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第32話「相談」
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第32話「相談」
蛍は、手元に置いていたミネラルウォーターを一気に飲み干すと、一回大きく深呼吸をして尋ねた。
「副島さん、できるだけ、姉に重罪に持って行く方法を教えてください。また、何かいい手があるなら教えてください。」
「ドライに言いますが、佐久間さんは当事者ではありませんので、何もできることはありません。河貝子さんがどうするかに対して、佐久間さんが意見するくらいです。
まあ、単純に刑期を伸ばさせるなら、今日、言ったように「PTSD」の診断を受け、裁判期間中もずっと通院が必要な状況を証明することです。ただ、私の立場で、「PTSD」や「うつ」を「でっち上げること」は賛成しかねます。
河貝子さんが、裁判でそれを証言してしまう可能性もありますし、私の思う「正義」に反しますので、そういったことをお望みであれば、別の弁護士にご依頼されることをお勧めします。
あと、示談金を受け取るかどうかも決定権は河貝子さんにあります。心の傷は、「金額換算」できるものではありませんが、今の日本では、「刑事事件」の「初犯」には緩めの判決が出る傾向にあります。
実刑引き延ばしを望む結果、河貝子さんの経済利益享受の可能性を放棄するのは賛成しかねます。まあ、賠償金を引き出すのであれば、いわゆる「勝ち専」の外資系弁護士事務所に依頼されることをお勧めします。彼らは、成功報酬で勝てる示談は受けますので、裁判費用の心配はありませんし、河貝子家としては、メリットがあると考えられるなら、その選択もありです。
必要であれば、コンサルタントとして、私が河貝子さんのお母様とお話しすることまではお受けしますので選択肢の一つとしてお考え下さい。
あとは、裁判後、お姉さんが実刑を受ける、執行猶予がついて釈放される場合にしても、拘束を解かれたのちに河貝子さんに関わらないように、「接見禁止」の仮処分を取ることは可能です。ただ、常時、警察の護衛を受けられるわけではありませんので、「お守り」みたいなもんだとお考え下さい。
まあ、私と佐久間さんがここで決めるべきことではありませんので、今日はこれくらいにしておきましょう。」
と蛍に断りを入れて、副島は電話を切った。
(あぁ、凪君のことを考えると、私と別れるのがええねやろか…?私もインチキ修理代なんか放棄して、凪君と妹さんの学費や生活費になるんやったら、そっちの方がええんかもしれへんな…。みんな、私のいたずら心が引き起こしたことなんや…。凪君、ごめんね…、でも、できるなら、別れたくない…。凪君は、どう思ってるの…?もう、私と一緒にいたくないん?あぁ、お姉ちゃんを殺してしまいたい…。)蛍はテーブルに突っ伏して泣いた。
しかし、いくら泣いても心は晴れるはずはなく、時計の針だけが進んでいった。午後11時を過ぎたとき、凪からラインの返事が来た。「今日あったことを母には話しました。母と喧嘩になりました。もし、母から電話が入るようなことがあったら無視しておいてください。」とあった。(えっ、お母さんに全部話したん?私との事も?あぁ、もう、私どうしたらええの?)
蛍は「明日の放課後会える?」とラインでメッセージを送ったが、そのメッセージに対しては、「既読」がつくことは無かった。蛍はベッドに潜ったが、朝まで眠りに落ちることは無かった。
朝、泣きはらした赤く腫れた目を隠すために、濃い目にメイクをして出社した。朝一番に、黒瀬に「朝礼後、社長室に来るように。」と言われた。
何を言われるのかと、びくびくしながら社長室に入ると、黒瀬からの話は、予想していたものとまったく違っていた。
「螢ちゃん、ちょっと連続休暇あげるから、ゆっくりリフレッシュしておいで。土日挟んで、イケメンの彼氏を連れて旅行でも行って来たらどうや?」
と笑顔で話しかけられ、20万円入った紙封筒を渡された。
「えっ?そんな…。」
次の言葉が出ないでいると、
「螢ちゃんが元気ないとわしも楽しくないからな。昨日、何があったんかは、あえてわしは聞かへん。けど、昨日の電話の時の螢ちゃんの慌てっぷりと、今日のその顔見たらなんかあったんやろうってことはわしでもわかる。まあ、彼は、高校生やから、海外でも行っておいでとは言われへんけど、国内旅行くらいやったらええやろ。勃てへんわしの代わりに、彼氏にチョメチョメしてもらっておいで!カラカラカラ。」
と笑った。
午前8時半、蛍のスマホが鳴った。凪からのラインだった。黒瀬の前であったが、メッセージを確認させてもらった。「今日の3時半にいつものロータリーでいいですか?」とあり、急いで「うん、待ってる。」と返事を打った。(いい話にしてもあかん話にしても、会わんことには話が進めへんわんな。)蛍は黒瀬に言った。
「社長ありがとうございます。休暇の件は、明日までに返事させてもらいます。このお金は、受け取る理由が無いのでお返ししておきますね。」
蛍は、手元に置いていたミネラルウォーターを一気に飲み干すと、一回大きく深呼吸をして尋ねた。
「副島さん、できるだけ、姉に重罪に持って行く方法を教えてください。また、何かいい手があるなら教えてください。」
「ドライに言いますが、佐久間さんは当事者ではありませんので、何もできることはありません。河貝子さんがどうするかに対して、佐久間さんが意見するくらいです。
まあ、単純に刑期を伸ばさせるなら、今日、言ったように「PTSD」の診断を受け、裁判期間中もずっと通院が必要な状況を証明することです。ただ、私の立場で、「PTSD」や「うつ」を「でっち上げること」は賛成しかねます。
河貝子さんが、裁判でそれを証言してしまう可能性もありますし、私の思う「正義」に反しますので、そういったことをお望みであれば、別の弁護士にご依頼されることをお勧めします。
あと、示談金を受け取るかどうかも決定権は河貝子さんにあります。心の傷は、「金額換算」できるものではありませんが、今の日本では、「刑事事件」の「初犯」には緩めの判決が出る傾向にあります。
実刑引き延ばしを望む結果、河貝子さんの経済利益享受の可能性を放棄するのは賛成しかねます。まあ、賠償金を引き出すのであれば、いわゆる「勝ち専」の外資系弁護士事務所に依頼されることをお勧めします。彼らは、成功報酬で勝てる示談は受けますので、裁判費用の心配はありませんし、河貝子家としては、メリットがあると考えられるなら、その選択もありです。
必要であれば、コンサルタントとして、私が河貝子さんのお母様とお話しすることまではお受けしますので選択肢の一つとしてお考え下さい。
あとは、裁判後、お姉さんが実刑を受ける、執行猶予がついて釈放される場合にしても、拘束を解かれたのちに河貝子さんに関わらないように、「接見禁止」の仮処分を取ることは可能です。ただ、常時、警察の護衛を受けられるわけではありませんので、「お守り」みたいなもんだとお考え下さい。
まあ、私と佐久間さんがここで決めるべきことではありませんので、今日はこれくらいにしておきましょう。」
と蛍に断りを入れて、副島は電話を切った。
(あぁ、凪君のことを考えると、私と別れるのがええねやろか…?私もインチキ修理代なんか放棄して、凪君と妹さんの学費や生活費になるんやったら、そっちの方がええんかもしれへんな…。みんな、私のいたずら心が引き起こしたことなんや…。凪君、ごめんね…、でも、できるなら、別れたくない…。凪君は、どう思ってるの…?もう、私と一緒にいたくないん?あぁ、お姉ちゃんを殺してしまいたい…。)蛍はテーブルに突っ伏して泣いた。
しかし、いくら泣いても心は晴れるはずはなく、時計の針だけが進んでいった。午後11時を過ぎたとき、凪からラインの返事が来た。「今日あったことを母には話しました。母と喧嘩になりました。もし、母から電話が入るようなことがあったら無視しておいてください。」とあった。(えっ、お母さんに全部話したん?私との事も?あぁ、もう、私どうしたらええの?)
蛍は「明日の放課後会える?」とラインでメッセージを送ったが、そのメッセージに対しては、「既読」がつくことは無かった。蛍はベッドに潜ったが、朝まで眠りに落ちることは無かった。
朝、泣きはらした赤く腫れた目を隠すために、濃い目にメイクをして出社した。朝一番に、黒瀬に「朝礼後、社長室に来るように。」と言われた。
何を言われるのかと、びくびくしながら社長室に入ると、黒瀬からの話は、予想していたものとまったく違っていた。
「螢ちゃん、ちょっと連続休暇あげるから、ゆっくりリフレッシュしておいで。土日挟んで、イケメンの彼氏を連れて旅行でも行って来たらどうや?」
と笑顔で話しかけられ、20万円入った紙封筒を渡された。
「えっ?そんな…。」
次の言葉が出ないでいると、
「螢ちゃんが元気ないとわしも楽しくないからな。昨日、何があったんかは、あえてわしは聞かへん。けど、昨日の電話の時の螢ちゃんの慌てっぷりと、今日のその顔見たらなんかあったんやろうってことはわしでもわかる。まあ、彼は、高校生やから、海外でも行っておいでとは言われへんけど、国内旅行くらいやったらええやろ。勃てへんわしの代わりに、彼氏にチョメチョメしてもらっておいで!カラカラカラ。」
と笑った。
午前8時半、蛍のスマホが鳴った。凪からのラインだった。黒瀬の前であったが、メッセージを確認させてもらった。「今日の3時半にいつものロータリーでいいですか?」とあり、急いで「うん、待ってる。」と返事を打った。(いい話にしてもあかん話にしても、会わんことには話が進めへんわんな。)蛍は黒瀬に言った。
「社長ありがとうございます。休暇の件は、明日までに返事させてもらいます。このお金は、受け取る理由が無いのでお返ししておきますね。」
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