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誘拐犯の独白劇~前編~
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しおりを挟むどうしました? 怯えなくて大丈夫ですよ?
私は愉快犯ではありません。現に、こうして身代金の要求をしています。そういう推理を立てた人がいたという話をしているだけですから、心配する必要はありません。私たちには関わりのあることではないですからね。
さ、話を戻しますよ。
『犯人は二人を長い間どこかに監禁し、日常的に虐待していた。そんな中、キャンプ場の事件と報道被害が起きた。犯人はそれを利用することを思いついた。自分の罪を他人になすりつける、或いは、世間を騒がせることができると考え、監禁していた二人を殺害し、キャンプ場で起きた事件と関連性があると思わせる細工をして公園に遺棄した』。
というのが、元警察官のコメンテーターが世間に伝えた推理です。彼は愉快犯の線が強いと言っていました。捕まらないようにするのが目的なら、まどろっこしい作業を加えるのは逆効果だそうですよ。勉強になりますね。犯罪ジャーナリストを謳うだけあって優秀なコメンテーターです。少なくとも、キャンプ場の事件よりは現実的な推理ですよ。これが現実的な事件であれば、或いは、彼の推理が役立って犯人を捕まえることができたかもしれませんね。ふふっ、どうでもいいですけどね。
似たような殺人事件は続きました。半月前には御影山付近にある廃タイヤ置き場でボヤ騒ぎがあり、駆けつけた消防隊員が首のない女性の焼死体を発見しました。頭部は敷地内に落ちていて、首の切断面は刃物で乱暴に切り裂かれていました。
その一週間後、灯ヶ池公園の林道とキャンプ場側の林で、首が抉れた男性の死体が発見されました。これもやはり、刃物を使った犯行でした。
犯人は複数いるのでは? という推理は以前からされていたのですが、この事件でその線が濃厚と見られるようになりました。しかし、世間からすれば、『だから何だ』という話でしかありませんよね。『そんなことはどうでもいいから、さっさと捕まえろ』という話です。『警察は何をやっているんだ』と非難されています。いずれの事件も犯人は捕まることのないまま現在に至っていますから、そういうことになっても仕方がないんですが、残念ながら、今後も犯人が捕まることはないでしょう。
ふふっ、何故かは追々分かりますから話を進めていきましょう。
御影山キャンプ場殺人事件が起きてからずっと、近隣の小中学校では送迎や集団下校といった対策が取られていました。あなたの通う高校でも、一人で帰宅しないように教師から指示が出されていたんじゃないですか? あら、覚えているようですね。
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