ガチ恋オタクの厄介ちゃん

阿良々木与太

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失恋

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 土日にあった出来事をぽつぽつと話す。2人は黙って最後まで話を聞いてくれた。懺悔室で話をしているような気分だった。

 話し終えると、気まずい沈黙が訪れる。2人が何か言ってくれないと、自分のやったことを茶化してしまいそうだった。


「……そうなんだ」


 絶対に怒ると思っていた紬は、そうつぶやくと、後は何も言わなかった。呆気にとられる私を、茉優がぎゅっと抱きしめる。


「そっかそっか。渚ちゃん、失恋しちゃったんだねえ」


「失恋……」


 あんな行動をした私の、こんな気持ちを失恋と呼んでもいいのだろうか。でも茉優が失恋と言った瞬間に、気持ちがストンと落ち着いた気がする。あの夜、らろあと彼女を見たときからずっとあった感情に名前が付いたみたいだった。


「ま、やったことはよくないけどね」


 紬は呆れたように笑いながらそう言った。うん、と頷くと、1粒だけ涙がこぼれた。


 帰りの電車で、厄介ちゃんのアカウントもるるかのアカウントも消した。らろあにはもう1度謝りたかったけれど、きっともう関わらない方がいい。

 彼の配信をもう2度と見ない。それが私に唯一出来る謝罪の形だ。

 けれど、今でも時折、彼の夢を見る。夢の中のらろあは、私の隣で笑っていた。
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