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異世界居候編
11.傷だらけの二人といただきます(2)
しおりを挟むリンドウが合掌し、それに合わせて全員が合掌。軽いお辞儀をして、いただきます。食前の挨拶まで同じ。慣れ親しんだ文化が異世界にあると、こんなに違和感があるものなのか。
ところで、この並びは一体……。
俺は小首を捻る。リンドウとスズランが両端に向き合って座っているのはいいとして、俺の隣にサイネとマツバラさんがいるのは何故だろう。
疑問を感じて間もなく、ああ、そういうことかと気づく。
マツバラさんの隣にはウイナ。向かいの席ではカタセ君がマモリ見習いの二人に挟まれている。
簡単に言ってしまえば、渡り人は全員、両脇を固められて逃げられないような状態で座らされているということ。
こんなことをされなくても、今更逃げようもないのだが。
念には念をということなのか、はたまた俺の考えすぎなのか。
考えたところで、日本人の中でも取り分け警戒心の薄い平和ボケした俺に分かるはずもないので、気にせず食事を始めることにした。
まずは角煮を一口。
うっ、これは……。
味噌汁を啜り、白米を食べ、漬物をかじる。
「どや、口に合うか?」
はい、と渡り人組は答えたが、カタセ君と目が合うと苦笑された。
そう、俺たちは嘘を吐いた。多分、マツバラさんも同じことを思っているだろう。この料理、何かがおかしい、と。
漬物は浅漬け。瓜のような野菜を軽く塩で揉んで、水気を出して絞ったものだろう。味はやや塩気が強いが、これは許容できる。まったく問題ない。
白米も美味しい。こちらはむしろ普段食べているものよりも甘みがあり美味しく感じる。
ただ味噌汁はおそらく出汁を取っていない。それに具材に癖がある。小豆は違うと思う。味のすごく薄い塩味ぜんざいに、ほんのり味噌の香りがついた感じ。
不味くはないがほぼ素材の味だけなので物足りなさが否めない。それでも中には美味しいという人がいる気がする。俺は喉を潤す為の白湯感覚でいる。
そして角煮は臭い。非常に獣臭い。この一言に尽きる。
味が薄いのでより臭さが際立つ。嫌がらせではと疑いを抱くほどに不味い。口に入れて飲み込むまでがタッチの差。正直、呼吸を止めて一秒噛むのもほどほどに味噌汁で流し込んでいる。
「口に合う? ふーん、おかしいなぁ、お前ら鼻腐っとるんと違うか?」
味噌汁を口に含んでいたカタセ君が軽く噴き出す。
すぐに俯き、片手で口を覆っていたので大丈夫なようだったが、隣のサツキがアワアワしながら手拭いを渡している。
「やめてくださいよ、変なこと言うの。大惨事になるところっすよ」
「いや、この臭いに気づかんのかと思ってな。うちは全員顔しかめて食べるからな。このワイルドスタンプの肉」
「すいません。湯掻いてはいるんですけど、臭みが取れないんです」
スミレが申し訳なさそうに言い、サツキと共にしゅんとする。料理をした二人からしても食べ辛いものらしく、口に運ぶときは何かを決心したような顔をしている。
平然としているのはスズランただ一人で、ウイナとサイネに至っては手をつけてすらいない。
「あの、ショウガってあります?」
俺は思わず、そんな言葉を口走っていた。
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