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何もない日
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いつもよりも眠れた水曜日。大学が終わっても、体の疲れはひどくなかった。木曜日はらろあの休みだし、今日は少し長めに付き合ってもいいなと思っていた矢先、らろあからのツイート通知が入った。
『今日は配信お休みです!』その一言だけが通知欄に表示されている。彼が配信を休むのは珍しかった。時折仕事の疲れで休むこともあるが、そういう時は疲れたので、とか仕事が大変だったので、なんかのツイートがある。
何か用事でもあるのだろうか、と部屋に入りながら首を傾げた。こんなことなら帰りに寄り道でもしてくればよかった。夜までの数時間が丸々空いている。
どうせ課題でもしていたらすぐに過ぎるのだろうけれど、なんだか落ち着かない。こんなとき紬や茉優だったら上手に時間が使えるのだろうと思うと、自分の趣味の無さに悲しくなった。
私には、らろあ以外何もない。紬みたいにバイトを頑張ることも、茉優みたいに大学生らしい遊びをするわけでもない。せめてサークルに入っていれば何か違ったのかもしれないけれど、面倒くさいと思って入らずにいたら、そのうち入るタイミングを逃した。
らろあがきっかけで始めたゲームも趣味とは言い難い。アニメや漫画も、高校のころと比べて積極的に見なくなってしまった。空っぽだな、と改めて思う。
せめてもと思って手に取った小説は読み始めて数分で眠くなってしまい、自分が人間としてダメになっているような気がした。ただひたすらに虚しい。
はあ、とため息をついて机に向かう。せめて明日以降の自分が楽できるようにといつもより多く課題をこなした。
配信はなくてもゲームには誘われるかもしれない、と思ってスマホを気にしながら課題をしていたが、結局スマホが鳴ることはなかった。そわそわと気にして、何も来ていないのに何度も画面を開いたが、SNSも通話アプリのメッセージも何も更新されない。
時刻は20時を過ぎている。彼の仕事は終わっている時間のはずだった。残業しているのか、仕事終わりに飲み会でも行っているのか、何もわからないのがなんだか不安だった。彼女でもないくせに、謎の心配をしている自分に笑ってしまう。
らろあがインターネットを訪れてくれないと、彼が何をしているのか全く分からないのがただただ悲しい。自分が彼にとって何でもないことを、ありありと見せつけられているようだった。
風呂上り、髪を乾かしながら彼のSNSのアカウントを眺める。リプライもいいねもあのツイート以降何も増えていない。時刻は23時になろうとしている。いつもなら配信を見ている頃なのに、と毎日見ているそれが恋しくなった。
24時を回り、日付が変わってもどのアカウントも更新されることはない。布団に潜りながら、タイムラインをひたすらに更新する。通話アプリで今何してるの?と送りかけて、さすがに鬱陶しいかと思ってやめた。
もしかしたら連絡があるんじゃないか、ツイートが何かされるんじゃないか、とそわそわして眠れない。眠ろうと目を瞑るものの、すぐに気になってスマホを触ってしまう。
今日は配信も彼とやるゲームもなかったのに、普段よりも遅い時間まで起きている。気づけばもう4時になるところだった。さすがにらろあも寝ているだろう。今日は早めに寝たかったのかもしれない。私が彼のゲームに付き合わされていると思っていたけれど、彼だって配信がある分私より長い時間ゲームをして疲れているんだ。
ゲームで疲れるとか、子供みたい。そんな悪態をついて布団を被りなおす。スマホには背を向けたけれど、通知音を切ることはできなかった。彼からの連絡を見逃したら、と思うと怖かった。
ピコン、と通知音で目が覚める。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。あのまま眠ったらしい。パッと振り向いてスマホを開く。画面にはらろあからのツイートの通知が表示されていた。
慌ててSNSを開き、文面を確認する。けれど、目が滑ってなかなか読めなかった。それは、私が寝起きだからではなく、そこに書いてある内容を信じたくなかったから。
『花音ちゃんにゲーム付き合ってもらってた!笑 楽しかった~、今から寝る~』と、何度読んでもツイートにはそう書いてある。
「は?」
寝起きで掠れた、低い地獄のような声が思わず口から転げ落ちた。
『今日は配信お休みです!』その一言だけが通知欄に表示されている。彼が配信を休むのは珍しかった。時折仕事の疲れで休むこともあるが、そういう時は疲れたので、とか仕事が大変だったので、なんかのツイートがある。
何か用事でもあるのだろうか、と部屋に入りながら首を傾げた。こんなことなら帰りに寄り道でもしてくればよかった。夜までの数時間が丸々空いている。
どうせ課題でもしていたらすぐに過ぎるのだろうけれど、なんだか落ち着かない。こんなとき紬や茉優だったら上手に時間が使えるのだろうと思うと、自分の趣味の無さに悲しくなった。
私には、らろあ以外何もない。紬みたいにバイトを頑張ることも、茉優みたいに大学生らしい遊びをするわけでもない。せめてサークルに入っていれば何か違ったのかもしれないけれど、面倒くさいと思って入らずにいたら、そのうち入るタイミングを逃した。
らろあがきっかけで始めたゲームも趣味とは言い難い。アニメや漫画も、高校のころと比べて積極的に見なくなってしまった。空っぽだな、と改めて思う。
せめてもと思って手に取った小説は読み始めて数分で眠くなってしまい、自分が人間としてダメになっているような気がした。ただひたすらに虚しい。
はあ、とため息をついて机に向かう。せめて明日以降の自分が楽できるようにといつもより多く課題をこなした。
配信はなくてもゲームには誘われるかもしれない、と思ってスマホを気にしながら課題をしていたが、結局スマホが鳴ることはなかった。そわそわと気にして、何も来ていないのに何度も画面を開いたが、SNSも通話アプリのメッセージも何も更新されない。
時刻は20時を過ぎている。彼の仕事は終わっている時間のはずだった。残業しているのか、仕事終わりに飲み会でも行っているのか、何もわからないのがなんだか不安だった。彼女でもないくせに、謎の心配をしている自分に笑ってしまう。
らろあがインターネットを訪れてくれないと、彼が何をしているのか全く分からないのがただただ悲しい。自分が彼にとって何でもないことを、ありありと見せつけられているようだった。
風呂上り、髪を乾かしながら彼のSNSのアカウントを眺める。リプライもいいねもあのツイート以降何も増えていない。時刻は23時になろうとしている。いつもなら配信を見ている頃なのに、と毎日見ているそれが恋しくなった。
24時を回り、日付が変わってもどのアカウントも更新されることはない。布団に潜りながら、タイムラインをひたすらに更新する。通話アプリで今何してるの?と送りかけて、さすがに鬱陶しいかと思ってやめた。
もしかしたら連絡があるんじゃないか、ツイートが何かされるんじゃないか、とそわそわして眠れない。眠ろうと目を瞑るものの、すぐに気になってスマホを触ってしまう。
今日は配信も彼とやるゲームもなかったのに、普段よりも遅い時間まで起きている。気づけばもう4時になるところだった。さすがにらろあも寝ているだろう。今日は早めに寝たかったのかもしれない。私が彼のゲームに付き合わされていると思っていたけれど、彼だって配信がある分私より長い時間ゲームをして疲れているんだ。
ゲームで疲れるとか、子供みたい。そんな悪態をついて布団を被りなおす。スマホには背を向けたけれど、通知音を切ることはできなかった。彼からの連絡を見逃したら、と思うと怖かった。
ピコン、と通知音で目が覚める。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。あのまま眠ったらしい。パッと振り向いてスマホを開く。画面にはらろあからのツイートの通知が表示されていた。
慌ててSNSを開き、文面を確認する。けれど、目が滑ってなかなか読めなかった。それは、私が寝起きだからではなく、そこに書いてある内容を信じたくなかったから。
『花音ちゃんにゲーム付き合ってもらってた!笑 楽しかった~、今から寝る~』と、何度読んでもツイートにはそう書いてある。
「は?」
寝起きで掠れた、低い地獄のような声が思わず口から転げ落ちた。
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