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アルネスの街編

37.属性スタンディングオベーション(2)

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「へぇ、意外。ヤス君は光にすると思ってたよ。なんで闇にするの?」

「回復術使えないのは痛くないか?」

「んー、それも考えなかった訳じゃないっすけど、多様性があった方が良いと思うんすよ。戦闘スタイルは自然とそれが生まれてたんで気にしなかったですけど」

「俺が前衛、ヤスヒトが後衛、ユーゴは……どこでもできるな。確かに、打ち合わせもなく見事にバラけたよな」

 顎に手を遣って、神妙な顔をするサクちゃんを見て、ヤス君が苦笑する。

「俺は超助かりましたけどね。前衛なんて絶対無理だし、ユーゴさんみたいな動きも無理。自分から後衛を選んでも許された上に、文句も言われませんからね」

「言えないよ。弓の的中精度とか諸々凄いからね。俺の立ち位置が一番器用貧乏臭くて、これで大丈夫なのか不安になることがあるよ」

「話を聞く限りだと一番どこのパーティでも入れそうだけどね」

 フィルの言葉に、サクちゃんとヤス君が「だな」「そっすね」と同意する。

 え? 出てけってこと?

 俺は増大した不安を打ち消すように、軽く咳払いして口を開く。

「でも、ヤス君は後衛だから視野も広くなるし、やっぱり回復支援が最適じゃないかと思うんだけど?」

 サクちゃんが俺に賛同して首肯する。ヤス君は肩をすくめておどけてみせた。

「二人が自前で回復できるなら別にいらないかなって。闇術ってリンドウさんみたいに転移もできますし、戦闘外での支援に徹しようと思ったんすよ。俺戦うの苦手だし、後衛の割に火力もないんで」

「なるほどな。確かにできることは多い方がいいもんな」

「てか、闇属性ってどこで取れるんすかね?」

 ヤス君の質問に答えられるのはこの場に一人しかいない。自然とフィルに視線が集まる。

 二人とのまともな会話が初めてのフィルは急にお鉢が回って緊張したようで、若干そわそわしている。

「見苦しいぞフィル。知らないなら知らないでいいから、可愛い子ぶってモジモジするのはやめなさい」

「う、うるさいな。知ってるよ。今から言うんだよ」

「ユーゴさん、なんかフィル君にだけ厳しくないっすか?」

「ああ、俺も思った」

 困惑気味の二人にフィルが元アメリカ人の転生者であり、俺たち同様訳ありなこと。迂闊うかつに種族名は出せないことと、あちらとこちらで生活した年数をトータルすると俺と歳が同じであることを説明する。

 ちなみに説明したのはそれだけ。他は不要なことだと思ったので避けた。

 とはいえ決してフィルのプライバシーを守ろうとした訳ではない。

 ただ面倒臭かっただけだ。
 
 
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