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身バレ
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それからしばらくは、虚ろな目でらろあの配信を見ていた。頭では、あんな風に遊んでもらえたのが奇跡で、こうやって配信を見ているだけなのが当たり前だと考えながら、手は厄介ちゃんのアカウントで彼への愚痴をつぶやいている。それでも配信を見る習慣はやめられずに、厄介ちゃんのツイートとは正反対のことをコメントで打っていた。
思考と行動がぐちゃぐちゃでも、今まで通りらろあの良きリスナーでいれる。人間とは器用なものだ。
ベッドに横たわり、らろあの言葉をぼうっと聞く。通話に誘われなくなってから10日ほどが経過していた。
「職場の近くにおいしいラーメン屋があってさあ、結構他の県でも展開してるっぽいから、もしかしたらみんなの家の近くにもあるかもしんないけど」
そんな風に話す彼の口から出た店名を、何気なく検索窓に打ち込む。全国に数店舗あるその店は、確かに私の家の近くにもあった。
店舗一覧を眺めていると、広島のモール内にあると書かれている。URLをタップすると、そのモールのホームページへと飛んだ。らろあがよく行くというのはこの店なのだろう。
もしかして、と画面をスクロールする。モール内には1つだけ、ゲームセンターが入っていた。モール内にゲームセンターがあるのなんて珍しくないけれど、でも、ここはもしかしたら彼の働いている場所なのかもしれない。
きっと彼は、自分の職場がバレた可能性があるなんて思っていない。いや、バレたところで来ないとでも思っているのだろうか。ふとそう考えてから、首を振った。さすがに職場に行くなんて迷惑すぎる。いくら自分が厄介オタクでも、そこまでのことはできない。
モールの周辺を地図で見たけれど、近くにゲームセンターらしきものはなかった。やっぱりらろあが働いているのはここなのだろう。行かない、行かないけれど、彼のプライベートがわかったのがなんだか嬉しい。
縁もゆかりもない広島の街が、なんだか愛おしく思えた。最近はただ落ち込んでばかりだったから、こんな犯罪じみた方法でも彼のことがわかって気分がいい。
それと同時に、こんな簡単に個人情報がわかるのが恐ろしかった。らろあのアーカイブで消えているものはほとんどないから、過去の配信を見れば彼の家までわかってしまう可能性だってある。
ほとんどの配信を見ている私は、彼が家の周りにある店や珍しいものの話を何度かしているのを知っている。きっと、やろうと思えばできてしまうだろう。そう考えてぞっとする。
この配信には私以外にわざわざそういうことをする人間がいなさそうなのが救いだった。自戒もこめて、『身バレ気を付けてね』とコメントをする。それを見たらろあは笑っていた。
「しないでしょー、したとしても誰もわざわざ広島まで来ないでしょ? 来たらなんなら歓迎しちゃうかもしれん」
そう言ってけらけらと笑うらろあに、そんなこと言うと本当に行っちゃうよ、と心の中で返す。『そうだね』とコメントを打ちながら、彼の働くモールのホームページをブックマークに入れた。
思考と行動がぐちゃぐちゃでも、今まで通りらろあの良きリスナーでいれる。人間とは器用なものだ。
ベッドに横たわり、らろあの言葉をぼうっと聞く。通話に誘われなくなってから10日ほどが経過していた。
「職場の近くにおいしいラーメン屋があってさあ、結構他の県でも展開してるっぽいから、もしかしたらみんなの家の近くにもあるかもしんないけど」
そんな風に話す彼の口から出た店名を、何気なく検索窓に打ち込む。全国に数店舗あるその店は、確かに私の家の近くにもあった。
店舗一覧を眺めていると、広島のモール内にあると書かれている。URLをタップすると、そのモールのホームページへと飛んだ。らろあがよく行くというのはこの店なのだろう。
もしかして、と画面をスクロールする。モール内には1つだけ、ゲームセンターが入っていた。モール内にゲームセンターがあるのなんて珍しくないけれど、でも、ここはもしかしたら彼の働いている場所なのかもしれない。
きっと彼は、自分の職場がバレた可能性があるなんて思っていない。いや、バレたところで来ないとでも思っているのだろうか。ふとそう考えてから、首を振った。さすがに職場に行くなんて迷惑すぎる。いくら自分が厄介オタクでも、そこまでのことはできない。
モールの周辺を地図で見たけれど、近くにゲームセンターらしきものはなかった。やっぱりらろあが働いているのはここなのだろう。行かない、行かないけれど、彼のプライベートがわかったのがなんだか嬉しい。
縁もゆかりもない広島の街が、なんだか愛おしく思えた。最近はただ落ち込んでばかりだったから、こんな犯罪じみた方法でも彼のことがわかって気分がいい。
それと同時に、こんな簡単に個人情報がわかるのが恐ろしかった。らろあのアーカイブで消えているものはほとんどないから、過去の配信を見れば彼の家までわかってしまう可能性だってある。
ほとんどの配信を見ている私は、彼が家の周りにある店や珍しいものの話を何度かしているのを知っている。きっと、やろうと思えばできてしまうだろう。そう考えてぞっとする。
この配信には私以外にわざわざそういうことをする人間がいなさそうなのが救いだった。自戒もこめて、『身バレ気を付けてね』とコメントをする。それを見たらろあは笑っていた。
「しないでしょー、したとしても誰もわざわざ広島まで来ないでしょ? 来たらなんなら歓迎しちゃうかもしれん」
そう言ってけらけらと笑うらろあに、そんなこと言うと本当に行っちゃうよ、と心の中で返す。『そうだね』とコメントを打ちながら、彼の働くモールのホームページをブックマークに入れた。
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