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アルネスの街編
6.スミレさんが女子会を楽しんでるのは多分本当(6)
しおりを挟む「まぁ、渡り人と知られるパターンは体にある印を見られることと、ステボを覗かれることだけだからな。それ以外の部分は防ぎようがねぇ。お前さんたちのうちの誰かが口を滑らしたり、迂闊に裸を見せたりってのは、こっちじゃ対応のしようもねぇからな。そこは自己責任だ」
「冒険者になると言うからにはトレーニングが必須だとは理解しているだろう。その後の清拭は注意が必要だ。装備品の試着、護衛依頼や、他の冒険者とのパーティー結成後の野営でもだ。様々な場面で肌の露出に気をつけてもらいたい。入浴に限ったことではなく、怪我の治療でも肌を晒すからな」
エドワードさんが話を終え、ジオさんが口を開きかけたところで、扉がノックされる音が部屋に響いた。三度目が鳴り終えた後で、ジオさんが入れと声を掛ける。扉が開くと、黒髪の女性ギルド職員が頭を下げて入室した。
「し、失礼します」
ジオさんが手招きし、その職員を自分の隣に立たせる。
「リンドウさんから聞いてるかもしれんが、こいつはミチル。お前さんたちと同じ渡り人だ」
「は、はじめまして。ミチル・コムラです。皆さんの専属職員となります。至らないところも多くあるとは思いますが、よ、よろしくお願いします」
ミチルさんが深々と一礼する。俺たちも頭を下げて礼を返す。こちらからも自己紹介をした方がよいのか戸惑い、ジオさんに目を向けると、分かってるといった具合に手で制され、僅かに頷かれた。
「今から登録をするから、紹介は不要だ。ミチル」
「は、はいっ」
ミチルさんがポケットから何かを取り出し、テーブルに置く。鈍色に輝くカード状のプレート。車の運転免許証のような大きさで、テーブルに置いた際の硬質な音から、おそらく金属であると思われる。
「これが冒険者ギルドの登録証だ。これに触れ魔力を通すことで、冒険者ギルドにある魔道具にステボの情報が記録される。ただ、七面倒臭えことに書類も作成する必要があってな、その際に確認の為にステボを見せてもらわんといかん。順番にステボを開いてくれ。設定方法は分かるか」
「大丈夫です」
俺は、ステ開、と心で呟き、他者閲覧可、と続けて心で呟く。目の前にステボが現れるが、ミチルさんが「え」と呟いて目を見開き、ジオさんとエドワードさんが怪訝な顔で身を乗り出した。
「ちょっと待て、おいおいユーゴ、お前さんまさか、事前に設定してあったんじゃないだろうな?」
「関心せんぞ。余りに不用心だ」
「あ、いえ。今設定しました、けど?」
「触れずにか?」
エドワードさんに疑いの眼差しを向けられ、そう問われる。どうもやらかしてしまったようだと覚り、ヤス君とサクちゃんの方に救いを求めて目を向ける。二人は苦笑しながら身動きせずにステボを数回出したり消したりしてくれた。
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