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アルネスの街編

36.属性スタンディングオベーション(1)

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 フィルから昼食に誘われ、冒険者ギルドに併設された大衆食堂に入る。そこでばったりヤス君とサクちゃんの二人と出くわした。

 ヤス君は寝坊、サクちゃんは早起きしたので先に冒険者ギルドの訓練場で鍛練していたとのこと。

 前日に打ち合わせていたらしく、ヤス君も遅れて鍛練に参加し、洗い場で体を拭いてから昼食をとりに訪れたという。

「洗い場って、まさか見られてないよね?」

「ハハハ、登録後一日で冒険終了っすか? 大丈夫っすよ」

「俺らは背中だしな。壁を背にすれば問題ないんだよ。この中だとユーゴが一番危ないだろ。着物もはだけやすいし」

「まぁ、それは後にして、彼が俺と相部屋になったフィル。俺たちの約一ヶ月先輩の冒険者。術師としてパーティーに入ってもらえることになったよ。ヤス君の言ってた風属性の後衛火力枠」

「え、マジっすか⁉ トントン拍子じゃないっすか⁉」

「流石だな。仕事が早い」

 フィルが丁寧にお辞儀をする。

「はじめまして、フィルです。よろしくお願いします」

「あ、ヤスヒト・カタセです。これからよろしくお願いします!」

「サクヤ・マツバラです。よろしくお願いします」

 その後、俺がヤス君とサクちゃんの簡単な紹介をしつつ、四人で目立たない隅っこのテーブルに移動。

 取り敢えず何か食べようということでフィルにおすすめを訊いて店員を呼び注文。どのくらいで持ってくるんだろうと話している間に料理が運ばれてきた。

「早すぎだろ」とサクちゃんが呟く。全員首肯。

 頼んだのはステーキセット。この店の定番メニューだとか。

 人参のグラッセらしきものと茹でたブロッコリーが添えられた、厚めの牛っぽい何かの肉。そこにポトフのような具沢山な野菜のスープとおかわり自由なパンが付いてくる。

 自由とうたいながら、おかわりしすぎると煙たがられて仕舞いには店主に殴られるとの噂があるとフィルが言った。俺とヤス君が爆笑。

 まだおかわりをしたことがないらしいので真偽のほどは定かではないが、早いし美味いし腹も膨れるので皆大体これを食べるとか。

「でも毎日この味じゃ飽きない?」

「ソースを変えられるから割と大丈夫。寮暮らしの新米冒険者は、ほとんど毎食こればっかりだね」

 しかし何の肉なのか。

 フィルに訊くと、ムーカウという牛に似た魔物だという。

 闇属性所持者のみが扱える従魔術で家畜化しているのだとか。

 そのムーカウ肉のステーキセットを食べながら、俺は二人に何をしてきたか話した。

 最初に話したのはヨナ婆さんの薬屋。こちらの反応はさほどでもなかったが、次に話したエノーラさんの武具店には二人とも大きな興味を示した。

「下着は欲しいっすね」

「確かに。いくらすぐ洗って干せるからって手持ちの二枚だけじゃきついよな」

「劣化はどうしようもないっすもんね。あ、服はどんなのがありました?」

「色々あったよ」

 質疑応答。

 ヤス君はツナギ、サクちゃんは作務衣が欲しかったらしく、似た物が置いてあったことを伝えると喜んでいた。

 次は属性。サクちゃんは光属性の取得に興味を示したが、ヤス君は闇属性を得るつもりだという。
 
 
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