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異世界居候編

27.真面目な話はするのも聞くのも難しい(6)

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 言い掛けて、カタセ君がハッとした顔をする。その後、空中を見つめて静止した。どうやら、ステボを凝視しているようだ。心で唱えて出したのだろう。

「なるほど、そういうことっすか」

「何、どしたの?」

「レベルは補正値でしかないんですよ。純粋な能力は自力で上げなきゃいけないみたいです。例えば、腕立て伏せをすると腕力の数値が上昇します。レベル、あ、魂格一だと補正はゼロなので、そのままの値になるんですけど、魂格二だと、一パーセントのプラス補正が掛かるって感じです」

 どういうこと?

「それは、ええと、つまり、鍛練した魂格一と、鍛練なしの魂格百だと、前者の方が強いということですか?」

 俺が頭に疑問符を浮かべている間に、マツバラさんが言葉を考えながらといった様子で訊いた。カタセ君が「はい」と頷く。

「飽くまで補正値次第なんで、まだ何とも言えませんが、極端な話、そうなりますね。けどこれ、かなり厄介すよ。多分、身体能力の成長は俺たちのいた世界と変わらない方法をとらなきゃいけないってことです」

 アスリートのように筋トレして能力の数値を上げないと、魂格を上げてもほぼ意味がない。加えて、鍛練を怠れば身体能力の数値が落ちていく。

 カタセ君はそう推測を述べたが、スズランによってやんわりと否定された。運動不足などによる体型の変化はあるそうだが、一度上がった能力値が下がることはほとんどないという。

 鍛練で得た身体能力値は肉体ではなく魂に刻まれるのだとか。

 例外は、不随ふずいや欠損。この場合は激減、あるいは斜線が入り数値の表示がなくなるとのこと。

「下がったとしたら、それは何らかの攻撃を受けていると考えるべきだ。闇術にはそういった類の術もあるからな」

「まぁ、術に関しては魔力の鍛練方法教えるから好きにしてくれ。自由が一番やからな。基本は肉体の鍛練や。能力が落ちんっちゅうんは分かったやろから、気張ってやってくれや。話は以上や。あー、スッキリした。ほんま憂鬱ゆううつやったわ」

「そうだな。冷静に聞いてくれて助かった。ミチルのときは酷かったからな」

 リンドウとスズランの顔が青褪あおざめる。

「思いださせんなや……」

「す、すまん。反省が活かせたと思ってつい、な」

「まぁ、それは言えとるけどな……。ああ、ユーゴ、悪いんやけど、朝食の準備をするように、見習いに言うてきてくれるか?」

「分かりました。あ、それで、返事はどうすればいいんですかね?」

 リンドウとスズランがきょとんとする。

「返事? 返事て何のや?」

「いや、三つの選択肢の返事ですけど」

「あ、あーあーあー! せやな! いや、それはあれや、今すぐっちゅう訳やないから、じっくり考えてくれ」

「言葉少なですまない。我々も君らがどういった反応をするか分からず気が重かったのでな。なに実際は、既に一つ目の選択肢の中にいると考えてもらえばいい。マモリ見習いとして鍛練しながら日々を過ごし、見習い期間を終えるまでの間に、冒険者になるかそれ以外の道を選ぶかを決めてくれれば構わん」

「そんなこちらに有利な条件でいいんですか?」

 マツバラさんが訊いた。俺もまったくの同意見だったので、何度も首肯しゅこうする。するとリンドウは俺を見て苦笑し、頭を掻きながら口を開いた。

「そう思うなら、ユーゴ、もしマモリ以外の道選んだとしても、たまに飯作りに来てくれ。はっきり言うと、それだけを理由にお前にここにおってもらいたいくらい、お前の飯は美味い。あれが食えんようになるとは思いたくないなぁ」

 スズランがハッとした様子になり、俺に顔を向けるとぶんぶん音がしそうなほど頷いた。その尻尾はそれまでの様子と打って変わって、激しい動きを見せていた。

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