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アルネスの街編
15.食事会の後は同居人との会話で明るい未来予想(1)
しおりを挟むアルネスの街は、クリス王国の西南端にある。メリセーナ大陸の西南端とも言える。海に面していて、港が有り、海産物が手に入る。ただ、それらは高価な為、平民が口にすることは少ない。
理由は養殖産業がない為。海産物は漁で手に入れる他なく、また海には魔物も出現するので、漁師は俺たちの世界以上に命懸けでの作業をこなさねばならず、どうしても高値になってしまうのだとか。
それ故に、ほとんどが特権階級の元へと渡るようになっているのとのこと。
「まぁ、この街はそれで潤っているところもあるんだがな。それで、この料理なんだが、渡り人の口に合うか?」
俺たちはエドワードさんから説明を受けながら、お呼ばれした食事の席に着いている。流石領主の館というか、調度品の類は立派なものが揃っている。食事室の食卓も、どんだけ人が座れるんだと言いたくなるくらいに長いし席も多い。
白いテーブルクロス、燭台、ナイフやフォークなどのカトラリー、部屋の装飾、執事やメイドたちの立ち居振る舞い含め諸々素晴らしくはあるのだが、料理は駄目だ。これは許してはいけない駄目さだ。
皿には白身魚のムニエルらしきものが載っている。見た目はちょっとしたレストランで出されるようなお洒落なもので、添え野菜との彩りもよい。
強いバターの芳香が食欲を誘うが、いざ口に入れると舌に塩辛さが走り、鼻の中に油臭さ、生臭さ、刺激臭の三位一体攻撃が放たれて突き抜けて留まって一息ついてしまう。正直まともに食えたものではない。思わず手が震えたほどだ。
俺はヤス君とサクちゃんの方へと顔を向ける。エドワードさんの問い掛けに対する返答を誰も発していないからだ。俺はしたくない。相手は領主だ。迂闊なことを口にするとしたら三人の中では俺だ。俺が一番ヘマをする可能性が高い。
だが二人は既に俺に顔を向けていた。見るからに微妙な笑みを浮かべて。若干、顔にテカりが見えるのは、薄っすらと脂汗が出ているからだろう。
気の所為か、二人とも頬骨の方に肉が上がって、顎が伸びたように見える。
いや、これは気の所為じゃないな。
飲み込むのが辛いのだろう。人に見せていい顔じゃない。
仕方ない。正直に言おう。
俺は溜め息を吐いて、エドワードさんに向き直った。
「臭いです」
「やはりそうか……」
エドワードさんがテーブルに肘をつき、組み合わせた両手の上に額を載せる。それに合わせたように、執事、メイドたちの全員が肩を落とした。
その様子を見て俺はピンときた。
「これはリンドウさんの企てですね」
エドワードさんが驚いた顔で俺を見る。
「どうして分かった?」
「ただの勘です。が、おそらく、大量にとれるけど、とても食べれたものではないものを料理して出されたんでしょう? 廃棄するしかないけど、悪臭が問題になるとか、食べることができれば食料の問題が解決するとか、そういうことをリンドウさんに話したんじゃありませんか?」
「うむ、その通りだ。すまなかった」
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