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21‐2 正木誠司、制御不能(中編)

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「はぁ、ジョニー、もう大丈夫か?」
「ああ。世話をかけた。もう問題ない」
「よし。エレス、流石にあの群れは厳しいから俺にポチを装着しろ」
【はい、バックパック型ウェアラブルデバイスドール。ポチ装着します】

 ポチは故障の所為で飛ぶことができないので、しゃがんで背に乗せる。その途端にポチの四脚が俺の肩と腰をしっかりとホールドし違和感なく背面装甲化した。
 同時にホログラムカードにウェアラブルデバイスの全権限が与えられる。俺は手早くストレージ画面を出し、必要な物を取り出す。

「ほら、ジョニー」
「う、お、おお。やっぱすげぇな」

 驚いた様子のジョニーに預かっていた光弾突撃銃とガスマスクを返し弾倉を十個渡した。俺も同じ物を取り出して装備する。弾倉は二人ともポケットだ。

 ガスマスク装着後は大袈裟な手振りと大声開始。
 ぼそぼそ喋っても音がこもって聞こえないんだよな。

「消えたときも驚いたが、どうなってんだそれ!」
「企業秘密だ! エレス、映像外部出力状態になってくれ!」
【はい、マスター】

 妖精型エレスが俺の側を優雅に飛ぶ。この状況で微笑んでらっしゃるよ。

「そういや、ポチの残弾ってどんなもんだ?」
【あと二十発は残ってます。撃つときはお伝えください】
「なぁエレスよ。それは余裕の笑みか?」
【うふふ、どんな状況でも、笑顔は絶やさない方がよろしいかと】
「ぶっ、わっはははは、豪胆なのはセイジだけじゃなかったか!」
「おいおい、俺は豪胆じゃないぞ!」
「サイレントバンシーの生首持つような奴がよく言うぜ!」
「確かに! でもあいつら全然サイレントじゃねぇよな!」
「言えてら! さぁ、おいでなすったぞ! 撃ちまくれぇっ!」

 約三百メートル先から迫ってきていた魔物の群れが残り五十メートルほどになったところで銃撃開始。気持ちが昂っているからかジョニーが雄叫びを上げる。
 銃撃の腕前はどんなもんかと思っていたが、俺なんかより遥かに精度が高い。どうして連続して撃ってんのに全部ヘッドショットが決まるんだよ。

「爽快だなおい! どんな練習すりゃそうなるんだよ!」
「わははは、気持ちが乗ってるときゃあこんなもんだ!」

 気持ちと乗りで済む話じゃねぇだろ! なんか悔しい!

「エレス! そろそろライトだ! どぎついのを頼む!」
【はい、かしこまりましたマスター】

 妖精型エレスが魔物の群れに向かって飛んで行き、閃光を放つ。俺たちはガスマスクの遮光ゴーグルがあるから問題ないが、それでも凄い光って見えるな。
 群れの最前列が驚いて立ち止まり後方から続々と押されてドミノ倒し開始。そこに銃撃が入るので死体が積み上がりバリケードになっていく。

「こりゃすげぇ! お前が相棒だったらまだ傭兵やってたかもな!」
「俺は穏やかに暮らしたいんだよ! ヨハンがいるだろ!」
「あいつはうるせぇからなあ! 言うこときかねぇしよ! わははは!」

 互いに弾倉の交換タイミングをずらす。というか、意識しなくてもジョニーが撃ち尽くすまでが早い。笑いながら撃つって、相当ストレス溜まってたんだろうな。

 あとは、皆が残ってくれてて嬉しかったってとこか。
 ヨハンが言うこと聞かなくて良かったじゃないか。なぁ、ジョニー。

「そろそろ進むぞ!」
「わかった!」

 積み上がった魔物の死体が群れの進行速度を落とした。俺とジョニーは並んで前進し、後ろに押されてどん詰まっている魔物を前にして足を止める。

「俺の後ろに! 群れを突破することだけ考えてくれ!」
「わかった!」

 ジョニーの返事を聞いてすぐ、俺は全ての死体をストレージに回収した。
 目の前にあった死体の山が消えたことで、また群れの最前列が倒れ、バタバタと後ろの魔物も前のめりに倒れ込んでいく。下敷きになった魔物は圧死だろう。

「先行する!」
「おう、任せた!」

 俺は銃をストレージにしまい、従業員の腐敗のお陰で手に入れた大剣を取り出す。それを左横に構え、倒れた魔物を越えてきた群れの先頭を思い切り薙ぐ。
 鈍い音と重い手応え。押し止められたような力が腕に響く。

「う、お、おおおおらああああああ!」

 拮抗し、溜まる力。それを雄叫びと共に爆発させるように逆袈裟に振り抜く。
 斬撃を浴びせた三体の魔物が吹き飛び、回転しながら血と臓物を撒き散らす。俺は大剣の重みに流されるように回転しながら二撃目を振りかぶり打ち下ろす。

 ズドンという重い音が響き、正面にいた魔物が数体潰れるように床に倒れ伏す。斬れ味よりも重みが勝っているようで、斬撃よりも打撃を受けたような死に様だ。

 これ使ってた傭兵って、ずぼらな奴だったのかもな。すごい斬れ味悪いわ。でも、振れないことはないってわかったし十分か。これにて試し斬り終了だな。

 観察もそこそこに、俺は大剣をストレージにしまい、光弾突撃銃に持ち替える。そしてつい今しがた仕留めたばかりの前方の死体を回収し道を作った。
 
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