なぜだかそこに猫がいた：短編集

第三十七話 ループウミガメ

　卵から孵化したら砂をかき分けて顔を出す。そこからがスタート。
　よーいどん！　で一斉に海を目指す兄弟達。海はすぐそこだが、小さい我々にとっては大層な距離で、多くはここで脱落する。

　あっ

　と思った時には海鳥の嘴に捕らえられ、飲み込まれる。
　ゲームオーバー。


　卵から孵化したら砂をかき分けて顔を出す。そこからがスタート。
　よーいどん！　で一斉に海を目指す兄弟達。海はすぐそこだが、小さい我々にとっては大層な距離で、多くはここで脱落する。必死に走って、走って、走って、小さなひれを懸命に動かして、遂に波打ち際まで来た！

　あっ
　
　と思った時には蟹のハサミに捕らえられ、頭をちょん切られて中身を引きずり出される。
　ゲームオーバー。


　卵から孵化したら砂をかき分けて顔を出す。そこからがスタート。
　よーいどん！　で一斉に海を目指す兄弟達。海はすぐそこだが、小さい我々にとっては大層な距離で、多くはここで脱落する。必死に走って、走って、走って、小さなひれを懸命に動かして、遂に波打ち際まで来た！　さっと引いていく波に追いついて、そのまま海に引き込まれる。海の中でも僕達はすぐ泳げるんだ。ウミガメだから。

　あっ

　と思った時には魚に丸呑みにされる。
　ゲームオーバー。


　卵から孵化したら砂をかき分けて顔を出す。そこからがスタート。
　よーいどん！　で一斉に海を目指す兄弟達。海はすぐそこだが、小さい我々にとっては大層な距離で、多くはここで脱落する。
　てさあ。これでもう何回目？　何回やり直してもちっとも前に進めない。だってさ、お母さんは一度の出産で百個ぐらい卵を産むけど、大人になれる確率は五千分の一なんだって。もうやだ、僕。こんなのやめたい。何回やり直しても、結局同じじゃない。今回駄目だったらもう終わりでいいよ。ウミガメの一生なんて、もうたくさん！

　あっ