上 下
11 / 409
異世界居候編

11.傷だらけの二人といただきます(2)

しおりを挟む
 
 
 リンドウが合掌し、それに合わせて全員が合掌。軽いお辞儀をして、いただきます。食前の挨拶まで同じ。慣れ親しんだ文化が異世界にあると、こんなに違和感があるものなのか。

 ところで、この並びは一体……。

 俺は小首を捻る。リンドウとスズランが両端に向き合って座っているのはいいとして、俺の隣にサイネとマツバラさんがいるのは何故だろう。

 疑問を感じて間もなく、ああ、そういうことかと気づく。

 マツバラさんの隣にはウイナ。向かいの席ではカタセ君がマモリ見習いの二人に挟まれている。

 簡単に言ってしまえば、渡り人は全員、両脇を固められて逃げられないような状態で座らされているということ。

 こんなことをされなくても、今更逃げようもないのだが。

 念には念をということなのか、はたまた俺の考えすぎなのか。

 考えたところで、日本人の中でも取り分け警戒心の薄い平和ボケした俺に分かるはずもないので、気にせず食事を始めることにした。

 まずは角煮を一口。

 うっ、これは……。

 味噌汁をすすり、白米を食べ、漬物をかじる。

「どや、口に合うか?」

 はい、と渡り人組は答えたが、カタセ君と目が合うと苦笑された。

 そう、俺たちは嘘を吐いた。多分、マツバラさんも同じことを思っているだろう。この料理、何かがおかしい、と。

 漬物は浅漬け。瓜のような野菜を軽く塩で揉んで、水気を出して絞ったものだろう。味はやや塩気が強いが、これは許容できる。まったく問題ない。

 白米も美味しい。こちらはむしろ普段食べているものよりも甘みがあり美味しく感じる。

 ただ味噌汁はおそらく出汁だしを取っていない。それに具材に癖がある。小豆は違うと思う。味のすごく薄い塩味ぜんざいに、ほんのり味噌の香りがついた感じ。

 不味くはないがほぼ素材の味だけなので物足りなさが否めない。それでも中には美味しいという人がいる気がする。俺は喉を潤す為の白湯さゆ感覚でいる。

 そして角煮は臭い。非常に獣臭い。この一言に尽きる。

 味が薄いのでより臭さが際立つ。嫌がらせではと疑いを抱くほどに不味い。口に入れて飲み込むまでがタッチの差。正直、呼吸を止めて一秒噛むのもほどほどに味噌汁で流し込んでいる。

「口に合う? ふーん、おかしいなぁ、お前ら鼻腐っとるんと違うか?」

 味噌汁を口に含んでいたカタセ君が軽く噴き出す。

 すぐにうつむき、片手で口を覆っていたので大丈夫なようだったが、隣のサツキがアワアワしながら手拭いを渡している。

「やめてくださいよ、変なこと言うの。大惨事になるところっすよ」

「いや、この臭いに気づかんのかと思ってな。うちは全員顔しかめて食べるからな。このワイルドスタンプの肉」

「すいません。湯掻ゆがいてはいるんですけど、臭みが取れないんです」

 スミレが申し訳なさそうに言い、サツキと共にしゅんとする。料理をした二人からしても食べ辛いものらしく、口に運ぶときは何かを決心したような顔をしている。

 平然としているのはスズランただ一人で、ウイナとサイネに至っては手をつけてすらいない。

「あの、ショウガってあります?」

 俺は思わず、そんな言葉を口走っていた。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地球からきた転生者の殺し方 =ハーレム要員の女の子を一人ずつ寝取っていきます

三浦裕
ファンタジー
「地球人てどーしてすぐ転生してくんの!? いや転生してもいいけどうちの世界にはこないで欲しいわけ、迷惑だから。いや最悪きてもいいけどうちの国には手をださんで欲しいわけ、滅ぶから。まじ迷惑してます」  地球から来た転生者に散々苦しめられたオークの女王オ・ルナは憤慨していた。必ずやあのくそ生意気な地球人どもに目にものみせてくれようと。だが―― 「しっかし地球人超つえーからのう……なんなのあの針がバカになった体重計みたいなステータス。バックに女神でもついてんの? 勝てん勝てん」  地球人は殺りたいが、しかし地球人強すぎる。悩んだオ・ルナはある妙案を思いつく。 「地球人は地球人に殺らせたろ。むっふっふ。わらわってばまじ策士」  オ・ルナは唯一知り合いの地球人、カトー・モトキにクエストを発注する。  地球からきた転生者を、オークの国にあだなす前に殺ってくれ。 「報酬は……そうじゃのう、一人地球人を殺すたび、わらわにエ、エッチなことしてよいぞ……?」  カトーはその提案に乗る。 「任せとけ、転生者を殺すなんて簡単だ――あいつはハーレム要員の女を寝取られると、勝手に力を失って弱る」 毎日更新してます。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

ウィッチ・ザ・ヘイト!〜俺だけ使える【敵視】魔法のせいで、両親に憎まれ村を追放されました。男で唯一の魔術師になったので最強を目指します〜

(有)八
ファンタジー
「親父! 俺、冒険にでたい!」 「は? 無理だろ常識的に考えて」  冒険者に憧れる少年タクトは冒険に出たかった。しかし世界の常識が邪魔をする。“男は”冒険者になれない……魔法が使えないからだ。女だけが魔法を使える。それが十五年生きて知った常識だった。  ある時、夢を否定され意気消沈するタクトの前に一人の老婆が現れる。老婆は自分の事を“魔女”と言った。 「お前さんに魔法を使わせてやろう」  魔女の言葉にタクトは半信半疑だったが、村に帰った時それは確信に変わった。 「お前はもう息子ではない! 今すぐ村を出て行け!」  村の全員が豹変し両親でさえタクトを憎み、侮蔑する。魔女から与えられた力は普通の魔法ではなかったのだ。『敵視《ヘイト》を自身に向ける魔法』。使えば周りは敵だらけになる。  両親から憎まれ、村を追放されたタクトは一人決意する。「最強の魔術師になって、馬鹿にしてきた奴らを見返してやるッ!」  これは、与えられた特異な魔法を武器に、世界でたった一人の“男の魔術師”を目指した少年の物語。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...