよ。
深い深い溜め息。初日は全員が肩を落とす結末となった。
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