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誘拐犯の独白劇~後編~
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しおりを挟むはい、そうです。良一郎が、好恵ちゃんを見逃すようにと百鹿に嘆願したことがすべての原因です。大勢の行方不明者が出たことも、御影山キャンプ場で女性が殺害されたことも、その後に起きた連続殺人も、また、あなたがそうなっているのも全部、かつての私たちが犯した過ちによって引き起こされたことなんです。
もう分かるかと思いますが、キャンプ場で起きた殺人事件の犯人は蜘蛛人です。そして、それ以降に起きた連続殺人事件の犯人は私と千鹿です。被害者はすべて、私たちが駆除した蜘蛛人だったということです。キャンプ場で起きた事件の犯人が捕まらなかったのも、私たちが駆除したから、という訳ですね。
では、連続殺人犯の私と千鹿が捕まらないのは何故でしょうね? 上手く身を隠しているからでしょうか? それとも証拠を残していないからでしょうか? 確かにそれもありますが、それだけでは足りません。どれだけ上手くやったつもりでも、まったく足跡を残さないというのは不可能ですから。では何故、捕まっていないんでしょう? 答えは依頼を出したのが警察だからです。といっても、上の人たちですけどね。
その人たちは、欺影虫や蜘蛛人というものの存在を知っています。のみならず、彼の世が関わる事象について多くの知識を有しています。彼らにとって、彼の世のものに取り憑かれた人は、人ではなく虫や獣です。それ故、駆除という言葉を用いますし、人の法からも外すんです。
とはいえ、彼らが自分たちで駆除することはありません。どのように定義したところで、傍目から見れば殺人ですから、組織が関わるにはリスクが大き過ぎるんです。それで私たちのような外部の者に駆除依頼を出す訳です。日記にもあった通り、害虫害獣駆除は警察の仕事ではないということです。餅は餅屋、ということですね。
蜘蛛人は皆失踪者ですから、駆除したとしても、遺体が発見されない限りは依然として行方不明者扱いで済まされます。ですから、なるだけ表沙汰にならないようにお願いされていたんですけどね。ふっ、まったく彼らには悪いことをしました。ここまで手を煩わせることになるとは夢にも思っていませんでしたよ。
本当なら、御影山の中だけで仕事が終わるはずだったんですけどね。慢心していたのかもしれません。ほとんどは始末したんですが、何頭か逃げていくのを取り零してしまったんです。最悪だったのは、山を下りて町中に隠れる蜘蛛人がいたことですね。
昔と違い人も多く、そのほぼすべてがスマホを持っています。どこにでも監視カメラがありますし、そこからの通信技術も発達しています。それらが原因で、こちらは動きを制限されてしまったんです。隠蔽にも限りがありますからね。
それで、死体の処理に手が回らないことも出てきました。警察にも協力を願いましたが、彼らも一枚岩ではありません。報道関係者にリークされて表沙汰になるという情けない結果にも見舞われました。
とても無様な仕事だったんです。全部始末したと思っても、新たな蜘蛛人がどこかに潜んでいて、静かに仲間を増やされていました。流石に手に負えないということで同業者にも応援を頼み、なるべく世間に情報が流出しないように駆除しました。
事件として扱われたのは、四、五件ですが、実際のところその十倍以上の駆除は行っています。この二ヶ月というもの、本当に大変な思いをしました。お陰で千鹿とデートできたのも一回だけでしたしね。散々ですよ。
なんて、ふふっ、あなたに愚痴を聞かせても仕方ありませんね。猶予があるうちに説明を済ませてしまいましょう。では、次の絵巻の画像を見てもらいましょうか。
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