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アルネスの街編

7.スミレさんが女子会を楽しんでるのは多分本当(7)

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 俺が発見した口に出さずにステボを表示させる方法と、命令の省略、手で操作せずに項目のオンオフを切り替える命令などの情報は三人で共有している。

 なので三人とも同じことができるのだが、こうなるならリンドウさんにも話しておくべきだったと少し後悔した。

 あまり人に見せるものではないと言われていたし、おそらく皆できることだろうと思っていたので伝えていなかった。忘れていたと言ってもいい。まさかこんな指摘を受けることになるとは思いもしなかった。

 ただ、悪いことばかりじゃない。なんだか話しやすくなった。

 それは向かいにいる三人が言葉を失っている様子を見せたからか、それとも三人で協力したからか。どちらが理由なのかは判然としないが、俺は幾分いくぶんか緊張がほぐれたのを感じていた。

「手で触れなくても、他の人も閲覧可能な状態にしたり、月日や時刻を表示したり、それだけを表示させたままにしたり、すべてのページを表示させたりも可能です。何故か術扱いになるようで、若干魔力は消費しますが」

 俺は今言ったことのすべてを順に披露して見せる。近未来SF映画のワンシーンのような光景を自分で作り出すのは、ちょっと楽しい。渡り人三人の間でも、格好いい見せ方を探る遊びが一時期流行はやった。

「心詠唱ができるだけでも驚いたが、ステボでこんなことができるなんて初めて知ったぞ。しかも、やってみたが俺にはできん」

「エディもか。俺もだ。ミチルは?」

「あ、あの、どうやっているか訊かないと」

「あ、そうだな!」

 三人にやり方を教えたが、エドワードさんとジオさんにはできなかった。ミチルさんは教えてすぐにできるようになり、月日と時刻の表示が出しっぱなしにできるようになったことを手を叩いて喜んでいた。

「ありがとうございます! いちいち開くのも面倒臭いって思う場面が結構あったんで、凄く助かります!」

「カレンダーないっすもんね」

「カレンダー?」

 エドワードさんが首を捻ったので、俺たちの世界には紙に月日やそれにちなんだ色々な情報が書かれたものがあると説明する。

 また、壁掛型や置型などの種類があることについても。エドワードさんは顎に手を遣り、うんうん頷きながら興味深そうに聞いていた。

「面白い。あって困るものではなさそうだ」

「ああ? 時間や日にちなんて、ステボ開いて見りゃいいだけじゃねぇか」

「いや、重要なのはそこに文字を書き込めるという点だ。今までは手帳に記していたが、ふとしたときに忘れることがあってな。それで、ページを破いて壁などに貼っておいたりしたが、目に留まらず後で気づいて辟易することもあったのだ。しかしそのカレンダーとやらがあれば、毎日目にするよう習慣づけさえすれば、そういったことから解放される」

「あ、ちょっといいすか?」

 ヤス君が手を挙げ、注目を集めてから口を開く。

「娯楽品なんすけど」

 ヤス君が【異空収納】からオセロ盤を取り出す。だが、こちらは既に存在しているらしく、リンドウ一家が知らなかっただけであったことが判明。ヤス君はがっくりと肩を落としていた。

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