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アルネスの街編
5.スミレさんが女子会を楽しんでるのは多分本当(5)
しおりを挟む「あの、スミレさん、受付は向こうですけど?」
「いえ、まずは領主とギルドマスターとの面会からです。お二方ともに熊人の混血ですし冒険者上がりですから迫力がありますが、リンドウ様の方が実力は遥かに上ですので萎縮することはありませんよ。あと私は毛深くて無闇矢鱈に威圧的な大きい男は大嫌いですので、すぐに帰りますが悪しからず」
スミレさんはやや早口の小声で説明を終え、応接室の扉を三回ノック。誰何の声に「スミレです」と答え「入ってくれ」という返答を確認するなり速やかに扉を開き、有無を言わさず俺たちに入るよう促した。
そして俺たちは訳も分からぬままに、領主のエドワードさんと冒険者ギルドマスターのジオさんと面会させられたという訳である。
スミレさんちょっと酷くない⁉ 嫌いだって言ってたから話をするのも嫌だったのかもしれないけどもさ、情報過多だし怖いしで物凄く困ってるよ俺たち! スズランさんと女子会してるってマジかって思ってたけど、楽しんでるって言ってたの多分本当だな! めっちゃ喋ったもん!
「顔色が悪いようだが、暑さにでもやられたか?」
「いや、エディ、これはお前の所為だと思うぞ」
「おいジオ、冗談は顔だけにしておけ」
「ばっ、お前にだけは言われたくねぇよ! 武神みたいな顔しやがって! まったく、思い返してみろ。ミチルも初めて来たときこんな感じになってたろうが。威圧感が無駄にでけぇんだよお前は」
テーブルを挟んですぐ向かいで繰り広げられるエドワードさんとジオさんの軽口の叩き合いを、俺は冷や汗を掻きつつ見ていた。
二人はそれぞれ一人掛けの椅子に腰掛けているが、マフィアが登場する映画を想起させる黒革張りの肘掛け付き。声も野太いので、どうしてもそういった映画のワンシーンのように見えてしまう。
「あー、それで? 俺たちは名乗ったが?」
ジオさんに睨めつけられる。
「あ、は、はい。ユ、ユーゴ・カガミです」
「ヤ、ヤスヒト・カタセです」
「サクヤ・マ、マツバラです」
「ユーゴと、ヤスヒトと、サクヤだな」
ジオさんが眉根を寄せ、俺たち一人ひとりの顔を指差しながら言う。どうやら記憶に留めようとしてくれているようだ。
ちらりと視線をずらすと、エドワードさんも声と動きに出していないだけで、ジオさんと同じことをしているように見えた。
「うん、よし。全員黒髪で背格好も似てるが、顔立ちと雰囲気がまるで違うから大丈夫だな。ハハッ覚えやすくて助かった」
ジオさんが表情を真面目なものに変える。
「さて、リンドウさんから既に聞いているとは思うが、この世界には文字通り人を食い物にしようとするどうしようもないクズがいる。この街はエディが仕切ってるからそんなクズはいねぇと言いたいところだが、こればっかりはいくらこのアルネスの街の優秀な領主であらせられるエディ様でも難しいらしくてな、断言はできねぇ」
「そんな断言が可能なのは神くらいなものだ、まったく。すまんな、どうもジオは余計な話が多くてな。長くなりそうなので俺が簡潔に言うと、渡り人と知られないような配慮をするという点は、お前たちに専属のギルド職員を付けることで対応することにした。後は、公衆浴場と娼館の利用禁止だな」
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