6 / 52
第4話「出会い」
しおりを挟む
第4話「出会い」
大阪府に二か所ある免許試験センターのうちの一つ、門真運転試験場の最寄り駅となる京阪電車の古川橋駅の南側ロータリーに派手なメタリックピンクのベンツが停まっていた。
メルセデスベンツSクラスロングのW222型をベースにホイールベースを200ミリ伸ばし、後部座席の快適性に特化した最高級モデルであるメルセデスのサブブランド「マイバッハ」のS650。2019年に発表された2代目のモデルで、初代マイバッハの6000万円台の車両価格と比較すると半額以下になったとはいえ、新車価格で2930万円の限定モデルは、高級車マニアには憧れの的の一台である。
細身で大柄な体にスリムなブラックのブランドものスーツに大きな襟の真っ赤なシャツにややきつめのメイクを施し、大きなサングラスをかけた佐久間蛍(さくまけい)は、左ハンドルの運転席に座り、天井の電動ルーフを開き、青い空を見上げていた。
(あー、明日の夜は、社長とか…。きっとええ食事用意してくれてるんやろなぁ。美味しいもん食べておいしいお酒飲んだら、一緒に温泉か…・はぁ、仕事と思って頑張らなしゃあぁいなぁ…。)とため息をついた。
身長168センチで体重は49キロ。スリーサイズは78、58、83。よく言えばスレンダーな「モデル体型」、悪く言えば、男を引き付ける魅力に欠けた、前後の凹凸ボリュームに掛けた「ガリペタ体形」…。
顔は標準以上の「かわいこちゃん」ではあるが、周りの男からは「AK●」に居そう!」と呼ばれる都度、「はいはい、特別美人でもなければめちゃくちゃかわいいわけでもないってことやな!」とひねくれて受け取ってしまう29歳…。
最後に彼氏がいたのは、26歳の時。「豊胸手術を考えてみいへんか?」と言われたのをきっかけに暴力沙汰の大喧嘩となり、その後3年間、特定の彼氏はいない。
前彼と別れた直後に、勤め先の事業縮小に伴う、リストラに逢い、仕方なく、場繋ぎにと時給1500円でスナックでアルバイトしているときに、今の社長兼愛人の黒瀬叶(くろせかのう)に知り合ったのだった。30歳年上の黒瀬は、彼氏というよりは、父親のような感覚で、優しく蛍に接してくれていた。
黒瀬は、門真を本社として、大阪府内で5か所の事務所を構える金融業者の代表だった。5つ下の妻との愛は冷めており、自身も糖尿病からくる「ED」を患っており、「性的不能者」を公言していた。
何度か、店外で食事に誘われ、ある日、泊りの温泉旅行に誘われた。店外デートの度に高級な食事と高額の小遣いをくれる黒瀬に対し、「少しのお返し」のつもりで「OK」の返事をして、一緒に部屋付属する露天風呂に入った。黒瀬は、20代の蛍の身体を大変喜んだが、下半身は起き上がることはなかった。それ以来、月に1度か2度のペッティングの約束で黒瀬の会社に主に運転手役の庶務係と愛人役ということで、月50万の手当をもらっている。
(まぁ、私を縛るでもなく、ペッティングもさらっとしたものやし、黒瀬社長のキャラは嫌いやないからこれはこれでええか…)と思うようになり、早3年…。今の、愛車「S650」は新車で買えば2930万円だが、黒瀬の知り合いの自動車ブローカーから、「この「マイバッハ」、名義変更できへん金融物やねん。実は「事故車起こし」のニコイチやねんけど、うちの修理代未払で「幣の中」入ってしもて15年は出てけえへんから、なんぼかで引き取ってくれへんか?」と言われ、黒瀬が「蛍の日頃の足に」と350万で引き取ったのだった。
「黒瀬社長、私、国産車で十分ですよ!ちょっと、私には贅沢すぎて…。」と遠慮したのだが、「350万やったら国産車より安いがな。まあ、わしの送迎もしてもらうからこれくらいの方がカッコつくやろ!まあ、ボディーの溶接あと隠すためのラメ入りのピンクのカラーは「ご愛敬」ってな!まあ、蛍ちゃんには似合うと思うで!遠慮せんと受け取ったってや。蛍ちゃんも「速く」て「でかい」車好きやろ!」と人懐っこい顔で言われると断る理由もなかった。
(あー、この車で黒瀬社長といろんな温泉行ったなー!どこ行っても目立ちすぎることを除けば、ほんま最高の車やなぁ…。)と愛おしくハンドルを撫でた瞬間、「ガン、ガガガガガ、バキッ!」という音が運転席側の側面で響き、左斜め前に自転車と男の子が倒れた。
「おい、何処に目をつけてチャリ走らせとんねん!きっちり片付けてもらで!」
凄んで蛍が歩道に降りると、スマホを左手に握ったまま、門真工科高校柔道部と文字の入った大きなスポーツバッグを背負った背の高い男の子が自転車と一緒に倒れていた。
「ちょっと、お兄ちゃん、大丈夫か?頭打ってへんか?」
ふと、怒りを忘れて倒れていた男の子に肩に手を差し伸べた。
「すみません、ちょっとスマホに気をとられてしまって…。」
振り返った男の子は予想してなかった、色白のイケメンだった。バッグにある「柔道部」の文字から、「ごつい男」を想像していたが、真っ黒なナチュラルヘアーのツーブロックに鼻筋が通り、切れ長の二重にきりっとした眉…。(わっ、私の「どストライク」やっ!これは逃したらあかんよな!)蛍は、心の中で微笑んだ。
大阪府に二か所ある免許試験センターのうちの一つ、門真運転試験場の最寄り駅となる京阪電車の古川橋駅の南側ロータリーに派手なメタリックピンクのベンツが停まっていた。
メルセデスベンツSクラスロングのW222型をベースにホイールベースを200ミリ伸ばし、後部座席の快適性に特化した最高級モデルであるメルセデスのサブブランド「マイバッハ」のS650。2019年に発表された2代目のモデルで、初代マイバッハの6000万円台の車両価格と比較すると半額以下になったとはいえ、新車価格で2930万円の限定モデルは、高級車マニアには憧れの的の一台である。
細身で大柄な体にスリムなブラックのブランドものスーツに大きな襟の真っ赤なシャツにややきつめのメイクを施し、大きなサングラスをかけた佐久間蛍(さくまけい)は、左ハンドルの運転席に座り、天井の電動ルーフを開き、青い空を見上げていた。
(あー、明日の夜は、社長とか…。きっとええ食事用意してくれてるんやろなぁ。美味しいもん食べておいしいお酒飲んだら、一緒に温泉か…・はぁ、仕事と思って頑張らなしゃあぁいなぁ…。)とため息をついた。
身長168センチで体重は49キロ。スリーサイズは78、58、83。よく言えばスレンダーな「モデル体型」、悪く言えば、男を引き付ける魅力に欠けた、前後の凹凸ボリュームに掛けた「ガリペタ体形」…。
顔は標準以上の「かわいこちゃん」ではあるが、周りの男からは「AK●」に居そう!」と呼ばれる都度、「はいはい、特別美人でもなければめちゃくちゃかわいいわけでもないってことやな!」とひねくれて受け取ってしまう29歳…。
最後に彼氏がいたのは、26歳の時。「豊胸手術を考えてみいへんか?」と言われたのをきっかけに暴力沙汰の大喧嘩となり、その後3年間、特定の彼氏はいない。
前彼と別れた直後に、勤め先の事業縮小に伴う、リストラに逢い、仕方なく、場繋ぎにと時給1500円でスナックでアルバイトしているときに、今の社長兼愛人の黒瀬叶(くろせかのう)に知り合ったのだった。30歳年上の黒瀬は、彼氏というよりは、父親のような感覚で、優しく蛍に接してくれていた。
黒瀬は、門真を本社として、大阪府内で5か所の事務所を構える金融業者の代表だった。5つ下の妻との愛は冷めており、自身も糖尿病からくる「ED」を患っており、「性的不能者」を公言していた。
何度か、店外で食事に誘われ、ある日、泊りの温泉旅行に誘われた。店外デートの度に高級な食事と高額の小遣いをくれる黒瀬に対し、「少しのお返し」のつもりで「OK」の返事をして、一緒に部屋付属する露天風呂に入った。黒瀬は、20代の蛍の身体を大変喜んだが、下半身は起き上がることはなかった。それ以来、月に1度か2度のペッティングの約束で黒瀬の会社に主に運転手役の庶務係と愛人役ということで、月50万の手当をもらっている。
(まぁ、私を縛るでもなく、ペッティングもさらっとしたものやし、黒瀬社長のキャラは嫌いやないからこれはこれでええか…)と思うようになり、早3年…。今の、愛車「S650」は新車で買えば2930万円だが、黒瀬の知り合いの自動車ブローカーから、「この「マイバッハ」、名義変更できへん金融物やねん。実は「事故車起こし」のニコイチやねんけど、うちの修理代未払で「幣の中」入ってしもて15年は出てけえへんから、なんぼかで引き取ってくれへんか?」と言われ、黒瀬が「蛍の日頃の足に」と350万で引き取ったのだった。
「黒瀬社長、私、国産車で十分ですよ!ちょっと、私には贅沢すぎて…。」と遠慮したのだが、「350万やったら国産車より安いがな。まあ、わしの送迎もしてもらうからこれくらいの方がカッコつくやろ!まあ、ボディーの溶接あと隠すためのラメ入りのピンクのカラーは「ご愛敬」ってな!まあ、蛍ちゃんには似合うと思うで!遠慮せんと受け取ったってや。蛍ちゃんも「速く」て「でかい」車好きやろ!」と人懐っこい顔で言われると断る理由もなかった。
(あー、この車で黒瀬社長といろんな温泉行ったなー!どこ行っても目立ちすぎることを除けば、ほんま最高の車やなぁ…。)と愛おしくハンドルを撫でた瞬間、「ガン、ガガガガガ、バキッ!」という音が運転席側の側面で響き、左斜め前に自転車と男の子が倒れた。
「おい、何処に目をつけてチャリ走らせとんねん!きっちり片付けてもらで!」
凄んで蛍が歩道に降りると、スマホを左手に握ったまま、門真工科高校柔道部と文字の入った大きなスポーツバッグを背負った背の高い男の子が自転車と一緒に倒れていた。
「ちょっと、お兄ちゃん、大丈夫か?頭打ってへんか?」
ふと、怒りを忘れて倒れていた男の子に肩に手を差し伸べた。
「すみません、ちょっとスマホに気をとられてしまって…。」
振り返った男の子は予想してなかった、色白のイケメンだった。バッグにある「柔道部」の文字から、「ごつい男」を想像していたが、真っ黒なナチュラルヘアーのツーブロックに鼻筋が通り、切れ長の二重にきりっとした眉…。(わっ、私の「どストライク」やっ!これは逃したらあかんよな!)蛍は、心の中で微笑んだ。
11
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる