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アルネスの街編

42.神樹も花咲く絶世の笑顔(2)

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「う、美味え! 何だこれ! 雲食ってるみてぇ!」

「口溶けヤバっ! それに甘いけどスッキリしてる!」

「いやこりゃたまげたねぇ。このミルクと柑橘の香りがまた」
 
 カキ氷は飛ぶように売れた。長蛇ちょうだの列とまではいかないが、お客さんが途切れることはなかった。

 そして俺たちの魔力は凄まじい勢いで減っていった。
 
「す、すいません。俺、もう無理っす。何も出ねぇ」

「ヤス君⁉」

 百食作った辺りでヤス君が魔力切れを起こし、某水泳選手の名言のような言葉を吐きつつダウンした。それから三十食作って俺が静かに真っ白になる。

 フィルが店主から品切れ札を借りて持ち出したが、並んでいるお客さんの分くらいは作らないと揉めごとが起きると思い、俺はヤス君に現在の最後尾で列を切ってもらうようにお願いした。

 大袈裟な考えかもしれないが、荒事になると大勢に迷惑が掛かるし、何より計画が破綻とまではいかなくとも大幅に遅れる可能性が出てくる。

 それは避けねばならない。何としても。

「でもユーゴさんも燃え尽きたって感じじゃないっすか。もう魔力枯渇こかつしてるんすよね? 俺なんてもうイタチの最後っ屁どころか血も出ねぇよって感じっすよ」

「大丈夫。俺にはこれがあるからね。映画のキャッチコピーじゃないけど、灰になってもまだ燃えてみせるよ」

 俺は【異空収納】からヨナ婆さんの薬屋で購入した魔力回復薬を取り出す。

「なんすかそれ? 飴玉?」

「魔力回復薬。価格は銀貨一枚になります」

「うわ高いな! ここで使うのは勿体ないっすよ!」

「いや、どのくらい効果があるのか気になってたから、実験がてら今回だけ使ってみるつもり」

 魔力回復薬を口に放り込む。無味に近いほのかな苦みと、土と草の匂い。別段、気になるほどではないし不快感もない。

 つい舐めてしまったが、噛み砕いて飲み込むのが正しい使用法。軽く噛むだけで砕ける飴玉という食感。口溶けも良く飲み込みやすかった。

 ステボを確認したが、思ったよりも遥かに魔力回復量が少なかった。二百。俺の最大魔力量は八百ほどなので、およそ四分の一。

 カキ氷一食分の氷一個で十前後の魔力消費ってところか。とすると、ヤス君五百くらいしか魔力ないのか。

「ユーゴ、氷切れちゃった。追加お願い」

「あいよー。すぐ作るねー」

「それとヤスヒトがあと十人で終わりだってー」
 
 了解。と答えてからの十食販売後、予想通り百程度の魔力が残ったので、作れるだけ氷を作った。
 
 
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