【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人

文字の大きさ
上 下
15 / 409
異世界居候編

15.狂喜乱舞する尻尾とお風呂で大騒ぎ(2)

しおりを挟む
 
 
 まだまだだけど、及第点かな。

 ひっそり感動しながら食べていると、おかわりの声が上がった。それで急遽、追加でおかずを作ることになった。

 肉はトリミング済みのものがないし、あっても漬け込む時間がなくて無理。豆腐もないので、お浸しと出汁巻き卵だけで許してもらった。

 出汁は大量に作ってスミレの【異空収納】に保管してあるので、卵さえあれば、出汁巻き卵をいつでも作ることができる。焼き方のコツさえ掴めば、スミレとサツキにも作れるようになるだろう。

 夕食後、食卓の周囲には仰向あおむけになる者が続出した。

 ぽっこりお腹のサイネが俺の膝に頭を載せている。頭をでずにいられないほどに可愛らしい。軽く指の腹で掻くように撫でているのだが、心地良いのかずっと満足そうに微笑んでいる。

「ふぅ、もう食べれないのです。ユーゴは凄いのです」

「げぷ、同感なのじゃ」

 マツバラさんの膝にはウイナの頭が載っている。どうやらマツバラさんはウイナの方になつかれたようだ。俺と同じように優しく撫でている。とても微笑ましい。

 カタセ君はマモリ見習いの二人と一緒に食器を片付けている。俺が動こうとしたら、手振りで止められた。苦笑しつつおどけた敬礼で、ごめんお願いと心で伝えると、笑顔で頷いてくれた。

「いやー、美味かった。久々にめっちゃ食うた。おかしいやろ、あの卵も肉も。ほんであれ、とろぉっとしたタレ掛かった揚げ豆腐。どれもこれも食うたことないぞ。冗談なしになんぼでも飯入ったわ。味噌汁一つとっても全然違うやんか」

「うむ、食べる前から違ったからな。口が欲していた」

「ほんまそれな。匂いで白米いける感じやったからな。それで、あー、ユーゴ。悪いけど、明日も作ってくれんか?」

 多分そうなると思っていたし、俺もどうせなら美味いものが食べたいので快く了承した。

 俺の返答を聞いたリンドウ、ウイナ、サイネが喜びの声を上げたが、スズランは「うむ、それはいいな」と一言発しただけで澄ました顔をしていた。だが、尻尾が狂喜乱舞していたので、一番喜んでいたのはスズランなのだろうと思う。

 食事が済み、少しの休憩を挟んだ後で、俺たち渡り人はリンドウの指示でスミレに風呂場へと案内された。

 脱衣所があり、棚にかご。規模は小さいが、銭湯で見るような光景で、奥にある引き戸を開くと、広い洗い場と木製の浴槽があった。

 浴槽は四五人入ってもまだ余裕がありそうな大きなもので、名前はヒノキ風呂。

 見た目もヒノキ風呂そのままで良い香りもしたが、スミレによるとただそう呼ばれているだけで、ヒノキが使われているかは不明らしい。

 そもそもヒノキを知らなかった。釈然としないが、こちらでは木材で作られた浴槽をヒノキ風呂というのだと解釈することにした。もうそれで良いや。異世界だし。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

子連れ侍とニッポニア・エル腐

川口大介
ファンタジー
東の国ニホンからきた侍・ヨシマサは、記憶を失った少年・ミドリと旅をしている。 旅の目的は、ミドリの身元探しと、もう一つ。ある騎士への恩返しだ。 大陸のどこかにある忍者の里を見つけ出し、騎士の国との協力関係を築くこと。 何の手がかりもない、雲を掴むような話である。と思っていた二人の前に、 エルフの少女マリカが現れ、自分も旅の仲間に加えて欲しいと申し出た。 本人は何も言わないが、マリカはどう見ても忍者であったので、ヨシマサは承諾。 マリカの仲間、レティアナも加えて4人での旅となった。 怪しまれないよう、逃げられないよう、しっかり注意しながら、 里の情報を引き出していこうと考えるヨシマサ。 だが、ヨシマサは知らなかった。このエルフ少女二人組はBLが 大好きであり、レティアナはBL小説家として多くの女性ファンを 抱えていたこと。しかも既に、ヨシマサとミドリを実名で扱った作品が 大好評を得ていたこと。 それやこれやの騒ぎを経て、 やがてミドリの出生の秘密から、世界の命運を左右する陰謀へと繋がり、 そしてそれを凌駕する規模の、マリカとレティアナの企みが…… そんな作品です。 (この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています)

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

僕と精霊〜The last magic〜

一般人
ファンタジー
 ジャン・バーン(17)と相棒の精霊カーバンクルのパンプ。2人の最後の戦いが今始まろうとしている。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...