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第23話「拉致」
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第23話「拉致」
凪が蛍の部屋を訪れてから4日後。凪の高校の創立記念日で午前中の記念行事だけで11時には学校が終わるということなので、ドライブがてらランチを食べに行く約束になっていた。
ちょっとしたデートに蛍は朝からうきうきしていた。ドレッサーの横の鏡の前で何枚も服を合わせては、「あーでもない」、「こーでもない」と女子中学生の初デート前のような様相で楽しそうに服を選んでいる。(今日は、パンツスーツやなくて、フリフリのスカートでいって驚かせちゃおうかな?でも、「29歳にして「痛いやつ」って」思われるんも辛いよなぁ…。まあ、ここは無難に「シックな大人の魅力」で攻めるか?いや、それじゃあ、今までと変化がないわな…。えーっと、全身で3色にまとめた方がええかな…。あー、もう、どうしよう?)
最終的には、白黒の縦の細いストライブのノースリトップスに濃紺のロング丈のボトムスにパンプスの色も合わせた。
いつもの待ち合わせ場所に、マイバッハを走らせた。(あまり早くに着くと、「軽く」見られちゃうかな?まあ、無難に「5分前」でいいかな?きっと、凪君は、もっと早くについてるんやろうけどな!)
空は晴れ渡り、絶好のドライブデート日和だった。今日は、奈良方面に車を走らせ、生駒山中にある有名な蕎麦屋に行くつもりでいた。「売り切れごめん」の店なので、今日は12時半に予約を入れている。
上品な「二八麺」に大量の鰹の削り節を使った香りの高い一番出汁に、和歌山の醤油蔵で作られたこだわりの醤油を足した麺つゆは、一度でも口にすると「駅前蕎麦」は食べられなくなってしまう「やばいやつ」だ。
蕎麦にセットの天ぷらがまた「一品もの」!地元野菜の天ぷらの中でも、マイタケ、ヒラタケ、ホンシメジのきのこ三種盛りは、抹茶塩でいただく。凪の為に、特別に豚ヒレと地鶏の天ぷらも頼んでいる。
本来であれば、ここに冷酒が入るともう無敵なのだが、今日は「お酒」は我慢。(凪君、喜んでくれるといいな。)と思いながら、5分前に約束の場所に着いたが凪の姿は無い。
窓を開け、サイドミラーで自分の顔が変ににやけていないかチェックする。(よしっ!大丈夫!今日も、いい女を演じるんやで、「私」!)と気合を入れた。
蛍のスマホが鳴った。社長の黒瀬からだった。黒瀬には、凪と付き合っていることは話しているし、今日は凪と会うことも説明し、休みをもらっている。
「あー、螢ちゃん。デートの邪魔して悪いな。もうイケメン彼氏と一緒か?」
「いや、まだです。約束の時間5分前なんで、大丈夫ですよ。どうかしました?」
と業務上の電話をしているうちに、約束の時間は過ぎていた。(あれー、凪君が遅れるなんて初めてのことやな。もしかして、黒瀬社長と話してる間に留守電かライン入ってるかもしれへんからチェックしとこか…。学校行事が長引いてたりするんかな?)とスマホをチェックしたが、凪からの連絡は何も入ってなかった。
何やら、胸騒ぎがして蛍は凪の電話にコールした。10回目のコールで電話がつながった。
「もしもし、凪君?私、螢やけど、今どこ?」
「・・・・・・・」
電話は切られた。凪の声は聞こえなかったが、最後に女の笑い声が聞こえたような気がした。その後、何度コールしても「ブツ切」され、ライン電話に切り替えたが、コールが鳴るだけで繋がることは無かった。約10分、蛍は電話、ライン、メールと手を変え凪に連絡を入れたが、何の返事もなかった。(なんか、凄い嫌な予感がする…。事故にでもあってなかったらええねんけど…。それにしても一瞬聞こえたような気がする女の声は…)震える指でスマホを繰り返し触った。
「凪君へ。連絡ください。門真市駅周辺で待っています。」と留守番電話とラインにメッセージを残したが、蛍の心の中に垂れこめた暗雲は晴れることなく、蛍の心拍数は上がったままだった。
待ち合わせの約束の時間から1時間が過ぎた。いまだに凪からの連絡はない。蛍は仕方なく、予約していた蕎麦屋にキャンセルとお詫びの電話を入れて凪の連絡を待ち続けていた。(あー、凪君のスマホのGPS情報とか登録してたらよかった…。変に、「縛る女」って思われたくなくて遠慮したんは失敗やったな…。)と思った瞬間、スマホが鳴った。
凪からのラインだった。ラインを開くと凪の泣き顔のアップの写真だった。写真が一枚送ってこられただけでメッセージは付いていない。蛍が電話をしても反応はない。(いったい、何が起こってるの?凪君、泣いてるってどういうことなん?もう、不安で不安で仕方がないわ…。)
蛍は震えを抑えつつ、可能性を考えてみた。交通事故とかに巻き込まれたわけではなさそうだ。しかし、この連絡が取れない状況はそれ以外に思い浮かばない。それに、送ってこられた泣き顔の写真…。考えがまとまり切らない状況で、蛍のスマホが鳴った。発信先は「凪君」となっている。
「もしもし、凪君?凪君なん?何かあったの?」
と電話に出ると、知らない男の声で一言だけ言われて電話は切れた。
「あんたの大事な凪君は「拉致」らせてもらったよ…。」
凪が蛍の部屋を訪れてから4日後。凪の高校の創立記念日で午前中の記念行事だけで11時には学校が終わるということなので、ドライブがてらランチを食べに行く約束になっていた。
ちょっとしたデートに蛍は朝からうきうきしていた。ドレッサーの横の鏡の前で何枚も服を合わせては、「あーでもない」、「こーでもない」と女子中学生の初デート前のような様相で楽しそうに服を選んでいる。(今日は、パンツスーツやなくて、フリフリのスカートでいって驚かせちゃおうかな?でも、「29歳にして「痛いやつ」って」思われるんも辛いよなぁ…。まあ、ここは無難に「シックな大人の魅力」で攻めるか?いや、それじゃあ、今までと変化がないわな…。えーっと、全身で3色にまとめた方がええかな…。あー、もう、どうしよう?)
最終的には、白黒の縦の細いストライブのノースリトップスに濃紺のロング丈のボトムスにパンプスの色も合わせた。
いつもの待ち合わせ場所に、マイバッハを走らせた。(あまり早くに着くと、「軽く」見られちゃうかな?まあ、無難に「5分前」でいいかな?きっと、凪君は、もっと早くについてるんやろうけどな!)
空は晴れ渡り、絶好のドライブデート日和だった。今日は、奈良方面に車を走らせ、生駒山中にある有名な蕎麦屋に行くつもりでいた。「売り切れごめん」の店なので、今日は12時半に予約を入れている。
上品な「二八麺」に大量の鰹の削り節を使った香りの高い一番出汁に、和歌山の醤油蔵で作られたこだわりの醤油を足した麺つゆは、一度でも口にすると「駅前蕎麦」は食べられなくなってしまう「やばいやつ」だ。
蕎麦にセットの天ぷらがまた「一品もの」!地元野菜の天ぷらの中でも、マイタケ、ヒラタケ、ホンシメジのきのこ三種盛りは、抹茶塩でいただく。凪の為に、特別に豚ヒレと地鶏の天ぷらも頼んでいる。
本来であれば、ここに冷酒が入るともう無敵なのだが、今日は「お酒」は我慢。(凪君、喜んでくれるといいな。)と思いながら、5分前に約束の場所に着いたが凪の姿は無い。
窓を開け、サイドミラーで自分の顔が変ににやけていないかチェックする。(よしっ!大丈夫!今日も、いい女を演じるんやで、「私」!)と気合を入れた。
蛍のスマホが鳴った。社長の黒瀬からだった。黒瀬には、凪と付き合っていることは話しているし、今日は凪と会うことも説明し、休みをもらっている。
「あー、螢ちゃん。デートの邪魔して悪いな。もうイケメン彼氏と一緒か?」
「いや、まだです。約束の時間5分前なんで、大丈夫ですよ。どうかしました?」
と業務上の電話をしているうちに、約束の時間は過ぎていた。(あれー、凪君が遅れるなんて初めてのことやな。もしかして、黒瀬社長と話してる間に留守電かライン入ってるかもしれへんからチェックしとこか…。学校行事が長引いてたりするんかな?)とスマホをチェックしたが、凪からの連絡は何も入ってなかった。
何やら、胸騒ぎがして蛍は凪の電話にコールした。10回目のコールで電話がつながった。
「もしもし、凪君?私、螢やけど、今どこ?」
「・・・・・・・」
電話は切られた。凪の声は聞こえなかったが、最後に女の笑い声が聞こえたような気がした。その後、何度コールしても「ブツ切」され、ライン電話に切り替えたが、コールが鳴るだけで繋がることは無かった。約10分、蛍は電話、ライン、メールと手を変え凪に連絡を入れたが、何の返事もなかった。(なんか、凄い嫌な予感がする…。事故にでもあってなかったらええねんけど…。それにしても一瞬聞こえたような気がする女の声は…)震える指でスマホを繰り返し触った。
「凪君へ。連絡ください。門真市駅周辺で待っています。」と留守番電話とラインにメッセージを残したが、蛍の心の中に垂れこめた暗雲は晴れることなく、蛍の心拍数は上がったままだった。
待ち合わせの約束の時間から1時間が過ぎた。いまだに凪からの連絡はない。蛍は仕方なく、予約していた蕎麦屋にキャンセルとお詫びの電話を入れて凪の連絡を待ち続けていた。(あー、凪君のスマホのGPS情報とか登録してたらよかった…。変に、「縛る女」って思われたくなくて遠慮したんは失敗やったな…。)と思った瞬間、スマホが鳴った。
凪からのラインだった。ラインを開くと凪の泣き顔のアップの写真だった。写真が一枚送ってこられただけでメッセージは付いていない。蛍が電話をしても反応はない。(いったい、何が起こってるの?凪君、泣いてるってどういうことなん?もう、不安で不安で仕方がないわ…。)
蛍は震えを抑えつつ、可能性を考えてみた。交通事故とかに巻き込まれたわけではなさそうだ。しかし、この連絡が取れない状況はそれ以外に思い浮かばない。それに、送ってこられた泣き顔の写真…。考えがまとまり切らない状況で、蛍のスマホが鳴った。発信先は「凪君」となっている。
「もしもし、凪君?凪君なん?何かあったの?」
と電話に出ると、知らない男の声で一言だけ言われて電話は切れた。
「あんたの大事な凪君は「拉致」らせてもらったよ…。」
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