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アルネスの街編
19.食事会の後は同居人との会話で明るい未来予想(5)
しおりを挟む「風邪気味だと思って病院で診察を受けたんだけど、薬局で貰った薬を飲んで寝たらこっちに転生してたんだよ」
「じゃあ、貰った風邪薬が死因で決まりじゃない」
「それは早計だよ。確かに僕が死んだ原因はその薬の可能性が高いけど、それが風邪薬だったかは分からないでしょ? 診察した医師のミスなのか、薬を渡した薬剤師のミスなのか、単に体に合わなかったのかもしれないし、そもそも薬が関係あるのかも分からないんだよ」
確かに自然死もある。それに手渡された薬が違っていたら、風邪薬が死因ではなくなり別の薬が死因になる。
「ややこしいね。それで死因不明かぁ。でもあれだね、これって事件性が可能性に出てくると、また気分が変わってくるね。犯人がいたのかとか、動機とか考えちゃってモヤモヤする」
「僕は殺人であったとしても、今の自分の状況に満足してるから気にならないけどね。でも、昔の環境に置かれたままだったら相当恨んでたかもしれない」
唐突に、フィルがハーフエルフに対しての見解を述べた。それによると、ハーフエルフは神の不手際の救済措置で、急拵えの魂の器とのこと。
「えーっと、それはつまり、神様がフィルを間違って死なせちゃったから生き返らせたいけど、それは無理だから別世界に転生させて、お詫びに少し優遇したいから外見も中身もよいハーフエルフに転生させたってこと?」
「中身は僕だからよいのかは分からないけど、まぁそういうこと。寿命も長いし能力も高いそうだから、なんとなくそんな気がするんだよ。神に会ったことはないから本当のところは分からないけどさ」
「意外と他にも結構いるかもよ?」
「ないね。僕は人生の大半をエルフの里で過ごしたけど、僕の他にハーフエルフって存在を見たことがないし、勿論、ラグナス帝国でも見たことがなかった。長老からも、人とエルフの間に子ができることはほぼないとも言われてね。そうじゃなきゃこんな結論に至ってないよ」
ハーフエルフは、性奴隷となった、或いは強姦されたエルフが急に身籠ることで誕生するパターンが主で、フィルは前者だったという。
「僕の母親の主人、つまり父に当たる人物は人を人とも思わないクソ野郎でね、聞いても楽しくない話だから省くけど、随分と酷い目に遭わされたんだ。でも、そのクソ野郎の兄が凄くいい人で、いつも庇ってくれて、僕がある程度一人で動けるようになった頃に、隙を見て僕と母を逃してくれたんだよ」
その恩ある伯父はラグナス帝国にいるというが、会って礼をしたいと思っても、成長の遅い身では一人で国境を越えて伯父に会いに行くのは難しく、歯痒い思いをしているという。
「クリス王国と違ってさ、ラグナス帝国は強い亜人差別と奴隷制度があるから、特に厄介なんだよ。エルフでも相当警戒が必要なのに、僕なんてハーフエルフだから、気づかれたらそれだけで一巻の終わりって感じ」
「それに関しては俺たちも同じ状況なんだよなぁ。もし渡り人だって話が広まったら、命を狙われる危険があるからさ」
「知ってる。大帝の最期でしょ? 読んだけど、カニバリズムで不老不死なんて発想がおかしいよ。ザラス大帝は『食べたものと同じ力を得る能力』を所持していたって書いてあったけどさ、仮にそうだとしても、ホウライもクンルンも不老不死ではないからね」
「俺はザラスの側近に、ザラスのことを馬鹿にしてる愉快犯がいたんじゃないかと思ってるんだ。適当に嘘吐いて『うわぁ、こいつ本当に人肉食いやがったよ、ケケケ』って陰で笑ってたんだろうなって」
「その発想はなかった。ちょっと怖いよ」
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