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7 いざ温室へ

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 温室を見てみたいというと、ゼンヤはこころよく案内役を引き受けてくれました。
 温室は、裏庭をさらに奥に進んだところにありました。

「わあ、すごい。これ、ガラスだね。ビニールハウスじゃなくて」

 壁から屋根まですべてガラスで、高い屋根は、三角にとがっています。そしてその屋根が、とても高いのです。そのガラスごしに見えるのは、まるで温室のなかに森を閉じ込めたみたいな、一面グリーンの光景です。

「ここに入る時には、念入りに消毒しないといけないんだ」

 二人はまず、フードのついたレインコートや長靴が整然と並べられた前室で、白いゴム長靴に履き替えました。それから、レインコートを頭からすっぽりかぶって、使い捨てのマスクと手袋をしました。

「奥の扉に入る前に、このタライのなかに長靴のまま入って。この中に入っている消毒液で、長靴を消毒するんだ」
「わあ、なんか、前にテレビで見た北海道の牧場と同じだあ」
「へえ、そうなの?」
「うん、あのね、たいせつに育てている牛や豚に、外からやってきた人間から病気をうつされないようにって。あれ、でも、ここは温室だよね」
「ああうん、でも、植物以外にも、ちょっとした生き物もいるからね」
「昆虫とか?」
「まあ、そんなとこ」

 消毒液のタライの向こうにはさらに小さな部屋があって、しゅーっと白い霧が壁の両側そして天井、足元から噴き出してきました。驚いているナツの手を、ゼンヤにぎって引っ張ったので、口から心臓が飛び出るかと思いました。合成ゴムの手袋なんてしていなかったら、なおよかったのですが。
 そして、あわあわしているナツの目の前に、むっとする熱気とともに、見たことがないほど濃い緑が飛び込んできました。

 まるで、森みたい! いや、ジャングル?

 外からガラス越しに見たときよりも、みずみずしくて豊かに茂った植物のなかにのみ込まれたかのようでした。

「足下、気をつけて。それ、ぼくの予備の長靴だから、きみには大きいよね?」
「うん、ありがとう」
「そうだ、きみの分の長靴と、コートも準備しないといけないね」
「いいえ、ぜんぜん、おかまいなく。わたし、ぶかぶかの長靴だいすきだから!」

 ナツはゼンヤが手をつないだままでいてくれるのが嬉しくて、ついバカなことを言ってしまったことを後悔しました。先をいくゼンヤの肩がすこし震えているのは、笑いをこらえているせいかもしれません。
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