27 / 409
異世界居候編
27.真面目な話はするのも聞くのも難しい(6)
しおりを挟む言い掛けて、カタセ君がハッとした顔をする。その後、空中を見つめて静止した。どうやら、ステボを凝視しているようだ。心で唱えて出したのだろう。
「なるほど、そういうことっすか」
「何、どしたの?」
「レベルは補正値でしかないんですよ。純粋な能力は自力で上げなきゃいけないみたいです。例えば、腕立て伏せをすると腕力の数値が上昇します。レベル、あ、魂格一だと補正はゼロなので、そのままの値になるんですけど、魂格二だと、一パーセントのプラス補正が掛かるって感じです」
どういうこと?
「それは、ええと、つまり、鍛練した魂格一と、鍛練なしの魂格百だと、前者の方が強いということですか?」
俺が頭に疑問符を浮かべている間に、マツバラさんが言葉を考えながらといった様子で訊いた。カタセ君が「はい」と頷く。
「飽くまで補正値次第なんで、まだ何とも言えませんが、極端な話、そうなりますね。けどこれ、かなり厄介すよ。多分、身体能力の成長は俺たちのいた世界と変わらない方法をとらなきゃいけないってことです」
アスリートのように筋トレして能力の数値を上げないと、魂格を上げてもほぼ意味がない。加えて、鍛練を怠れば身体能力の数値が落ちていく。
カタセ君はそう推測を述べたが、スズランによってやんわりと否定された。運動不足などによる体型の変化はあるそうだが、一度上がった能力値が下がることはほとんどないという。
鍛練で得た身体能力値は肉体ではなく魂に刻まれるのだとか。
例外は、不随や欠損。この場合は激減、或いは斜線が入り数値の表示がなくなるとのこと。
「下がったとしたら、それは何らかの攻撃を受けていると考えるべきだ。闇術にはそういった類の術もあるからな」
「まぁ、術に関しては魔力の鍛練方法教えるから好きにしてくれ。自由が一番やからな。基本は肉体の鍛練や。能力が落ちんっちゅうんは分かったやろから、気張ってやってくれや。話は以上や。あー、スッキリした。ほんま憂鬱やったわ」
「そうだな。冷静に聞いてくれて助かった。ミチルのときは酷かったからな」
リンドウとスズランの顔が青褪める。
「思いださせんなや……」
「す、すまん。反省が活かせたと思ってつい、な」
「まぁ、それは言えとるけどな……。ああ、ユーゴ、悪いんやけど、朝食の準備をするように、見習いに言うてきてくれるか?」
「分かりました。あ、それで、返事はどうすればいいんですかね?」
リンドウとスズランがきょとんとする。
「返事? 返事て何のや?」
「いや、三つの選択肢の返事ですけど」
「あ、あーあーあー! せやな! いや、それはあれや、今すぐっちゅう訳やないから、じっくり考えてくれ」
「言葉少なですまない。我々も君らがどういった反応をするか分からず気が重かったのでな。なに実際は、既に一つ目の選択肢の中にいると考えてもらえばいい。マモリ見習いとして鍛練しながら日々を過ごし、見習い期間を終えるまでの間に、冒険者になるかそれ以外の道を選ぶかを決めてくれれば構わん」
「そんなこちらに有利な条件でいいんですか?」
マツバラさんが訊いた。俺もまったくの同意見だったので、何度も首肯する。するとリンドウは俺を見て苦笑し、頭を掻きながら口を開いた。
「そう思うなら、ユーゴ、もしマモリ以外の道選んだとしても、たまに飯作りに来てくれ。はっきり言うと、それだけを理由にお前にここにおってもらいたいくらい、お前の飯は美味い。あれが食えんようになるとは思いたくないなぁ」
スズランがハッとした様子になり、俺に顔を向けるとぶんぶん音がしそうなほど頷いた。その尻尾はそれまでの様子と打って変わって、激しい動きを見せていた。
0
お気に入りに追加
432
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
ダンジョンで温泉宿とモフモフライフをはじめましょう!〜置き去りにされて8年後、復讐心で観光地計画が止まらない〜
猪鹿蝶
ファンタジー
仲間はモフモフとプニプニなモンスター?関わる悪党は知らないうちにざまぁされ、気づけば英雄?いえ無自覚です。これが新境地癒し系ざまぁ!?(*´ω`*)
あらすじ
ディフェンダーのバンは無能だからとダンジョンに置き去りにされるも、何故かダンジョンマスターになっていた。
8年後、バンは元凶である女剣士アンナに復讐するためダンジョンに罠をしかけて待ちながら、モフモフとプニプニに挟まれた日々を過ごしていた。
ある日、女の子を助けたバンは彼女の助言でダンジョンに宿屋を開業しようと考えはじめるが……。
そして気がつけばお面の英雄として、噂に尾びれがつき、町では意外な広まりを見せている事をバンは知らない。
バンはダンジョンを観光地にする事でアンナを誘き寄せる事ができるのだろうか?
「あの女!観光地トラップで心も体も堕落させてやる!!」
仲間にはのじゃロリ幼女スライムや、モフモフウルフ、モフモフ綿毛モンスターなど、個性豊かなモンスターが登場します。
ー ▲ ー △ ー ▲ ー
マッタリいくので、タイトル回収は遅めです。
更新頻度が多忙の為遅れております申し訳ございません。
必ず最後まで書き切りますのでよろしくお願いします。
次世代ファンタジーカップ34位でした、本当にありがとうございます!!
現在、だいたい週1更新。
貴方の隣で私は異世界を謳歌する
紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰?
あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。
わたし、どうなるの?
不定期更新 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!
hazuki.mikado
恋愛
★本編/オマケ共に2023.5.25完結です(_ _)
2022.4/30タイトル変更になりました。
旧)転生聖女は諦めない
↓
新)転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!
★この作品は小説家になろう様、エブリスタ様でも公開しております。
ーーーーーーーーーーー
転生聖女の頑張ったり頑張らなかったり流されちゃったりするお話。
ミリアンヌは侯爵令嬢である。
でも中身はゲーム会社に勤めていた元社畜のれっきとした成人男子。しかもプログラマーでストーリー知識はほぼほぼ0だ。知っているのはキーポイントになるスチルのみ。
かと言ってこのまま呑気に生きていけば、王太子の嫁になってしまう。
中身がオトコなままだと見た目はどうあれBとLの世界。其れだけは回避とばかりに自分を鍛えてフラグ回避に注力してみたものの・・・
ハッピーエンド回避のために人生設計を頑張ってみたけれど、根が単純でお人好し。その上、詰めが甘くて人タラシ。
どんどん思いもよらない方向へとなって行く・・・
××××××××××
※執筆者が偶にちゃちゃを入れてしまいますが、気になる方は貴方の秘めたるパワー、スルースキルを発揮してくださると嬉しいです♡
※設定は『ゆるゆる』というより『ガバガバ』の緩さでございますf(^_^;
※ギャグ・コメディたまにシリアスでざまあは基本的にはナシw
※ほぼ健全で御座います。R指定ありません。
安心してお読み下さい(*´ω`*)
本編は縦読みを意識して書いていますが、横読みでも大丈夫!
お願いされて王太子と婚約しましたが、公爵令嬢と結婚するから側室になれと言われました
如月ぐるぐる
ファンタジー
シオンは伯爵令嬢として学園を首席で卒業し、華々しく社交界デビューを果たしました。
その時に王太子に一目惚れされ、一方的に言い寄られてしまいましたが、王太子の言う事を伯爵家が断る事も出来ず、あれよあれよと婚約となりました。
「シオン、君は僕に相応しくないから婚約は破棄する。ザビーネ公爵令嬢と結婚する事にしたから、側室としてなら王宮に残る事を許そう」
今まで王宮で王太子妃としての教育を受け、イヤイヤながらも頑張ってこれたのはひとえに家族のためだったのです。
言い寄ってきた相手から破棄をするというのなら、それに付き合う必要などありません。
「婚約破棄……ですか。今まで努力をしてきましたが、心変わりをされたのなら仕方がありません。私は素直に身を引こうと思います」
「「え?」」
「それではフランツ王太子、ザビーネ様、どうぞお幸せに」
晴れ晴れとした気持ちで王宮を出るシオン。
婚約だけだったため身は清いまま、しかも王宮で王太子妃の仕事を勉強したため、どこへ行っても恥ずかしくない振る舞いも出来るようになっていました。
しかし王太子と公爵令嬢は困惑していました。
能力に優れたシオンに全ての仕事を押し付けて、王太子と公爵令嬢は遊び惚けるつもりだったのですから。
その頃、婚約破棄はシオンの知らない所で大騒ぎになっていました。
優れた能力を持つシオンを、王宮ならばと諦めていた人たちがこぞって獲得に動いたのです。
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
興味はないので、さっさと離婚してくださいね?
hana
恋愛
伯爵令嬢のエレノアは、第二王子オーフェンと結婚を果たした。
しかしオーフェンが男爵令嬢のリリアと関係を持ったことで、事態は急変する。
魔法が使えるリリアの方が正妃に相応しいと判断したオーフェンは、エレノアに冷たい言葉を放ったのだ。
「君はもういらない、リリアに正妃の座を譲ってくれ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる