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第一章 異変
六話 偽りの心
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拠点を後にし、教室に戻ったが特にやることがなかったから少し校内を回ることにした。
なんだかんだでここにきてまだほとんど時間がたっていないから校内のマップはほとんど頭に入っていない。
……そういえば、この学校の中に奴らはいないのだろうか。所々赤い血らしきものは目に入るが、姿はない。
誰かが全員殺したのか…?
そんなことができる人と言ったら鈴桜と瑠々ぐらいだ。
────ふと思う。もしここがゲームの世界なら彼女達は一体何だ? もし仮にNPCだとしてもそれにしては出来すぎている。それにちゃんとした心や感情を持っているのはひと目でわかる。
だったら一体……
「俺と同じ…なのか?」
だがそんなはずあるわけない。しかし───
蓮の中で様々な思考がごちゃ混ぜになっている間に、屋上に到着したみたいだ。鍵は掛かってなかったからとりあえず入ってみることにした。
屋上には庭園があったが、特別な施設があるわけではなかった。だがなかなか広い。
それに風当たりもよかったので少し風にあたることにした。
────ここが本当にゲームの中の世界なら彼女達は一体…?
やはり一度思い浮かんでしまった疑問はなかなか消えてはくれず、もやもやと頭の中に残る。
そもそも鈴桜と瑠々、そしてあの双子は本当にこの世界で生まれたのか? 本当は別の場所で…
───ガチャ…
ドアの開く音がしたので、そっちを見てみると瑠々がいた。瑠々はこっちを見るなり、伝言を伝えにきたのかまっすぐこっちに向かって来た。
「蓮…鈴桜が呼んでる……次の任務って………」
「あぁ、わかった。すぐ行くよ」
双子との話は終わったみたいで、どうやらまた新しい任務が始まるようだ。
とりあえず拠点に戻ることにした。
拠点には鈴桜、瑠々、双子がいた。
「…で、次の任務は何だ?」
「次の任務は────」
「校内リフォーム大作戦! だよ!」
鈴桜が話そうとしていたところに割り込んで、天華が元気にそう言った。
「ちょっ……任務名を言うのは私が担当だ! 割り込むなんてずるいではないか!」
「ふっふーん。はやく言わないりっちゃんが悪いんだよーう」
何だか鈴桜がいつもより子供っぽい。というかりっちゃんって何だ。いつの間にこの二人は仲良くなっていたんだ。ついでに瑠々が羨ましそうに二人を眺めている。
「…まぁいいが、校内リフォームと言うと…?」
「リフォームというより掃除だな。蓮も見かけただろうが校内には血がついてたりまだまだ散らかっているからね」
確かに綺麗とは言えない状況だったが……
「あ、そういえば言い忘れていた。話の途中だが天華、天茉共に桜組の仲間になった。よろしく頼むぞ」
そういえばって…また忘れてたのか。鈴桜は意外と忘れっぽい性格なのか?
「ご紹介に預かりましたぁ! 天華だよ!」
「弟の天茉です。宜しくお願いします」
双子だから顔こそ似てるが、性格は真逆と言ったところだ。というか本当に天茉は男の娘…
「ま、細かいことは時期にわかるだろう。というわけで仲間も増えたし…任務だな」
「……了解…」
「今回ばかりは桜組以外の人もわずかながらいるからな。一応挨拶ぐらいはしておけ。まぁ意味ないとは思うが」
「意味ない…というと?」
「実際に話しかけてみな。よくわかる」
そのぐらい教えてくれてもいいではないか。────とりあえず、会ったら話かけてみることにする。
「天華と天茉は三階を。蓮は二階、私と瑠々は一階だな。連は一人になっちゃうが私がたまに手伝いに行くよ」
「あぁ、わかった」
「……鈴桜…」
「わかってるよ、瑠々」
瑠々と目を合わせただけなのに意思疎通ができる程の仲なのかと少しばかり感心していた。
「三階は大丈夫だが、二階と一階では必ずしも奴らがいないというわけではない。もし遭遇してしまったらここに音を立てずに逃げろ。戦闘は危険だ」
「奴らって…ゾンビのことですか……?」
「天茉は心配する必要はないだろう。油断は禁物だがな」
「大丈夫! もしもの時はあたしが守るよ!」
なんか心配だが大丈夫そうだろう。
「まぁ奴らがいる確率は本当に低いからあまり気にしすぎるな」
「わかりました、鈴桜さん」
それぞれ各階にて任務が始まっ……た?
────三階にて
「むうー。少しばかり汚れが目立ちますなぁ」
目立つほどではなかったが、やはりまったく綺麗というわけではなかった。
……やっぱり、ここでも人が────
「お姉ちゃんは雑巾で吹いててください。水をくんできます」
「了解だよー。いってらっしゃーい」
相変わらずの笑顔で天茉を見送った。
────だが天茉が教室から出た瞬間に天華の笑顔が消える。それはおそらく誰も見たことがないほどに、まったくの無表情だった。
だが表情とは裏腹に、天華の心の中では様々な想いが入り狂う。
───天茉を守らなくては。
───天茉をもう二度と失わないように。
───双子の姉として、ずっと傍に……
悲しみ、怒り、そしてあの時への後悔。絶対に忘れないこの想い……
────あの時、あの日の事。あたしは絶対に弟を殺した罪なるあの男を許さない。
「お姉ちゃん、ただいま」
「お…おかえりぃ。重そうなバケツだねぇ」
「いっぱいお水が入ってますから」
天茉が水の入ったバケツを持って教室に戻ってきた。
「さっさと終わらせちゃおーうっ!」
「はい、そうですね」
雑巾を水で濡らし、しっかり絞ってから拭き掃除を始めた。
なんだかんだでここにきてまだほとんど時間がたっていないから校内のマップはほとんど頭に入っていない。
……そういえば、この学校の中に奴らはいないのだろうか。所々赤い血らしきものは目に入るが、姿はない。
誰かが全員殺したのか…?
そんなことができる人と言ったら鈴桜と瑠々ぐらいだ。
────ふと思う。もしここがゲームの世界なら彼女達は一体何だ? もし仮にNPCだとしてもそれにしては出来すぎている。それにちゃんとした心や感情を持っているのはひと目でわかる。
だったら一体……
「俺と同じ…なのか?」
だがそんなはずあるわけない。しかし───
蓮の中で様々な思考がごちゃ混ぜになっている間に、屋上に到着したみたいだ。鍵は掛かってなかったからとりあえず入ってみることにした。
屋上には庭園があったが、特別な施設があるわけではなかった。だがなかなか広い。
それに風当たりもよかったので少し風にあたることにした。
────ここが本当にゲームの中の世界なら彼女達は一体…?
やはり一度思い浮かんでしまった疑問はなかなか消えてはくれず、もやもやと頭の中に残る。
そもそも鈴桜と瑠々、そしてあの双子は本当にこの世界で生まれたのか? 本当は別の場所で…
───ガチャ…
ドアの開く音がしたので、そっちを見てみると瑠々がいた。瑠々はこっちを見るなり、伝言を伝えにきたのかまっすぐこっちに向かって来た。
「蓮…鈴桜が呼んでる……次の任務って………」
「あぁ、わかった。すぐ行くよ」
双子との話は終わったみたいで、どうやらまた新しい任務が始まるようだ。
とりあえず拠点に戻ることにした。
拠点には鈴桜、瑠々、双子がいた。
「…で、次の任務は何だ?」
「次の任務は────」
「校内リフォーム大作戦! だよ!」
鈴桜が話そうとしていたところに割り込んで、天華が元気にそう言った。
「ちょっ……任務名を言うのは私が担当だ! 割り込むなんてずるいではないか!」
「ふっふーん。はやく言わないりっちゃんが悪いんだよーう」
何だか鈴桜がいつもより子供っぽい。というかりっちゃんって何だ。いつの間にこの二人は仲良くなっていたんだ。ついでに瑠々が羨ましそうに二人を眺めている。
「…まぁいいが、校内リフォームと言うと…?」
「リフォームというより掃除だな。蓮も見かけただろうが校内には血がついてたりまだまだ散らかっているからね」
確かに綺麗とは言えない状況だったが……
「あ、そういえば言い忘れていた。話の途中だが天華、天茉共に桜組の仲間になった。よろしく頼むぞ」
そういえばって…また忘れてたのか。鈴桜は意外と忘れっぽい性格なのか?
「ご紹介に預かりましたぁ! 天華だよ!」
「弟の天茉です。宜しくお願いします」
双子だから顔こそ似てるが、性格は真逆と言ったところだ。というか本当に天茉は男の娘…
「ま、細かいことは時期にわかるだろう。というわけで仲間も増えたし…任務だな」
「……了解…」
「今回ばかりは桜組以外の人もわずかながらいるからな。一応挨拶ぐらいはしておけ。まぁ意味ないとは思うが」
「意味ない…というと?」
「実際に話しかけてみな。よくわかる」
そのぐらい教えてくれてもいいではないか。────とりあえず、会ったら話かけてみることにする。
「天華と天茉は三階を。蓮は二階、私と瑠々は一階だな。連は一人になっちゃうが私がたまに手伝いに行くよ」
「あぁ、わかった」
「……鈴桜…」
「わかってるよ、瑠々」
瑠々と目を合わせただけなのに意思疎通ができる程の仲なのかと少しばかり感心していた。
「三階は大丈夫だが、二階と一階では必ずしも奴らがいないというわけではない。もし遭遇してしまったらここに音を立てずに逃げろ。戦闘は危険だ」
「奴らって…ゾンビのことですか……?」
「天茉は心配する必要はないだろう。油断は禁物だがな」
「大丈夫! もしもの時はあたしが守るよ!」
なんか心配だが大丈夫そうだろう。
「まぁ奴らがいる確率は本当に低いからあまり気にしすぎるな」
「わかりました、鈴桜さん」
それぞれ各階にて任務が始まっ……た?
────三階にて
「むうー。少しばかり汚れが目立ちますなぁ」
目立つほどではなかったが、やはりまったく綺麗というわけではなかった。
……やっぱり、ここでも人が────
「お姉ちゃんは雑巾で吹いててください。水をくんできます」
「了解だよー。いってらっしゃーい」
相変わらずの笑顔で天茉を見送った。
────だが天茉が教室から出た瞬間に天華の笑顔が消える。それはおそらく誰も見たことがないほどに、まったくの無表情だった。
だが表情とは裏腹に、天華の心の中では様々な想いが入り狂う。
───天茉を守らなくては。
───天茉をもう二度と失わないように。
───双子の姉として、ずっと傍に……
悲しみ、怒り、そしてあの時への後悔。絶対に忘れないこの想い……
────あの時、あの日の事。あたしは絶対に弟を殺した罪なるあの男を許さない。
「お姉ちゃん、ただいま」
「お…おかえりぃ。重そうなバケツだねぇ」
「いっぱいお水が入ってますから」
天茉が水の入ったバケツを持って教室に戻ってきた。
「さっさと終わらせちゃおーうっ!」
「はい、そうですね」
雑巾を水で濡らし、しっかり絞ってから拭き掃除を始めた。
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