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アルネスの街編
30.武具店の事情と自由な信仰を話し光の祠で終える(2)
しおりを挟む「これから行く店の店主はエノーラさんって言うんだけど、色んなことを教えてくれるんだよ。本来、エルフとは相容れないはずのドワーフの若い女性なんだけど、そういった差別的なことを嫌う人でね、僕にも優しいんだ」
「それはフィルが子供だからじゃない?」
「うぐっ、そうなのかな」
フィルが狼狽えたのが可笑しくて俺は軽く笑う。初めて気づいたような顔をしたが、フィルは外見が子供だという自覚がなさすぎると思う。
だが、考えてみれば俺もそうだと気づく。発言の内容にしてもそうだが、肉体が若返ると精神もそちらに寄っていくのかもしれない。
「どうしたのユーゴ、難しい顔して?」
「難しいことを考えていたんだよ」
「それが何かを訊いたんだけども。あ、あそこだよ」
フィルが例の如く小走りになる。あ、おい、訊かなくていいのかよ。と思いつつ、俺は言われる前から店の存在に気づいていたのでゆっくりと後を追った。
鍛冶工房の並ぶ道から外れてすぐの大通りにその店はあった。レイ・エノーラ武具店と書かれた看板がでかでかと店の壁に掲げられている。
ヨナさんの薬屋にあった控え目な袖看板とは違い、ここがそうだとがっつり主張されている。俺が言われる前に気づいたのはその為だ。
フィルが俺を手招きしながら扉を開けて中に入る。俺は閉じかけた扉を手で止め、軽く開いて中に入った。呼び鈴の音に反応して、カウンターにいる女性がこちらを見る。側には既にフィルがいたので、視線を移された形だ。
「いらっしゃい」
「エノーラさん、彼が今話した同居人のユーゴです」
「あら、そうなのかい! うんうん、なるほど、なるほどねぇ」
エノーラさんから品定めされているような視線を受けながら俺はカウンターに歩み寄る。負けずに品定めの視線をぶつけるのは止めておいた。
「こんにちは、フィルの同居人になったユーゴです」
「ああこりゃどうも、ご丁寧に。店主のエノーラだよ。もうフィルから聞いてるかもしれないけど、うちは見ての通りの武具取り扱い店だけど、繕い物や仕立て、研ぎや修理なんかも請け負ってるからね」
「え、そうなんですか?」
「何だいフィル、言ってなかったのかい?」
「見た方が早いかと思って。それに僕が言わなくても、今みたいにエノーラさんが言うだろうって思ってたから」
「ハハハハ、流石だね! よく分かってんじゃないか!」
エノーラさんが豪快に笑ってフィルの頭をわしわし撫でる。ドワーフと聞いていたので小柄で筋骨隆々とした体格の強面女性を想像していたのだが、そんな俺の浅慮極まる失礼な想像はものの見事に覆された。
人族の成人女性と何一つ変わらない。ドワーフらしさといえば、後ろで束ねられた赤い髪の毛量が多く、癖毛でごわついているくらい。エノーラさんは動きやすそうな洋服を着た、やや肩幅の広い朗らかそうな美女だった。
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