上 下
48 / 409
アルネスの街編

14.ミチル烈伝と入寮前のアレ騒ぎに複雑な同居人(6)

しおりを挟む
 
 
「本当だ。いやマジか。んー、それじゃあ、つまり肉体的な成熟が遅いってだけで、精神年齢は大人ってことでいいのかね?」

「そうだね。見た目が子供なだけ。これが不便極まりないんだよね。どこに行っても子供扱いされちゃうから。もう変な罪悪感が」

「うわ、そりゃまた大変な気苦労がありそうだね。あ、同い年なら呼び捨てでいいよ。そっちの方が俺も気楽だし」

「あ、ホント? じゃあ僕もそうしてよ。あ、あの、ところでさ」

「ん? 何?」

 フィルが急にモジモジしだす。俺が首を傾げると、フィルは自分のベッドに座り直して、一度深呼吸してから口を開いた。

「ユーゴは、訳ありだったりする?」

 え?

「あ、あのね、僕はちょっと、訳ありでね、同居する人もそういう人が来るって聞いてたから、ユーゴはそうなんだと思ってるんだけど、ミチルさんも何も言わなかったし、まさか、違うってことはないよね?」

 上目遣いで確認される。俺は半笑いで腕組みする。内心、非常に困っていた。混じりっけなしの困った気持ち。これは話してよいものかどうか。

「訳ありといえば、訳ありなんだけれども、そう易々やすやすと話せないことだから困ってしまうのが訳ありの宿命なんだよ」

「凄い分かる。取り敢えず、訳ありなのが確かってことさえ分かれば、僕の方から話して構わないんだけど。ていうのも、僕はパーティーを組むのも難しくてね」

 悲しい顔をするフィルを見て、心底気の毒だと思った。俺も一人きりでこちらに渡っていた場合、こうなっていたかもしれない。

 考えてみれば、俺が同居人として一緒に暮らしても構わない人物しか相部屋にはされないはずだ。フィルの方からも訳ありだと打ち明けられているのだから、今後のことを考えると曝《さら》け出しておいた方が楽かもしれない。

 不用心かもしれないが、俺は腹を決めた。

「パーティーなら、俺と組めばいいよ。俺と一緒に来た二人も訳ありだから」

「え、そうなの?」

「ああ、俺は別世界から来たんだ。日本って国からこっちに渡って来た。一緒に来た二人もそうだよ。他言無用でお願いね」

 フィルはぽかんとした顔をしたが、唐突に細かく震えだした。そしてクスクス笑いだしたかと思うと、今度は哄笑して少し泣いた。

「え、ちょ、フィル? どうした? 大丈夫?」

「嬉しいんだよ、凄く嬉しい」

 フィルはそう言って、またステボを出して俺に見せに来た。そこには亜人ハーフエルフと書かれていた。

「僕はね、エルフと人との混血なんだ。それだけでも十分過ぎるほどに問題なんだけど、話はそれで終わりじゃない。君が日本からこちらに転移して来たように、僕はアメリカからこちらに転生したんだよ」

「は⁉ 転生⁉」

 俺は思わず立ち上がった。

 同居人は、俺より複雑な事情を抱えていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

スキル【自動回収】で人助け〜素直な少年は無自覚に人をたらし込む〜

ree
ファンタジー
主人公ー陽野 朝日は(ようの あさひ)は  かなり変わった境遇の持ち主だ。  自身の家族も故郷も何もかもを知らずに育ち、本だけが友達だった。  成人を目前にして初めて外に出た彼は今まで未知だった本の中の世界を夢見て冒険に出る。  沢山の人に頼り、頼られ、懐き、懐かれ…至る所で人をタラシ込み、自身の夢の為、人の為ひた走る。    【自動回収】という唯一無二のスキルで気づかず無双!?小さな世界から飛び出した無垢な少年は自分の為に我儘に異世界で人をタラシ込む?お話…  冒険?スローライフ?恋愛?  何が何だか分からないが取り敢えず懸命に生きてみます! *ゲームで偶に目にする機能。  某有名ゲームタイトル(ゼ○ダの伝説、テイ○ズなどなど)をプレイ中、敵を倒したらそのドロップアイテムに近づくと勝手に回収されることがありませんか?  その機能を此処では【自動回収】と呼び、更に機能的になって主人公が扱います。 *設定上【自動回収】の出来る事の枠ゲームよりもとても広いですが、そこはご理解頂ければ幸いです。 ※誤字脱字、設定ゆるめですが温かい目で見守って頂ければ幸いです。 ※プロット完成済み。 ※R15設定は念の為です。 ゆっくり目の更新だと思いますが、最後まで頑張ります!  

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

冷酷な少年に成り代わってしまった俺の話

岩永みやび
BL
気が付いたら異世界にいた主人公。それもユリスという大公家の三男に成り代わっていた。しかもユリスは「ヴィアンの氷の花」と呼ばれるほど冷酷な美少年らしい。本来のユリスがあれこれやらかしていたせいで周囲とはなんだかギクシャク。なんで俺が尻拭いをしないといけないんだ! 知識・記憶一切なしの成り代わり主人公が手探り異世界生活を送ることに。 突然性格が豹変したユリスに戸惑う周囲を翻弄しつつ異世界ライフを楽しむお話です。 ※基本ほのぼの路線です。不定期更新。冒頭から少しですが流血表現あります。苦手な方はご注意下さい。

処理中です...