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プロローグ
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『あれ、もう朝じゃん』
イヤホン越しに、眠たそうな彼の声が聞こえる。時刻は午前6時。私は1時間前からカーテンの向こうから差す明かりを感じていたけれど、それを口には出さずにそうだねと返す。
「そろそろ寝る?」
コントローラーを机の端に置き、ぐっと背伸びをする。彼はのんびりとあくびをしてから、小さく唸った。
『そうな、さすがに寝ようかな。明日仕事休みでよかったわマジで』
私は大学なんだけど、という言葉も飲み込む。今から寝ても1限には間に合わないだろうなという気持ちが心のどこかにあった。
『あ、るるちゃんは大学か。頑張ってね』
こんな時間まで彼のゲームに付き合わされたという感情は、その一言でどこかに飛んで行ってしまった。彼が頑張れと言うのなら、明日の1限からでも大学に行こう。いや、さすがにそこまでは頑張れない。せめて2限は行くから許して、と自分の中の誰かに許しを請う。
「ありがとー、頑張る」
『はーい、そんじゃ切るよ。おやすみ』
私がおやすみと言うや否や彼はあっさり通話を切ってしまった。配信が終わってから3時間、配信を見ている時間からしたらトータル7時間も彼に付き合ったんだから寝るまで通話くらいしてくれてもいいのに。
でもそれを私からは望まない。だってこんなことをしていながらも彼は私の恋人でもなんでもないから。私は彼の都合にただ振り回される、だって私は彼が好きだから。
彼は私が彼を好きなことを知っている。けれど恋人同士じゃない。現実だったらいびつな関係すぎて他人から心配されるだろう。けれど彼は配信者で、私はリスナー。私は配信者から配信後も構ってもらえる幸福なリスナーなのだ。
ベッドに倒れ込む。慣れないゲームと、パソコン画面の見過ぎで眼球が痛い。枕に顔をうずめると、痛みがじわりと目の奥に広がった。
悪あがきするように8時にアラームをかけるけれど、きっと起きられないだろう。1限のレジュメは友達が取っておいてくれるかもしれない。いや、取っておいてとメッセージを送っておこうかな。
そう考えたあたりで体力が切れて、私は電気も消さないまま眠りに落ちた。こういう生活が、もう2か月ほど続いている。いやこうなるきっかけを作ったのは、半年前の自分だ。
推しに遊んでもらえて幸せ。それはわかってる。嘘、こんなにずっと推しの声を聞いていてもまだ不安だ。今だって本当は私との通話を切り上げて他の女と寝落ち通話でもしているのかもしれない。
恋人でもないのに推しの行動を把握していないと不安だった。私が一番じゃなかったらどうしよう。こんな生活で体力がぎりぎりなのは自分なのに、それでもまだすがっている。どこで歯車が壊れたのだったか、もう思い出せなかった。
イヤホン越しに、眠たそうな彼の声が聞こえる。時刻は午前6時。私は1時間前からカーテンの向こうから差す明かりを感じていたけれど、それを口には出さずにそうだねと返す。
「そろそろ寝る?」
コントローラーを机の端に置き、ぐっと背伸びをする。彼はのんびりとあくびをしてから、小さく唸った。
『そうな、さすがに寝ようかな。明日仕事休みでよかったわマジで』
私は大学なんだけど、という言葉も飲み込む。今から寝ても1限には間に合わないだろうなという気持ちが心のどこかにあった。
『あ、るるちゃんは大学か。頑張ってね』
こんな時間まで彼のゲームに付き合わされたという感情は、その一言でどこかに飛んで行ってしまった。彼が頑張れと言うのなら、明日の1限からでも大学に行こう。いや、さすがにそこまでは頑張れない。せめて2限は行くから許して、と自分の中の誰かに許しを請う。
「ありがとー、頑張る」
『はーい、そんじゃ切るよ。おやすみ』
私がおやすみと言うや否や彼はあっさり通話を切ってしまった。配信が終わってから3時間、配信を見ている時間からしたらトータル7時間も彼に付き合ったんだから寝るまで通話くらいしてくれてもいいのに。
でもそれを私からは望まない。だってこんなことをしていながらも彼は私の恋人でもなんでもないから。私は彼の都合にただ振り回される、だって私は彼が好きだから。
彼は私が彼を好きなことを知っている。けれど恋人同士じゃない。現実だったらいびつな関係すぎて他人から心配されるだろう。けれど彼は配信者で、私はリスナー。私は配信者から配信後も構ってもらえる幸福なリスナーなのだ。
ベッドに倒れ込む。慣れないゲームと、パソコン画面の見過ぎで眼球が痛い。枕に顔をうずめると、痛みがじわりと目の奥に広がった。
悪あがきするように8時にアラームをかけるけれど、きっと起きられないだろう。1限のレジュメは友達が取っておいてくれるかもしれない。いや、取っておいてとメッセージを送っておこうかな。
そう考えたあたりで体力が切れて、私は電気も消さないまま眠りに落ちた。こういう生活が、もう2か月ほど続いている。いやこうなるきっかけを作ったのは、半年前の自分だ。
推しに遊んでもらえて幸せ。それはわかってる。嘘、こんなにずっと推しの声を聞いていてもまだ不安だ。今だって本当は私との通話を切り上げて他の女と寝落ち通話でもしているのかもしれない。
恋人でもないのに推しの行動を把握していないと不安だった。私が一番じゃなかったらどうしよう。こんな生活で体力がぎりぎりなのは自分なのに、それでもまだすがっている。どこで歯車が壊れたのだったか、もう思い出せなかった。
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