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PART II
03 容疑者
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XXXXの住所をカーナビに入力し、俺は車を発進させた。町中で頻繁に見かける安物で、色もありふれている軽自動車だ。浮気の尾行や張り込みも含め、探偵稼業には目立たない車が一番だ。しかし、現在の車のチョイスは経済的な理由によるところが大きい。まあこのごちゃごちゃした界隈で商売をするならバイクが最適なのだが、流石にこの年で屋根のない雨ざらし状態に耐えるのは無理だ。
そこここに路上駐車された車の間をぬって、野良猫よりも警戒心が乏しい歩行者の横をかすめるようにすり抜けていく。他にもっとマシなルートはないのかと思うが、XXXXがあるのは俺には馴染みのない区域だ。ここは素直にナビの指示に従っておくべきだろう。
夜の営業に向けて準備を開始した繁華街を進むうち、俺は既視感に捕らわれた。この種の風景というのは勿論、日本中どこにでもある。駅からは微妙に遠く、ぼったくりバーから格安の飲み屋、風俗店が入り乱れる、表通りからは外れた路地裏の風景。
俺はXXXの前で見かけた事件への関与が疑われる頬に傷のある男を追ってでたらめに走っていた時のことを思い出した。探偵業などやっていれば、無意識的に特徴的な看板や店などランドマークを記憶に留めるようになる。追っていた男が大昔の知り合いだと分かり、一緒に飲み歩いてべろんべろんに酔っぱらっていたとしても、その習慣は抜けない。
ノボルのマンションへと至る経路を辿りながら、マンションの名前を思い出そうとしていた。「随分値が張りそうな高層マンション」だと俺は思った。半ば担ぎ込まれるように建物の中に入る前、エントランスの手前に設置されていた大理石に刻まれていた文字を、一瞬だったが、確かに見た。そこに彫られていたのは
ポルカ
片仮名の前か後ろに漢字が何文字かあったはずだが、脳裏に浮かんでくるのは片仮名部分だけだった。だが、はたしてそれは「ポルカ」だったのだろうか。ユキに遭遇して「ぽるか」と名のつく店が少なくとも近隣に五軒存在すると教えられたのはこの後のことだが、それ以前に俺はXXXの殺人現場(俺の部屋)で怪しげなメッセージカードを拾っていた。
『わたしに会いたいなら、ポルカって店で』
カードにはそう記してあった。だが、玄関の三和土から拾い上げた時点では、メッセージを読んでいる暇はなかった。大慌てで部屋から逃げ出して、建物の前の野次馬に怪しい男――ノボルだったわけだが――がいるのを発見し、追いかけた。だから、ノボルのマンションに到着した時には、「ポルカ」という名前は、俺にとってまだ何の意味もなさなかったはずだ。そもそも一人では歩けないほど泥酔しており、まともな判断力など働かない状態だった。
それでものろのろと車を運転しているうちに、ごみごみとした繁華街を抜けて、落ち着いた住宅街に入り込んだ。この辺りを歩いていた時が最も酷い泥酔状態で、しかも夜だったため、記憶が曖昧だった。
仕方なく周辺を根気よくぐるぐる回って、ようやくそれらしき建物を発見した。いかにも高級そうな高層マンション。入口の大理石に刻まれているのは
ポノレカ花の宮
俺はエントランス前を通過したところに車を停め、窓から顔を突き出して建物のてっぺんまで眺めた。高層マンションは珍しくないこの界隈でもひときわ高い巨大な建物だ。ノボルの部屋は十二階だったか、要塞を思わせるマンションのオートロックをどうにか通過できたとしても、部屋番号を覚えていない。いや、エレベーターを降りて一番突き当りの部屋だったか? しかし、部屋の前までたどり着けたとして、一体どうする気だ。
このように直感に頼る捜査はとっくの昔にやめたはずなのに。
俺は深い溜息をついて運転席側のウインドウを閉じようとした。少し離れた先に停まっているセダン型の車――黒い国産車――から一目でそれと分かる男が俺をじっと見ていることに気付いたのはその時だ。俺は舌打ちして、速やかに車を発車させようとした。
「ここで何をしているんですか」
スーツ姿の男が運転席側のドアの傍らに立っていた。服装、雰囲気からして明らかに黒いセダンの男の仲間だ。俺は観念してウインドウを再び下げた。
「別に何も。立派なマンションだから、いくらぐらいするのかと思ってね」
「不動産業の方ですか」
「いえ、そういうわけでは」
「あんたにゃ買えないよ」
突然態度を豹変させた男の馴れ馴れしい口調に俺はムッとしたが、相手にしないことにした。まあ実際こんなマンションには手が届かないだろうし。
「それじゃ、先を急いでいるので」とウインドウを上げようとしたが、男が革手袋をした手でそれを制した。
「あれはシニア向けマンションだよ。そこまで年じゃないよな? もっとも、俺が誰だかわからないぐらい呆けちゃいるらしいが」
男に言われて、俺はまじまじとその無礼な輩の顔を見た。何も思い出さなかった。
「嫌だなあ、サカイさん。俺ですよ。タニヤマです」
俺はタニヤマに促されて、車を移動させ、黒いセダンを通り越した位置に停車し、車を降りた。この馴れ馴れしい男が誰なのかは、皆目思い出せなかった。
「サカイ、お前か!」
黒塗りのセダンから降り立った男が俺を見て言った。
「ああー…」
「サカイさん、呆けちまったみたいですよ、タカギさん」
「おいおい、お前が辞めてからまだ十年だぞ。ひよっこだったタニヤマがようやく一人前になるぐらいの時間じゃねえか。今何してんだ、サカイ。堅気にゃ見えねえが」
「堅気の探偵ですよ」
俺は憮然とした顔で言った。ここは話を合わせておくのが得策に思えた。
「なに、すると、お前もあのハタケヤマ事件を追っているのか」
タカギと呼ばれた年配の刑事が言った。
「何だい、ハタケヤマ事件てのは。俺の専門は浮気調査だ。たまに血が流れることもあるが、発狂した嫁さんが夫を殺害する前に制止するのも料金の内でね。おたくらが『事件』と呼ぶような案件は扱ってないよ」
「信じられないなあ」と若い方、といっても三十代半ばと思われるタニヤマ刑事が言う。
「サカイさんが浮気調査? 冗談でしょう。あなたもハタケヤマノボルの自殺は臭い、そう睨んでいるんでしょう?」
年配の方が、おい、と若い方を肘で小突いた。
「ハタケヤマノボル、聞いたことがある名前だ」
俺は何食わぬ顔で言う。
「あの金持ち相手の老人用マンションの経営者、半年前に自殺した男ですよ。知らないはずがないでしょう。表向きはプール・サウナ・温泉・ジム付きで定期的に医者と看護師の訪問も受けられるシニア向けマンションだが、裏では『金持ち老人の監獄』という黒い噂が立っていた。ハタケヤマの自殺は、その捜査の最中のことだった。おおかた、入居者のリッチな家族から真相究明の依頼を受けた、そんなところでしょう、サカイさん」
ぺらぺらと得意げに語り続ける若いタニヤマの勝手な思い込みを、俺は利用することにした。浮気調査が専門だと、俺は正直に申告した。あちらが何故誤解しているのかは謎だが、俺のせいではない。
「依頼人の秘密は明かせないね」
俺はクールに言ってのけた。
「やっぱりね。サカイさん、今のあんたは、一般人だ。警察には協力してもらわないと困りますよ」
「まだ調査を始めたばかりなんだ。渡せる情報は何もない」
「それじゃあ、何かわかったら、連絡をください」
タニヤマはポケットから名刺を取り出し、俺に渡した。タニヤマが物欲しげな顔で突っ立っているので、仕方なく俺も財布から角の擦り切れた名刺を取り出して渡した。
「サカイ探偵事務所。本当に探偵なんだな」
俺の名刺を見ながらタニヤマは言い、タカギと顔を見合わせて、首を振った。
ムカつく奴らだ。
胸に忍ばせているのがペッパースプレー液入りのおもちゃではなく実弾が装填された拳銃だったら、ちょっとはマシな人生だとでも思っているのか。俺はもう、二度と、誰も、殺さないと誓ったのだ。
俺は表面だけは愛想のいいタニヤマと、俺に対する不信感を隠そうともしないタカギに見送られながら車をスタートさせた。角を曲がって姿が見えなくなるまで、二人の刑事が俺の車の行く先をじっと見つめているのが、バックミラー越しに見て取れた。
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俺はXXXの前で見かけた事件への関与が疑われる頬に傷のある男を追ってでたらめに走っていた時のことを思い出した。探偵業などやっていれば、無意識的に特徴的な看板や店などランドマークを記憶に留めるようになる。追っていた男が大昔の知り合いだと分かり、一緒に飲み歩いてべろんべろんに酔っぱらっていたとしても、その習慣は抜けない。
ノボルのマンションへと至る経路を辿りながら、マンションの名前を思い出そうとしていた。「随分値が張りそうな高層マンション」だと俺は思った。半ば担ぎ込まれるように建物の中に入る前、エントランスの手前に設置されていた大理石に刻まれていた文字を、一瞬だったが、確かに見た。そこに彫られていたのは
ポルカ
片仮名の前か後ろに漢字が何文字かあったはずだが、脳裏に浮かんでくるのは片仮名部分だけだった。だが、はたしてそれは「ポルカ」だったのだろうか。ユキに遭遇して「ぽるか」と名のつく店が少なくとも近隣に五軒存在すると教えられたのはこの後のことだが、それ以前に俺はXXXの殺人現場(俺の部屋)で怪しげなメッセージカードを拾っていた。
『わたしに会いたいなら、ポルカって店で』
カードにはそう記してあった。だが、玄関の三和土から拾い上げた時点では、メッセージを読んでいる暇はなかった。大慌てで部屋から逃げ出して、建物の前の野次馬に怪しい男――ノボルだったわけだが――がいるのを発見し、追いかけた。だから、ノボルのマンションに到着した時には、「ポルカ」という名前は、俺にとってまだ何の意味もなさなかったはずだ。そもそも一人では歩けないほど泥酔しており、まともな判断力など働かない状態だった。
それでものろのろと車を運転しているうちに、ごみごみとした繁華街を抜けて、落ち着いた住宅街に入り込んだ。この辺りを歩いていた時が最も酷い泥酔状態で、しかも夜だったため、記憶が曖昧だった。
仕方なく周辺を根気よくぐるぐる回って、ようやくそれらしき建物を発見した。いかにも高級そうな高層マンション。入口の大理石に刻まれているのは
ポノレカ花の宮
俺はエントランス前を通過したところに車を停め、窓から顔を突き出して建物のてっぺんまで眺めた。高層マンションは珍しくないこの界隈でもひときわ高い巨大な建物だ。ノボルの部屋は十二階だったか、要塞を思わせるマンションのオートロックをどうにか通過できたとしても、部屋番号を覚えていない。いや、エレベーターを降りて一番突き当りの部屋だったか? しかし、部屋の前までたどり着けたとして、一体どうする気だ。
このように直感に頼る捜査はとっくの昔にやめたはずなのに。
俺は深い溜息をついて運転席側のウインドウを閉じようとした。少し離れた先に停まっているセダン型の車――黒い国産車――から一目でそれと分かる男が俺をじっと見ていることに気付いたのはその時だ。俺は舌打ちして、速やかに車を発車させようとした。
「ここで何をしているんですか」
スーツ姿の男が運転席側のドアの傍らに立っていた。服装、雰囲気からして明らかに黒いセダンの男の仲間だ。俺は観念してウインドウを再び下げた。
「別に何も。立派なマンションだから、いくらぐらいするのかと思ってね」
「不動産業の方ですか」
「いえ、そういうわけでは」
「あんたにゃ買えないよ」
突然態度を豹変させた男の馴れ馴れしい口調に俺はムッとしたが、相手にしないことにした。まあ実際こんなマンションには手が届かないだろうし。
「それじゃ、先を急いでいるので」とウインドウを上げようとしたが、男が革手袋をした手でそれを制した。
「あれはシニア向けマンションだよ。そこまで年じゃないよな? もっとも、俺が誰だかわからないぐらい呆けちゃいるらしいが」
男に言われて、俺はまじまじとその無礼な輩の顔を見た。何も思い出さなかった。
「嫌だなあ、サカイさん。俺ですよ。タニヤマです」
俺はタニヤマに促されて、車を移動させ、黒いセダンを通り越した位置に停車し、車を降りた。この馴れ馴れしい男が誰なのかは、皆目思い出せなかった。
「サカイ、お前か!」
黒塗りのセダンから降り立った男が俺を見て言った。
「ああー…」
「サカイさん、呆けちまったみたいですよ、タカギさん」
「おいおい、お前が辞めてからまだ十年だぞ。ひよっこだったタニヤマがようやく一人前になるぐらいの時間じゃねえか。今何してんだ、サカイ。堅気にゃ見えねえが」
「堅気の探偵ですよ」
俺は憮然とした顔で言った。ここは話を合わせておくのが得策に思えた。
「なに、すると、お前もあのハタケヤマ事件を追っているのか」
タカギと呼ばれた年配の刑事が言った。
「何だい、ハタケヤマ事件てのは。俺の専門は浮気調査だ。たまに血が流れることもあるが、発狂した嫁さんが夫を殺害する前に制止するのも料金の内でね。おたくらが『事件』と呼ぶような案件は扱ってないよ」
「信じられないなあ」と若い方、といっても三十代半ばと思われるタニヤマ刑事が言う。
「サカイさんが浮気調査? 冗談でしょう。あなたもハタケヤマノボルの自殺は臭い、そう睨んでいるんでしょう?」
年配の方が、おい、と若い方を肘で小突いた。
「ハタケヤマノボル、聞いたことがある名前だ」
俺は何食わぬ顔で言う。
「あの金持ち相手の老人用マンションの経営者、半年前に自殺した男ですよ。知らないはずがないでしょう。表向きはプール・サウナ・温泉・ジム付きで定期的に医者と看護師の訪問も受けられるシニア向けマンションだが、裏では『金持ち老人の監獄』という黒い噂が立っていた。ハタケヤマの自殺は、その捜査の最中のことだった。おおかた、入居者のリッチな家族から真相究明の依頼を受けた、そんなところでしょう、サカイさん」
ぺらぺらと得意げに語り続ける若いタニヤマの勝手な思い込みを、俺は利用することにした。浮気調査が専門だと、俺は正直に申告した。あちらが何故誤解しているのかは謎だが、俺のせいではない。
「依頼人の秘密は明かせないね」
俺はクールに言ってのけた。
「やっぱりね。サカイさん、今のあんたは、一般人だ。警察には協力してもらわないと困りますよ」
「まだ調査を始めたばかりなんだ。渡せる情報は何もない」
「それじゃあ、何かわかったら、連絡をください」
タニヤマはポケットから名刺を取り出し、俺に渡した。タニヤマが物欲しげな顔で突っ立っているので、仕方なく俺も財布から角の擦り切れた名刺を取り出して渡した。
「サカイ探偵事務所。本当に探偵なんだな」
俺の名刺を見ながらタニヤマは言い、タカギと顔を見合わせて、首を振った。
ムカつく奴らだ。
胸に忍ばせているのがペッパースプレー液入りのおもちゃではなく実弾が装填された拳銃だったら、ちょっとはマシな人生だとでも思っているのか。俺はもう、二度と、誰も、殺さないと誓ったのだ。
俺は表面だけは愛想のいいタニヤマと、俺に対する不信感を隠そうともしないタカギに見送られながら車をスタートさせた。角を曲がって姿が見えなくなるまで、二人の刑事が俺の車の行く先をじっと見つめているのが、バックミラー越しに見て取れた。
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