7 / 52
第5話「過失100%」
しおりを挟む
第5話「過失100%」
蛍は心の中で大きく深呼吸を二回した。(ここは「飴と鞭」やな!まずは、「飴」や!)
「お兄ちゃん、大丈夫か?頭打ったり、腕や膝捻ってへんか?きちんと立てるか?」
と優しい声をかけた。少年が立ち上がると右手の手のひらを少し擦りむいていたので、運転席のドリンクホルダーのミネラルウォーターを取り出すと、美少年の握手を取り、傷を洗い流した。スーツのポケットからハンカチを出すと拭き取り傷を確認した。
「よかった、傷は深くないけど、血が出てるから、絆創膏を貼っといたろな!」
とポーチから絆創膏を取り出すと、少年の手を取り、ゆっくりと貼ってあげた。少年の色白の顔に紅がさした。(おっ、うぶな反応してくれるやんか!これは、久しぶりにときめいてしまうよなぁ!)
「す、すみません…。」
小さく震えた声で、少年は蛍にお礼を言うと直角にお辞儀をした。(おうおう、行動もかわいいやないの!さて、これからどう料理したろかなぁ!ここからは「鞭」やな!)
蛍は、少年に背を向けベンツのドアを確認した。リアドアからサイドミラーまで自転車のグリップのゴムであろう約1センチの黒い筋が続き、サイドミラーは完全に根元から折れ、4本の配線でかろうじてぶら下がっている。ボディーに指を添わすとへこんでいる感じはない。(ミラーはともかく、ドアの黒線はコンパウンドで撮れるレベルかな?)と思ったが、ここは攻め時とばかりに、
「お兄ちゃん、免許証か学生証出しや!私の車、何かわかるよな!私は完全停車中。君が一方的にぶつかってきたんやから、責任が君に全てあるのはわかってるよな!」
と凄んだ。
ブラックスーツに真っ赤なシャツ、サングラスに派手なベンツ…。勝手に女やくざかなにかと思ったのであろう、手のひらに絆創膏を貼った震える指で財布から学生証を取り出し蛍に渡した。
蛍は受け取った学生証を見た。今よりかなり短いスポーツ刈りで映る写真もイケメンであることに変わりはなかった。門真工科高校の3年生のようである。誕生日は「4月」ということは「18歳」であることがすぐに分かった。名前に目を通すと、蛍の動きが止まった。
「かわ、かい、こ、なぎ?これなんて読むん?」
蛍は震えるイケメンに尋ねた。
「よ、読みにくくて済みません。サンズイの「河」に貝殻の「貝」に子供の「子」で「かわにな」と読みます。名前は風が収まる「凪」でそのまま「なぎ」。「かわにななぎ」と言います。門真工科高校の3年生です。免許は持っていません。
お、お姉さんの車、べ、ベンツですよね。た、高いんですか?た、高いんですよねえぇ…。」
と言うと、半泣きでうるんだ瞳を蛍に向けてくる。
(がおっ!ナイスリアクション!思いっきりいじめたくなってまうやん!「カワニナ」ってまさにゲンジボタルの幼虫の時の餌そのもんや!」、これは食ったるしかあれへんわな!)蛍は、少し意地悪な顔をした。
「後でもめるの嫌やから、先に「凪君」の学生証写真撮らせてもらって、君が停まってる私の車に一方的に突っ込んできたって動画を撮らせてもらうわな。もちろんええよな!」
すっかりチジミあがってる凪は、了承した。蛍は、学生証をスマホで撮影すると凪に返し、胸の前に持たせて宣誓させた。
「ぼく、河貝子凪は、〇月×日お昼12時過ぎに停まっているベンツに自転車でぶつかってしまい、ドアを傷つけミラーを折ってしまいました。責任は100%僕にあります。すみませんでした。」
凪の「宣誓」をスマホで再生確認すると、倒れたままに凪の自転車を起こすと、右のグリップが削れてはいるが、金属部分にまでは削れていないことを確認した。
「凪君、自転車、とりあえずそこの駐輪場に止めておいで。私の車の修理代、「ぼったくられてる」とか思われたらいややから、今から一緒に車屋に行って見積り取るで。その方が安心やろ?」
と声をかけた。
凪は蛍の指示に従い、近くの店の駐輪スペースに自転車を移動させると、すぐに戻ってきた。その間に、蛍は車を購入したブローカーに事故の内容と「見積りは思いっきり乗っけたって下さい。」とのメッセージを送っていたが、凪は全く気づいてはいなかった。
凪が戻ってくると蛍は優しい口調で言った。
「凪君、この後の予定は?」
「はい、夕方5時半からアルバイトがあるんですけど、それまでは大丈夫です。今、家に帰るところでしたんで…。」
「わかった。私は、佐久間蛍。じゃあ、今から車屋に行くから、右側から乗って!」
蛍は心の中で大きく深呼吸を二回した。(ここは「飴と鞭」やな!まずは、「飴」や!)
「お兄ちゃん、大丈夫か?頭打ったり、腕や膝捻ってへんか?きちんと立てるか?」
と優しい声をかけた。少年が立ち上がると右手の手のひらを少し擦りむいていたので、運転席のドリンクホルダーのミネラルウォーターを取り出すと、美少年の握手を取り、傷を洗い流した。スーツのポケットからハンカチを出すと拭き取り傷を確認した。
「よかった、傷は深くないけど、血が出てるから、絆創膏を貼っといたろな!」
とポーチから絆創膏を取り出すと、少年の手を取り、ゆっくりと貼ってあげた。少年の色白の顔に紅がさした。(おっ、うぶな反応してくれるやんか!これは、久しぶりにときめいてしまうよなぁ!)
「す、すみません…。」
小さく震えた声で、少年は蛍にお礼を言うと直角にお辞儀をした。(おうおう、行動もかわいいやないの!さて、これからどう料理したろかなぁ!ここからは「鞭」やな!)
蛍は、少年に背を向けベンツのドアを確認した。リアドアからサイドミラーまで自転車のグリップのゴムであろう約1センチの黒い筋が続き、サイドミラーは完全に根元から折れ、4本の配線でかろうじてぶら下がっている。ボディーに指を添わすとへこんでいる感じはない。(ミラーはともかく、ドアの黒線はコンパウンドで撮れるレベルかな?)と思ったが、ここは攻め時とばかりに、
「お兄ちゃん、免許証か学生証出しや!私の車、何かわかるよな!私は完全停車中。君が一方的にぶつかってきたんやから、責任が君に全てあるのはわかってるよな!」
と凄んだ。
ブラックスーツに真っ赤なシャツ、サングラスに派手なベンツ…。勝手に女やくざかなにかと思ったのであろう、手のひらに絆創膏を貼った震える指で財布から学生証を取り出し蛍に渡した。
蛍は受け取った学生証を見た。今よりかなり短いスポーツ刈りで映る写真もイケメンであることに変わりはなかった。門真工科高校の3年生のようである。誕生日は「4月」ということは「18歳」であることがすぐに分かった。名前に目を通すと、蛍の動きが止まった。
「かわ、かい、こ、なぎ?これなんて読むん?」
蛍は震えるイケメンに尋ねた。
「よ、読みにくくて済みません。サンズイの「河」に貝殻の「貝」に子供の「子」で「かわにな」と読みます。名前は風が収まる「凪」でそのまま「なぎ」。「かわにななぎ」と言います。門真工科高校の3年生です。免許は持っていません。
お、お姉さんの車、べ、ベンツですよね。た、高いんですか?た、高いんですよねえぇ…。」
と言うと、半泣きでうるんだ瞳を蛍に向けてくる。
(がおっ!ナイスリアクション!思いっきりいじめたくなってまうやん!「カワニナ」ってまさにゲンジボタルの幼虫の時の餌そのもんや!」、これは食ったるしかあれへんわな!)蛍は、少し意地悪な顔をした。
「後でもめるの嫌やから、先に「凪君」の学生証写真撮らせてもらって、君が停まってる私の車に一方的に突っ込んできたって動画を撮らせてもらうわな。もちろんええよな!」
すっかりチジミあがってる凪は、了承した。蛍は、学生証をスマホで撮影すると凪に返し、胸の前に持たせて宣誓させた。
「ぼく、河貝子凪は、〇月×日お昼12時過ぎに停まっているベンツに自転車でぶつかってしまい、ドアを傷つけミラーを折ってしまいました。責任は100%僕にあります。すみませんでした。」
凪の「宣誓」をスマホで再生確認すると、倒れたままに凪の自転車を起こすと、右のグリップが削れてはいるが、金属部分にまでは削れていないことを確認した。
「凪君、自転車、とりあえずそこの駐輪場に止めておいで。私の車の修理代、「ぼったくられてる」とか思われたらいややから、今から一緒に車屋に行って見積り取るで。その方が安心やろ?」
と声をかけた。
凪は蛍の指示に従い、近くの店の駐輪スペースに自転車を移動させると、すぐに戻ってきた。その間に、蛍は車を購入したブローカーに事故の内容と「見積りは思いっきり乗っけたって下さい。」とのメッセージを送っていたが、凪は全く気づいてはいなかった。
凪が戻ってくると蛍は優しい口調で言った。
「凪君、この後の予定は?」
「はい、夕方5時半からアルバイトがあるんですけど、それまでは大丈夫です。今、家に帰るところでしたんで…。」
「わかった。私は、佐久間蛍。じゃあ、今から車屋に行くから、右側から乗って!」
10
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる