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異世界居候編
25.真面目な話はするのも聞くのも難しい(4)
しおりを挟むマツバラさんが挙手する。
「なんや?」
「あの、その肉なんですが、話を聞く限りでは、渡り人のものだという確証が得られないんじゃないですか?」
え、何で? あ、そうか。
確かに偽装し放題だ。牛肉を見たことがない人に牛肉だと嘘を吐いて豚肉を渡しても、渡された方は牛肉を見たことがないから分かることはない。牛肉と豚肉は味も見た目もよく似ているという思い違いをするだけだ。
「あ、あー、ホントだ、そうっすよ! いくらなんでも酷過ぎやしませんか⁉ 別に本物じゃなくても商売が成り立つじゃないっすか!」
「その通りだ」
スズランが険しい顔でそう言って首肯する。
「サクヤの言うとおり、十中八九、偽物やろうな。本物食おうが偽物食おうが、結果は同じなんやから」
「だが問題はそこではない」
「なんや、スズラン。わしら息ぴったりやな」
「喧しい。続けろ」
「へいへい。まぁ、問題は需要があるっちゅうことやな。それも、本物はそれと知る馬鹿がおるから価値が馬鹿高い。お前らからしたら嘘みたいに聞こえるかもしれんけどな、渡り人は、実は珍しい」
「え、いや、結構いるんじゃないっすか? あっちだと行方不明者の数かなり凄いっすよ? 千人とか二千人とか、普通に来て生活してると思ってたんすけど」
俺とマツバラさんも頷く。だがリンドウとスズランは俺たちの様子が気に食わなかったのか、それともどう説明したものかを悩んだのか眉根を寄せた。
「そんなもん、ただ見つからんだけかもしれんし、お前らの世界でおっ死んどる可能性かて大いにあるやろ。ユーゴは助かったけど、食われてもうとる者かておるやろし」
「加えて、仮にそれだけの数が来ていたとしても我々には知りようもない。ただ生存している可能性は極めて低いとは言える。先ほどの話もあるからな」
「そういうことや。あのな、お前ら皆生き残ったし、信じられんのも分かるけど、渡り人がこっちに来たなりに死ぬ確率は凄まじく高いんやぞ。そらものっ凄い高い。わしらが見つけて保護する前に死んどったり、食われとったりはザラや」
「それに、我々が関与できぬ土地に転移する可能性の方が遥かに高い」
「ほんまそれな。イノリノミヤ神教は王国が所有する一帯のみに根付いたもんやからな。わしら神職が守れるんは精々一国分や。この世界の広さを考えれば、どんだけの奇跡がお前らの身に起きたか分かるやろ」
俺は挙手し、そもそもこの世界の広さを知らないと伝える。
「揚げ足取んなや。後で地図見せたるから」
リンドウに切ない顔を向けられた。紛れもない意気消沈。その余りに低い声のトーンに、俺は思わず「すいません」と頭を下げずにいられなかった。
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