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カラット王国編
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(ああ、アルベルト様、やはり私の努力を見てくださっていたのですね……!)
これまで、近づけば避けられ、声を掛ければ素っ気なくされと冷遇されてきました。そしてそうされる度に、メイは自分が至らないからだと思い込みました。
そうです、メイが自分を磨いてきたのは、ひとえにアルベルトに認められたいという強い気持ちがあったからなのです。
ゆえに、アルベルトが気遣う言葉を掛けてくれたという事実は、メイの胸をこれまでにないほど強く高鳴らせました。アルベルトはちゃんと自分を見てくれていた。それを感じ、メイの恋心は更に激しく燃え上がったのです。
(ああ、アルベルト様! このまま何もかも奪い去ってくださらないかしら!)
心でそう思いながらも、メイは努めて冷静に振る舞います。
「殿下、ありがとうございます。ですが、休んでしまっては、殿下の望む私にはなれません。何かが欠落していれば、そこが弱みになりますもの」
(俺の望むお前って何だよ⁉ 今のお前すら望んでないよ⁉)
アルベルトもまた、怖気だつような思いを感じながら、表情は変えません。
「そうか。とにかく無理はするなよ。絶対にな」
アルベルトはそう言ってメイに背を向けました。
男ならアルベルト、女ならメイ。そう言われるほど二人は学園に通う生徒たちの憧れの的でした。なので、この一幕に、周囲にいた女子たちは歓声を上げ、興奮を隠せず、鼻血を噴き出す者まで現れました。
しかし、アルベルトはそれを煩わしく感じていました。生来取り繕うことが嫌いです。ただそれを怠るとどういう事態を招くかということは身をもって知っています。
五歳の茶会は彼にとっての黒歴史。
それを経験したことで弁えることを覚えたのです。
しかし、それを行うには当然、我慢が必要な訳で……。
アルベルトは、人目さえなければ舌打ちして地団駄を踏んだ上で、地面の上をゴロゴロと転がり回って悔しさを紛らわすことができたのにと、心で泣き叫んでいました。
(くそ、結局在学中は完全敗北じゃねぇか! それに何を怖がってんだ俺は! 仮想敵を大きくしすぎだ! アイツをギャフンと言わせるんだろうが!)
対して、メイはアルベルトの大きな背を見つめて鼓動を高鳴らせていました。アルベルトの行動で、勘違いの炎にたっぷりと油が注がれ、地獄の炎も真っ青なほどの燃え盛る業火となっていました。
「アルベルト様……!」
それからのメイは、徹底的に自分を理想の姿に仕上げることに努めました。
すべてはアルベルトを想うがゆえ。
これまでの歳月を、常人には計り知れない、途方もない苦労と張り詰めた重圧感の中で過ごしてきたメイは、十七歳にして自他共に認める淑女に仕上がっています。ですがメイは更に磨きをかける気でいました。
(あの方の隣に立つのは、私です!)
家柄、財力共に申し分なく、容姿、教養まで備えているのですから、王子の許嫁の話がきても当然といえば当然と言えるでしょう。メイ自身もまた、そのように思っていました。そして、相手がアルベルトであるということも、これまでアプローチし続けてきたことから、まるで疑っていませんでした。
しかし、いざその話が出た際に、メイは大変な誤算に見舞われました。父から聞かされたのは、第一王子クラウスがメイとの結婚を望んでいるという話だったのです。
これまで、近づけば避けられ、声を掛ければ素っ気なくされと冷遇されてきました。そしてそうされる度に、メイは自分が至らないからだと思い込みました。
そうです、メイが自分を磨いてきたのは、ひとえにアルベルトに認められたいという強い気持ちがあったからなのです。
ゆえに、アルベルトが気遣う言葉を掛けてくれたという事実は、メイの胸をこれまでにないほど強く高鳴らせました。アルベルトはちゃんと自分を見てくれていた。それを感じ、メイの恋心は更に激しく燃え上がったのです。
(ああ、アルベルト様! このまま何もかも奪い去ってくださらないかしら!)
心でそう思いながらも、メイは努めて冷静に振る舞います。
「殿下、ありがとうございます。ですが、休んでしまっては、殿下の望む私にはなれません。何かが欠落していれば、そこが弱みになりますもの」
(俺の望むお前って何だよ⁉ 今のお前すら望んでないよ⁉)
アルベルトもまた、怖気だつような思いを感じながら、表情は変えません。
「そうか。とにかく無理はするなよ。絶対にな」
アルベルトはそう言ってメイに背を向けました。
男ならアルベルト、女ならメイ。そう言われるほど二人は学園に通う生徒たちの憧れの的でした。なので、この一幕に、周囲にいた女子たちは歓声を上げ、興奮を隠せず、鼻血を噴き出す者まで現れました。
しかし、アルベルトはそれを煩わしく感じていました。生来取り繕うことが嫌いです。ただそれを怠るとどういう事態を招くかということは身をもって知っています。
五歳の茶会は彼にとっての黒歴史。
それを経験したことで弁えることを覚えたのです。
しかし、それを行うには当然、我慢が必要な訳で……。
アルベルトは、人目さえなければ舌打ちして地団駄を踏んだ上で、地面の上をゴロゴロと転がり回って悔しさを紛らわすことができたのにと、心で泣き叫んでいました。
(くそ、結局在学中は完全敗北じゃねぇか! それに何を怖がってんだ俺は! 仮想敵を大きくしすぎだ! アイツをギャフンと言わせるんだろうが!)
対して、メイはアルベルトの大きな背を見つめて鼓動を高鳴らせていました。アルベルトの行動で、勘違いの炎にたっぷりと油が注がれ、地獄の炎も真っ青なほどの燃え盛る業火となっていました。
「アルベルト様……!」
それからのメイは、徹底的に自分を理想の姿に仕上げることに努めました。
すべてはアルベルトを想うがゆえ。
これまでの歳月を、常人には計り知れない、途方もない苦労と張り詰めた重圧感の中で過ごしてきたメイは、十七歳にして自他共に認める淑女に仕上がっています。ですがメイは更に磨きをかける気でいました。
(あの方の隣に立つのは、私です!)
家柄、財力共に申し分なく、容姿、教養まで備えているのですから、王子の許嫁の話がきても当然といえば当然と言えるでしょう。メイ自身もまた、そのように思っていました。そして、相手がアルベルトであるということも、これまでアプローチし続けてきたことから、まるで疑っていませんでした。
しかし、いざその話が出た際に、メイは大変な誤算に見舞われました。父から聞かされたのは、第一王子クラウスがメイとの結婚を望んでいるという話だったのです。
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