2 / 17
1巻
1-2
しおりを挟む
ってか、仕事の仕方より見た目重視って、基準が明らかにおかしいですよね⁉
「まぁ、そういうわけで、今は配達員=羊族のイメージが強いから、この帽子を被って行けば、何も言わなくても一目で用件が伝わるはずだ」
王様はそう言うと、一人脳内ツッコミをしていた私の肩に鞄を掛け、羊の角付き帽子まで被せてきた。
「ちょっと、待ってください‼ 私、まだやるとは言ってませんから‼」
慌てて文句を言うと、王様はいい笑顔で親指を立てる。
「大丈夫だよ。転移の魔法で魔王城のすぐ傍に飛ばすから、君はちょこっと歩いて魔王城に行って、用件を伝えて魔王に会って手紙を渡して、返事をもらって魔王に転移の魔法でこちらまで飛ばしてもらえばいいだけだから」
え? 何? 帰りは魔王様に送ってもらう感じなの⁉ それって、向こうに行ったら最後、魔王様に会うまで帰れないって事⁉
「いや、魔王城に行くってだけでかなりハードル高めですよね⁉ しかも、魔王様って普通ラスボスで、そんなに気軽に会える人じゃないですよね⁉ ってか、転移の魔法があるなら、手紙だけを魔王様に送ればいいですよね⁉」
「大丈夫、大丈夫。異世界人なら丁重にもてなしてもらえるはずだから。異世界人に手を出すと、この世界の誰であれ天罰が下るからね。それは魔族も魔王も例外じゃないから。あと、転移の魔法で送れるのは魔王城の外までで、着地点も一キロメートル前後の誤差があるから、魔王の手に確実に渡るかわからないんだよ。もし万が一悪意のある第三者が拾って、手紙の内容を読んで勝手に破棄したり、改ざんして魔王に渡したりしたら、うちは魔王に滅ぼされかねないからね。君に直接手渡してもらうしか、方法がないんだよ」
王様が満面の笑みで立ち上がり、テーブル越しに私の両肩にポンッと手を置く。
「この国の未来は、君のその両肩に掛かっている」
人の肩に勝手に重いものを載せないでください‼
「荷が重すぎます‼」
「大丈夫、大丈夫。そのバッグはマジックバッグになってるから、そんなに重くはないだろう? あとは魔王にその鞄の中にある手紙などを届けるだけの簡単なお仕事だよ。あ、そうそう。マジックバッグの中に魔王への詫びの品もいっぱい入ってるから、ついでに渡してきてくれ」
鞄は王様の言う通り重くはないけど、そういう意味じゃない‼
「一国の未来が懸かってる簡単なお仕事って、なんか矛盾してませんか⁉ ってか、誰も物理的な荷の重さについては言及してませんから‼」
私の全力のツッコミを、王様は「ハッハッハッ」と笑って受け流す。
どうしよう。急な展開すぎてついていけない。
そんな私を置いて、話は勝手にどんどん進んでいる気がする。
というか、私の意思を無視して、強引に押し進められている気がする‼
「それだけ元気に返答が出来れば大丈夫そうだね」
「さっきから、無駄に大丈夫大丈夫って言ってますけど、全然大丈夫じゃありませんから‼」
もしかしたら王様的には本当に大丈夫なのかもしれない。
だけど、いきなり異世界に引っ張り込まれて、王様の言葉しか頼るものがない上に、それすら信じていいのかわからない現状は不安しかない。
「あ、そうそう。報酬は期待してくれていいからね。異世界人への報酬は金貨で支払うから、家に帰ってから何処かで換金してもらう事にはなるけど。金属としての価値は異世界と一緒だから安心してね」
「ちょっと、私まだやるって言ってないんですけど⁉」
引き受けてないのに、いきなり報酬の話をされても困る。
もしかしたら、凄く割のいいバイトなのかもしれないけれど、それはあくまで命あってのものだ。私は危険を冒してまでお金を稼ぎたくない。
……って、思ってるのに、何故か足元が光ってるんですけど⁉
魔法陣っぽいものが浮かび上がってるんですけど⁉
周囲を見回せば、王様の後ろに控えていた人の中の一人……私をこの世界に召喚した魔術師さんが、詠唱っぽいものをブツブツ小さな声で唱えてる。
「え? えぇ⁉ ちょっと何やってるんですか⁉」
慌てて魔法陣っぽいものから出ようとすると、私の両肩に添えられている王様の手に力が籠った。
見た目はそんなにマッチョな感じじゃないくせに、意外に力のある王様。私が暴れてもびくともしない。
「大丈夫、大丈夫。君の世界で言うところの『案ずるより産むが易し』ってやつだよ。初めは不安いっぱいだと思うけど、一度行ってみれば『なぁんだ、こんなもんか』って感じになるからね。本当に危険はないから」
ニコニコと微笑みながら、私の逃亡を妨げる目の前の王様は、もはや悪徳業者にしか見えない。
キッと睨みつけてみても、「こればかりは一度やってみないと、納得してもらえないと思うから。悪いね?」と苦笑を浮かべるのみで、手を離してくれる気配はない。
そうこうしている間に、足元の魔法陣らしきものの放つ光が、一気に強くなった。
「それじゃあ、頼んだよ」
「ちょっ! 酷いっ‼」
目の前が光で真っ白に染まる。眩しくて目を瞑った瞬間、肩にあった王様の手の感触が消え、浮遊感に襲われた。
抗議の声虚しく、私は魔王様の許へと送られたのだった。
2 初仕事です(拒否権無し)
浮遊感が消えたと思った瞬間、私の体は重力に従い落下した。その感覚に驚いて身を竦ませながら叫び声を上げる。
「ヒャッ‼」
「ワプッ‼」
ポヨンッ……
そんな私を待っていたのは、ふんわりとした柔らかいクッション……ではなく、何やらプニプニとした感触だった。例えるなら、弾力のある水饅頭のような。
……そして私の気のせいでなければ、その水饅頭もどきは、今声を発していたような気がする。
「…………」
「…………」
ポインッポインッポイン……
私の体による衝撃の余韻で、震えている水饅頭もどき。
乗っている私も一緒に、緩やかに上下に動く。
……どうしよう。状況確認するのが怖くて目が開けられない。
遠くのほうでは、キィキィと甲高い声で鳥的な何かが鳴いているのが聞こえる。
肌に纏わりつくような空気は、さっきまでいた王宮のものとは全く異なっていて、ここが屋外なのは目を開けなくてもわかる。
ってか、さっきの話の流れからして、ここって魔国とかいう場所だよね?
そして私の世界でも世にも恐ろしいと有名な魔王様が、近くにいるという……。まあ、この世界の魔王様と同じなのかはわからないけど。
ヤバい、私は結構肝が据わってるほうだと思ってたけど、ちょっと体が震える。
「……ダイジョブ?」
何処からともなく小さな子供のような高い声が響いて、更にフルフルとしてしまう。
……あ、違う。これは水饅頭もどきが震えているんだ。
「イセカイノヒト……ケガ……ナイ?」
拙い言葉で訊ねられるたびに、呼応するように震える水饅頭。
うん。この声、確実に水饅頭が発している。
「フルル……シンパイ……トリコンデ……ハコブ?」
う~ん、フルルってのはもしかして、名前だろうか?
……って、ちょっと待って! 今、この子、もしかして『取り込む』って言った⁉
「モグモグスル……?」
「いやぁぁぁ! ちょっと待って‼ モグモグはしないでぇぇ‼」
顔から血の気が引いて、慌てて叫んだ。そりゃもう必死で。
せめてもの抵抗として瞑っていた目も、咄嗟に開いてしまった。
目に映るのは、昼間のはずなのに薄暗く、木々も大地も何処となく黒みを帯びている怪しい森。
でも、そんな事を気にしている余裕もなく、水饅頭の上からワタワタと下りた。焦りすぎて、転びそうになってしまう。
「アブナイヨ?」
すると水饅頭は「……モグモグシナイ……モグモグシナイ……」と呟きながら、触手のように体の一部を伸ばして、私を支えてくれた。その時、やっとその正体をはっきりと見る。
うん、想像していた通り水饅頭みたいな姿だけど、中に餡こは入っていない。
……ってか、この直径一メートル半くらいの大きさの水饅頭は、ゲームに出てくるとても有名な魔物によく似ている。
「……スライム?」
思わずそう呟くと、水饅頭は何処か恥ずかしげにフルフルと震えた。
「フルル……スライム。ユーメイ?」
顔は何処にあるかわからないけれど、なんとなく私のほうを向いている気がする。
あ、よく見たら、凄くわかり難いけど小さなつぶらな目が付いてた。そうなると、やっぱりこっちを見ている。
サイズが本物の水饅頭程度だったら可愛く思えたんだろうけど、如何せん大きすぎるので怖い。
本当に私一人くらいなら、余裕でその体内に取り込めるだろう。
どうしていいかわからず、固まってしまう。すると、私の背後でガサッと音がした。
それと同時に獣の唸り声と、低く威圧的な男性の声が聞こえる。
「グルゥゥゥ。おい、今こっちに侵入者の反応があったぞ‼」
振り向きたくないのに、振り向かずにいるのもまた怖くて、恐る恐る首を動かした。
「なんだぁぁ? 異世界人かぁ?」
……粗野な口調がよくお似合いですね、狼男さん。あぁ、ここは敢えてライカンスロープさんと呼んだほうがよろしいでしょうか?
戦闘関係のお仕事をされているのか帯剣されてるんで、なんとなく狼男というよりは片仮名で呼びたくなるんですよね。勝手な私のイメージですけど。
って、そんな事はどうでもいい。
私の前に現れたのは、二足歩行をしながら言葉を話す、大きな狼だった。
凄まれるたびに剥かれる牙に、体がビクリッと反応するのを止められない。
ヤバい。スライムのフルルさんより、よっぽどこっちのほうが怖い。
どうしよう。私、泣きそうだ。というか、もう涙出てきてる。
「……ガルゥ……イセカイノヒト……ナカセタ……」
フルルさんがライカンスロープのガルゥさん? に非難の視線を向けた。
「おい、フルル! 人聞きの悪い事言うんじゃねぇ‼ おいぃぃ、嬢ちゃん、泣くんじゃねぇ‼ グルゥゥゥ」
「ヒッ!」
ガルゥさんに顔を近づけられ、牙を剥かれ、つい喉の奥を引き攣らせる。
本能的に恐怖が背筋を這い上がり、ボロボロと涙が零れ落ちた。
ど、どうしよう。泣いたら怒られるのに、止まらない。
ガルゥさんは、困ったように頭を掻く。
「あ~、どうすっかなぁ。異世界人の郵便配達が魔界まで来るぐれぇだぁぁ。きっと魔王様に用事だろぉぉ? 首の後ろ噛んで魔王様の所へでも連れて行くかぁぁ?」
く、首の後ろ噛まれるの⁉
「ヒィィ‼ モグモグもガブッも勘弁してください‼」
泣きながら何度も土下座して、必死に懇願する。
けれど、何がいけないのかわからないとでもいうように、不思議そうにしているガルゥさんとフルルさん。
そうこうしているうちに、色とりどりのスライムや、動く骸骨、角の生えた巨大熊、如何にも毒を持ってそうな巨大トカゲに巨大カエルといった、様々な魔族が私の周りに集まり始めた。
私はもはや恐慌状態。異世界転移しているだけでもキャパオーバー気味なのに、こんなところにいきなり放り込むなんて、貴方は鬼ですか、王様‼
心の中でいくら罵倒しても、私の声は王様には届かないし、状況は変わらない。
私はフルルさんに抱きついて、その感触に少しでも癒しを求めつつ、泣きながらプルプルと震える事しか出来ない。
フルルさん、初めは怖いなんて思ってごめんなさい。他の如何にも攻撃してきそうな見た目の人達に比べたら、大きいだけで無害そうな君達スライムは全然ましでした。
今もフルルさんは触手で私の頭を撫でてくれているしね。ただそれでもまだ、そのままモグモグされそうって思っている自分もいる。
いや、他の人達も見た目が怖いだけで、攻撃されているわけじゃないんだけどね?
でも、本能的な恐怖が消し去れないんだよ。
あぁ、もうお家帰りたい。
「なぁ、どうする? 完璧に怯えちまってるぜ?」
骸骨さんがガルゥさんに話しかける。
「あぁぁ? まぁ、俺らは人間には見慣れねぇ容姿してるかんなぁ。そうか! じゃあ、人間に近い容姿のやつ連れて来りゃいいじゃねぇか‼」
ガルゥさんが、名案を思いついたとばかりに声を明るくして走り出す。
ええ、そうしていただけると大変有難いです。少しでも人間に近い見た目の人が傍にいてくれれば、この状況にも少しは慣れられる気がするんで。
声も出せずにフルルさんにしがみついていた私は、少しだけホッとして体の力を抜いた。
暫くすると、ズシィィン……ズシィィン……と地響きのような大きな音が響いてくる。
って、一体何事⁉
思わず、フルルさんを形が変わる程抱きしめてしまった。腕の中から「ウプッ⁉」と小さな声がする。
でもとにかく怖かったので、心の中で「ごめんね」と呟きながらも、腕の力は緩めなかった。
「お~い、人間っぽいやつ連れて来たぜぇぇぇ」
地響きが止まると同時に、遠くのほうからガルゥさんの声が聞こえた。
「人間っぽいやつ」という言葉に一縷の希望を抱いて、フルルさんから顔を上げる。
……さっきまでの、人っぽくない人達しかいない。
骸骨さんが私の視線に気付いて、上を指差した。
……上?
嫌な予感を覚えつつ、視線を少しずつ上に向けていき……
「ヒキャァァァァ‼」
恥も外聞もなく叫んだ。
だけど仕方ないと思う。
人間っぽいやつと聞いて、誰がトロールを連れて来ると思うだろうか?
少なくとも、私は十メートル以上の巨体の魔族を『人間っぽい』とは認めない! 認めないんだからぁぁぁ‼
私の気持ちが伝わったのか、トロールさんはゆっくり口を開く。
「ほら見ろ、ガルゥ。やっぱり俺みたいなデカイやつじゃ駄目じゃねえか。異世界の嬢ちゃん、更に怯えちまっただろ?」
「ハァァァ⁉ こんなに見た目が人間っぽくても駄目なのかぁぁ⁉」
「多分、俺じゃあ人間には人間っぽくは見えねぇんだって」
トロールさんの言葉に、私はブンブン頷いた。
腕の中では相変わらず、フルルさんがフルフルしている。
「トロールのお前以上に人間っぽいやつなんているかぁぁぁぁあ?」
意気揚々とトロールさんを連れて来た、ガルゥさんが不満そうな声を上げる。
いや、色々いるよね⁉
トロールさんに比べたら、まだガルゥさんのほうが(サイズ的に)人間っぽい気がするよ⁉ え? 何? フォルム的な問題なの?
あぁ、もう。ここの『人間っぽい』の基準がよくわからない。
あまりの感覚のズレに、目の前が真っ暗になるような気がした。
私がフルルさんに癒しを求めつつ、軽く絶望しかけた時……女神が現れた。
「あんた達ぃぃぃぃぃぃ‼ 何、異世界のお客様怯えさせてんのよぉぉぉぉぉ‼」
ビュォォォォォという大きな風の音を立てながら、上空からこちらに一直線に降下してくるのは、メイド服の美女。彼女は身の丈程もある巨大なハンマーを持っている。
耳が少し尖っているけど、凄く人間っぽい美女‼
やっと見た目的に話しやすそうな魔族が登場して、私はフルルさんを抱きしめながら感動する。
そんな私の前で、彼女は巨大ハンマーを横に振って、トロールさんの頭を吹っ飛ばした。
そして、その反動を使って空中で一回転したあと、ガルゥさんの頭上へとハンマーを振り下ろす。
ズドォォォォォン……
トロールさんが倒れた音と、ガルゥさんがギリギリで避けたハンマーが地面に叩きつけられる音が、同時に響く。
砂ぼこりが立ち、私達の視界がクリアになるまでの間、そこには静寂が流れた。
やがて美女がハンマーを振り下ろした体勢から、ゆら~りと上体を起こす。
「ガルゥ、なぁに避けてくれちゃってんのぉ?」
「キャインッ! チュ、チュチュリナ、避けなきゃ死んじまうだろぅ⁉」
チュチュリナと呼ばれた美女に凄味のある笑みを向けられ、ガルゥさんは尻尾を足の間に入れて全身の毛を逆立てながら訴えた。
「大丈夫よ、多分。ほら、トーロンは平気そうだし?」
チュチュリナさんは満面の笑みを浮かべ、ハンマーで横殴りにしたトロール――トーロンさん? を指差す。
「ごめん、ごめん、チュチュリナ。異世界人の嬢ちゃんが怯えてるから人間ぽい見た目のやつのほうが話しやすいだろうって言われて連れて来られたんだけど、やっぱり俺じゃ駄目だったみたいだ」
さっき思いっきり吹っ飛ばされたはずのトーロンさんは軽く頭を振った後、まるで何事もなかったかのように立ち上がり、乱入してきたチュチュリナさんに謝った。
「ほら見ろ」と言わんばかりに腰に手をあてて、その豊満な胸を張るチュチュリナさんに、ガルゥさんがキャンキャン吠える。
「トーロンは頑丈だからだろぅ⁉ 俺は繊細なんだよ‼ チュチュリナのハンマーなんてまともに受けたら確実にお陀仏だってぇの‼」
……うん、吠えるっていうのが凄くぴったりくる。
そんな光景を暫く呆然と見た後、私はハッとしてチュチュリナさんに向かって走り出した。
「や、やっと会えた! 人間っぽい人‼ っていうか、人間っぽい魔族‼」
「……あら?」
勢いよく抱きついた私を、チュチュリナさんは難なく受け止めてくれる。巨大ハンマーを片手で振り回せる腕力を持っているだけある。
彼女はちょっと意外そうな表情はしているけれど、優しそうな笑みを浮かべてくれた。
問題なのは、その他大勢の魔族の人達。
ガルゥさんを筆頭に、口がある人は皆、口をあんぐりと開けている。ちなみに口がない人……フルルさん以外のスライムさん達は、全身をトゲトゲにして驚きを表現してた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ⁉ おいぃぃぃ、こいつの何処が人間っぽいって言うんだよぉぉ? こいつに比べたら、俺のほうがまだ人間っぽいだろうぅぅ?」
「異議あり!」とばかりに、ガルゥさんが私に詰め寄る。
私はチュチュリナさんに抱きついたまま、クルリッと彼女の後ろに隠れる。そしてひょこっと顔を出した。ちなみに、チュチュリナさんは私より頭一つ分くらい背が高く、隠れるのには丁度いいサイズだった。
「……見た目です、見た目! 耳がちょっと尖ってるだけで、凄く人間っぽい美女さんです‼」
私は文句を言うガルゥさんに言い返す。少しこの状況に慣れてきて、更にチュチュリナさんという人間っぽい上に強そうな仲間を得た事で、余裕が出てきた。
「お前ぇ、こいつがさっきした事見てなかったのかよぉぉ⁉ 見た目が多少人間っぽくっても、こいつの狂暴さは、魔族でも折り紙付きだ……ブフッ……」
ガルゥさんが吹っ飛んだ。……チュチュリナさんの手に握られたハンマーによって。
「フフ……尖っているのは耳だけじゃないわよぉ?」
自分が吹っ飛ばしたガルゥさんに一切見向きもせず、チュチュリナさんは笑顔で尖った歯を自慢げに見せてくれた。
私は抱きついたまま、ジッと彼女の人間でいう犬歯にあたるものを見つめる。
「……尖った歯……美人さん……吸血鬼さん⁉」
私の脳はすぐにその答えを導き出した。頭に浮かぶのは、以前ファンタジー系の映画で美人女優が演じていた、妖艶な吸血鬼。
うん、チュチュリナさんのイメージと重なる。
「正解よ! フフ……美人さんだなんて久々に言われたわ」
ニコニコと嬉しげな笑みを浮かべるチュチュリナさん。
その背後では、吹っ飛ばされて気絶しているガルゥさんが他の魔族に助け起こされていた。
……見た目はともかく、確かにチュチュリナさんは間違いなく魔族だ。
「さて、その格好からして誰かにお手紙でも持ってきてくれたのかしら?」
コテンッと首を傾げて訊ねてくるチュチュリナさんに、ブンブンと勢いよく何度も頷く。
「ヒュ、ヒューマ国の王様から、魔王様にお届けものです‼ 渡すんで、さっさとお家に帰らせてください‼」
私は必死に訴えながら鞄の中身を取り出して、チュチュリナさんに託そうとした。
しかし、そんな私の様子を見て、チュチュリナさんは少し眉尻を下げた。そして申し訳なさそうに私を手で制する。
「悪いけれど、ヒューマ国の王から魔王様宛てのお届けものなら、直接渡してもらえるかしら? こうやって異世界のお客さんに届けさせるって事は、大切なものでしょうしね。それに、ここからヒューマ国への転移は、魔王様にやってもらうのが一番安全よ?」
苦笑を浮かべたチュチュリナさんは「他人を転移させる時、精度が低いと体が千切れたり王都から離れた森の中に落とされたりする事があるのよねぇ」と、とても恐ろしい事を口にした。
……ええ、もちろん、鞄の中に入れた手はすぐに下ろしましたとも。
ただ不安な思いをする時間が延びるだけなのと、命の危険度が増すのだったら、怖くても安全なほうを取ります。命大事。
「……えっと、魔王様はどちらに?」
上目遣いでチュチュリナさんを見ると、「あら可愛い。お人形さんみたいね」と意味のわからない事を言って、私の頭を撫でてくれた。それから機嫌よさそうに彼女が飛んできた方角を指差す。
「魔王城の執務室で仕事しているわよ。連れて行ってあげるわ」
なんの気なく指し示されたほうに視線を向ける。険しい岩山のようなところの上に、如何にも魔王城といった雰囲気の、黒くおどろおどろしい巨大な城が建っていた。
「……えっと、連れてってくれるって、まさか徒歩であそこまで行くんですか?」
私は運動は嫌いではないけれど、決して体力があるほうではない。軽く眩暈を覚えた。
「え? 飛んでけばいいじゃない」
チュチュリナさんは私の言葉に、キョトンとした表情を浮かべる。
彼女は「何を言ってるんだこいつは」と言うように私を見た後、バサリッと音を立てて蝙蝠のような黒い翼を広げた。一体何処にしまっていたのだろう。
視線で早く羽を出すように促されて、頬が引き攣る。
「私、飛べないんですけど……」
まるで翼があって当たり前みたいな口調で言うから、ないと答えるのは凄く気まずいけれど、ないものはないのだから、正直に伝えるしかない。
「魔法で飛ぶのは?」
「私の世界に魔法はありません」
次の提案にも、首を横に振るしかなかった。
私を心配してくれたらしいフルルさんが、いつの間にかドーナツ状に変形して私の足元を囲い、私の顔を窺っている。
……うん、多分窺ってるんだと思う。表情が変わらないから、よくわかんないけど。
「フルル……モグモグシテ……ハコブ?」
「いえ、モグモグは勘弁してください」
さっきまで私を癒す役をしてくれていたフルルさんには大分慣れてきた。だから、『モグモグ』は捕食ではなく別の行動なんだろうというのは、なんとなく察する事が出来る。
でも、モグモグという時点で、たとえ安全ではあったとしても絵面的に非常に微妙そうだから、全力で遠慮させていただく。
「う~ん、俺が運んでもいいけど……嬢ちゃん、俺じゃあ怖いよなぁ?」
ガルゥさんを救出していたトーロンさんが、無事彼を柔らかそうな草の上に寝かせた後、こちらの会話に入ってくる。
さっきまで怯えていた私に気を遣ってくれているのか、少し距離を置いての参加だ。
……トーロンさん、大きいから見た目は怖く感じるけれど、もしかしたらこの中では一番気性が穏やかで紳士的なのかもしれない。
ちなみに、草の上に寝かせられているガルゥさんは、骸骨さんに治癒魔法的なものを掛けてもらっているようだ。生きてはいるみたいだけど、チュチュリナさんのハンマーの威力は見た目通り強力で、結構な打撃を受けたっぽい。
こうしてみると、ガルゥさんの言いたかった『人間っぽい』の真意が、少し見えてきた気がする。
「まぁ、そういうわけで、今は配達員=羊族のイメージが強いから、この帽子を被って行けば、何も言わなくても一目で用件が伝わるはずだ」
王様はそう言うと、一人脳内ツッコミをしていた私の肩に鞄を掛け、羊の角付き帽子まで被せてきた。
「ちょっと、待ってください‼ 私、まだやるとは言ってませんから‼」
慌てて文句を言うと、王様はいい笑顔で親指を立てる。
「大丈夫だよ。転移の魔法で魔王城のすぐ傍に飛ばすから、君はちょこっと歩いて魔王城に行って、用件を伝えて魔王に会って手紙を渡して、返事をもらって魔王に転移の魔法でこちらまで飛ばしてもらえばいいだけだから」
え? 何? 帰りは魔王様に送ってもらう感じなの⁉ それって、向こうに行ったら最後、魔王様に会うまで帰れないって事⁉
「いや、魔王城に行くってだけでかなりハードル高めですよね⁉ しかも、魔王様って普通ラスボスで、そんなに気軽に会える人じゃないですよね⁉ ってか、転移の魔法があるなら、手紙だけを魔王様に送ればいいですよね⁉」
「大丈夫、大丈夫。異世界人なら丁重にもてなしてもらえるはずだから。異世界人に手を出すと、この世界の誰であれ天罰が下るからね。それは魔族も魔王も例外じゃないから。あと、転移の魔法で送れるのは魔王城の外までで、着地点も一キロメートル前後の誤差があるから、魔王の手に確実に渡るかわからないんだよ。もし万が一悪意のある第三者が拾って、手紙の内容を読んで勝手に破棄したり、改ざんして魔王に渡したりしたら、うちは魔王に滅ぼされかねないからね。君に直接手渡してもらうしか、方法がないんだよ」
王様が満面の笑みで立ち上がり、テーブル越しに私の両肩にポンッと手を置く。
「この国の未来は、君のその両肩に掛かっている」
人の肩に勝手に重いものを載せないでください‼
「荷が重すぎます‼」
「大丈夫、大丈夫。そのバッグはマジックバッグになってるから、そんなに重くはないだろう? あとは魔王にその鞄の中にある手紙などを届けるだけの簡単なお仕事だよ。あ、そうそう。マジックバッグの中に魔王への詫びの品もいっぱい入ってるから、ついでに渡してきてくれ」
鞄は王様の言う通り重くはないけど、そういう意味じゃない‼
「一国の未来が懸かってる簡単なお仕事って、なんか矛盾してませんか⁉ ってか、誰も物理的な荷の重さについては言及してませんから‼」
私の全力のツッコミを、王様は「ハッハッハッ」と笑って受け流す。
どうしよう。急な展開すぎてついていけない。
そんな私を置いて、話は勝手にどんどん進んでいる気がする。
というか、私の意思を無視して、強引に押し進められている気がする‼
「それだけ元気に返答が出来れば大丈夫そうだね」
「さっきから、無駄に大丈夫大丈夫って言ってますけど、全然大丈夫じゃありませんから‼」
もしかしたら王様的には本当に大丈夫なのかもしれない。
だけど、いきなり異世界に引っ張り込まれて、王様の言葉しか頼るものがない上に、それすら信じていいのかわからない現状は不安しかない。
「あ、そうそう。報酬は期待してくれていいからね。異世界人への報酬は金貨で支払うから、家に帰ってから何処かで換金してもらう事にはなるけど。金属としての価値は異世界と一緒だから安心してね」
「ちょっと、私まだやるって言ってないんですけど⁉」
引き受けてないのに、いきなり報酬の話をされても困る。
もしかしたら、凄く割のいいバイトなのかもしれないけれど、それはあくまで命あってのものだ。私は危険を冒してまでお金を稼ぎたくない。
……って、思ってるのに、何故か足元が光ってるんですけど⁉
魔法陣っぽいものが浮かび上がってるんですけど⁉
周囲を見回せば、王様の後ろに控えていた人の中の一人……私をこの世界に召喚した魔術師さんが、詠唱っぽいものをブツブツ小さな声で唱えてる。
「え? えぇ⁉ ちょっと何やってるんですか⁉」
慌てて魔法陣っぽいものから出ようとすると、私の両肩に添えられている王様の手に力が籠った。
見た目はそんなにマッチョな感じじゃないくせに、意外に力のある王様。私が暴れてもびくともしない。
「大丈夫、大丈夫。君の世界で言うところの『案ずるより産むが易し』ってやつだよ。初めは不安いっぱいだと思うけど、一度行ってみれば『なぁんだ、こんなもんか』って感じになるからね。本当に危険はないから」
ニコニコと微笑みながら、私の逃亡を妨げる目の前の王様は、もはや悪徳業者にしか見えない。
キッと睨みつけてみても、「こればかりは一度やってみないと、納得してもらえないと思うから。悪いね?」と苦笑を浮かべるのみで、手を離してくれる気配はない。
そうこうしている間に、足元の魔法陣らしきものの放つ光が、一気に強くなった。
「それじゃあ、頼んだよ」
「ちょっ! 酷いっ‼」
目の前が光で真っ白に染まる。眩しくて目を瞑った瞬間、肩にあった王様の手の感触が消え、浮遊感に襲われた。
抗議の声虚しく、私は魔王様の許へと送られたのだった。
2 初仕事です(拒否権無し)
浮遊感が消えたと思った瞬間、私の体は重力に従い落下した。その感覚に驚いて身を竦ませながら叫び声を上げる。
「ヒャッ‼」
「ワプッ‼」
ポヨンッ……
そんな私を待っていたのは、ふんわりとした柔らかいクッション……ではなく、何やらプニプニとした感触だった。例えるなら、弾力のある水饅頭のような。
……そして私の気のせいでなければ、その水饅頭もどきは、今声を発していたような気がする。
「…………」
「…………」
ポインッポインッポイン……
私の体による衝撃の余韻で、震えている水饅頭もどき。
乗っている私も一緒に、緩やかに上下に動く。
……どうしよう。状況確認するのが怖くて目が開けられない。
遠くのほうでは、キィキィと甲高い声で鳥的な何かが鳴いているのが聞こえる。
肌に纏わりつくような空気は、さっきまでいた王宮のものとは全く異なっていて、ここが屋外なのは目を開けなくてもわかる。
ってか、さっきの話の流れからして、ここって魔国とかいう場所だよね?
そして私の世界でも世にも恐ろしいと有名な魔王様が、近くにいるという……。まあ、この世界の魔王様と同じなのかはわからないけど。
ヤバい、私は結構肝が据わってるほうだと思ってたけど、ちょっと体が震える。
「……ダイジョブ?」
何処からともなく小さな子供のような高い声が響いて、更にフルフルとしてしまう。
……あ、違う。これは水饅頭もどきが震えているんだ。
「イセカイノヒト……ケガ……ナイ?」
拙い言葉で訊ねられるたびに、呼応するように震える水饅頭。
うん。この声、確実に水饅頭が発している。
「フルル……シンパイ……トリコンデ……ハコブ?」
う~ん、フルルってのはもしかして、名前だろうか?
……って、ちょっと待って! 今、この子、もしかして『取り込む』って言った⁉
「モグモグスル……?」
「いやぁぁぁ! ちょっと待って‼ モグモグはしないでぇぇ‼」
顔から血の気が引いて、慌てて叫んだ。そりゃもう必死で。
せめてもの抵抗として瞑っていた目も、咄嗟に開いてしまった。
目に映るのは、昼間のはずなのに薄暗く、木々も大地も何処となく黒みを帯びている怪しい森。
でも、そんな事を気にしている余裕もなく、水饅頭の上からワタワタと下りた。焦りすぎて、転びそうになってしまう。
「アブナイヨ?」
すると水饅頭は「……モグモグシナイ……モグモグシナイ……」と呟きながら、触手のように体の一部を伸ばして、私を支えてくれた。その時、やっとその正体をはっきりと見る。
うん、想像していた通り水饅頭みたいな姿だけど、中に餡こは入っていない。
……ってか、この直径一メートル半くらいの大きさの水饅頭は、ゲームに出てくるとても有名な魔物によく似ている。
「……スライム?」
思わずそう呟くと、水饅頭は何処か恥ずかしげにフルフルと震えた。
「フルル……スライム。ユーメイ?」
顔は何処にあるかわからないけれど、なんとなく私のほうを向いている気がする。
あ、よく見たら、凄くわかり難いけど小さなつぶらな目が付いてた。そうなると、やっぱりこっちを見ている。
サイズが本物の水饅頭程度だったら可愛く思えたんだろうけど、如何せん大きすぎるので怖い。
本当に私一人くらいなら、余裕でその体内に取り込めるだろう。
どうしていいかわからず、固まってしまう。すると、私の背後でガサッと音がした。
それと同時に獣の唸り声と、低く威圧的な男性の声が聞こえる。
「グルゥゥゥ。おい、今こっちに侵入者の反応があったぞ‼」
振り向きたくないのに、振り向かずにいるのもまた怖くて、恐る恐る首を動かした。
「なんだぁぁ? 異世界人かぁ?」
……粗野な口調がよくお似合いですね、狼男さん。あぁ、ここは敢えてライカンスロープさんと呼んだほうがよろしいでしょうか?
戦闘関係のお仕事をされているのか帯剣されてるんで、なんとなく狼男というよりは片仮名で呼びたくなるんですよね。勝手な私のイメージですけど。
って、そんな事はどうでもいい。
私の前に現れたのは、二足歩行をしながら言葉を話す、大きな狼だった。
凄まれるたびに剥かれる牙に、体がビクリッと反応するのを止められない。
ヤバい。スライムのフルルさんより、よっぽどこっちのほうが怖い。
どうしよう。私、泣きそうだ。というか、もう涙出てきてる。
「……ガルゥ……イセカイノヒト……ナカセタ……」
フルルさんがライカンスロープのガルゥさん? に非難の視線を向けた。
「おい、フルル! 人聞きの悪い事言うんじゃねぇ‼ おいぃぃ、嬢ちゃん、泣くんじゃねぇ‼ グルゥゥゥ」
「ヒッ!」
ガルゥさんに顔を近づけられ、牙を剥かれ、つい喉の奥を引き攣らせる。
本能的に恐怖が背筋を這い上がり、ボロボロと涙が零れ落ちた。
ど、どうしよう。泣いたら怒られるのに、止まらない。
ガルゥさんは、困ったように頭を掻く。
「あ~、どうすっかなぁ。異世界人の郵便配達が魔界まで来るぐれぇだぁぁ。きっと魔王様に用事だろぉぉ? 首の後ろ噛んで魔王様の所へでも連れて行くかぁぁ?」
く、首の後ろ噛まれるの⁉
「ヒィィ‼ モグモグもガブッも勘弁してください‼」
泣きながら何度も土下座して、必死に懇願する。
けれど、何がいけないのかわからないとでもいうように、不思議そうにしているガルゥさんとフルルさん。
そうこうしているうちに、色とりどりのスライムや、動く骸骨、角の生えた巨大熊、如何にも毒を持ってそうな巨大トカゲに巨大カエルといった、様々な魔族が私の周りに集まり始めた。
私はもはや恐慌状態。異世界転移しているだけでもキャパオーバー気味なのに、こんなところにいきなり放り込むなんて、貴方は鬼ですか、王様‼
心の中でいくら罵倒しても、私の声は王様には届かないし、状況は変わらない。
私はフルルさんに抱きついて、その感触に少しでも癒しを求めつつ、泣きながらプルプルと震える事しか出来ない。
フルルさん、初めは怖いなんて思ってごめんなさい。他の如何にも攻撃してきそうな見た目の人達に比べたら、大きいだけで無害そうな君達スライムは全然ましでした。
今もフルルさんは触手で私の頭を撫でてくれているしね。ただそれでもまだ、そのままモグモグされそうって思っている自分もいる。
いや、他の人達も見た目が怖いだけで、攻撃されているわけじゃないんだけどね?
でも、本能的な恐怖が消し去れないんだよ。
あぁ、もうお家帰りたい。
「なぁ、どうする? 完璧に怯えちまってるぜ?」
骸骨さんがガルゥさんに話しかける。
「あぁぁ? まぁ、俺らは人間には見慣れねぇ容姿してるかんなぁ。そうか! じゃあ、人間に近い容姿のやつ連れて来りゃいいじゃねぇか‼」
ガルゥさんが、名案を思いついたとばかりに声を明るくして走り出す。
ええ、そうしていただけると大変有難いです。少しでも人間に近い見た目の人が傍にいてくれれば、この状況にも少しは慣れられる気がするんで。
声も出せずにフルルさんにしがみついていた私は、少しだけホッとして体の力を抜いた。
暫くすると、ズシィィン……ズシィィン……と地響きのような大きな音が響いてくる。
って、一体何事⁉
思わず、フルルさんを形が変わる程抱きしめてしまった。腕の中から「ウプッ⁉」と小さな声がする。
でもとにかく怖かったので、心の中で「ごめんね」と呟きながらも、腕の力は緩めなかった。
「お~い、人間っぽいやつ連れて来たぜぇぇぇ」
地響きが止まると同時に、遠くのほうからガルゥさんの声が聞こえた。
「人間っぽいやつ」という言葉に一縷の希望を抱いて、フルルさんから顔を上げる。
……さっきまでの、人っぽくない人達しかいない。
骸骨さんが私の視線に気付いて、上を指差した。
……上?
嫌な予感を覚えつつ、視線を少しずつ上に向けていき……
「ヒキャァァァァ‼」
恥も外聞もなく叫んだ。
だけど仕方ないと思う。
人間っぽいやつと聞いて、誰がトロールを連れて来ると思うだろうか?
少なくとも、私は十メートル以上の巨体の魔族を『人間っぽい』とは認めない! 認めないんだからぁぁぁ‼
私の気持ちが伝わったのか、トロールさんはゆっくり口を開く。
「ほら見ろ、ガルゥ。やっぱり俺みたいなデカイやつじゃ駄目じゃねえか。異世界の嬢ちゃん、更に怯えちまっただろ?」
「ハァァァ⁉ こんなに見た目が人間っぽくても駄目なのかぁぁ⁉」
「多分、俺じゃあ人間には人間っぽくは見えねぇんだって」
トロールさんの言葉に、私はブンブン頷いた。
腕の中では相変わらず、フルルさんがフルフルしている。
「トロールのお前以上に人間っぽいやつなんているかぁぁぁぁあ?」
意気揚々とトロールさんを連れて来た、ガルゥさんが不満そうな声を上げる。
いや、色々いるよね⁉
トロールさんに比べたら、まだガルゥさんのほうが(サイズ的に)人間っぽい気がするよ⁉ え? 何? フォルム的な問題なの?
あぁ、もう。ここの『人間っぽい』の基準がよくわからない。
あまりの感覚のズレに、目の前が真っ暗になるような気がした。
私がフルルさんに癒しを求めつつ、軽く絶望しかけた時……女神が現れた。
「あんた達ぃぃぃぃぃぃ‼ 何、異世界のお客様怯えさせてんのよぉぉぉぉぉ‼」
ビュォォォォォという大きな風の音を立てながら、上空からこちらに一直線に降下してくるのは、メイド服の美女。彼女は身の丈程もある巨大なハンマーを持っている。
耳が少し尖っているけど、凄く人間っぽい美女‼
やっと見た目的に話しやすそうな魔族が登場して、私はフルルさんを抱きしめながら感動する。
そんな私の前で、彼女は巨大ハンマーを横に振って、トロールさんの頭を吹っ飛ばした。
そして、その反動を使って空中で一回転したあと、ガルゥさんの頭上へとハンマーを振り下ろす。
ズドォォォォォン……
トロールさんが倒れた音と、ガルゥさんがギリギリで避けたハンマーが地面に叩きつけられる音が、同時に響く。
砂ぼこりが立ち、私達の視界がクリアになるまでの間、そこには静寂が流れた。
やがて美女がハンマーを振り下ろした体勢から、ゆら~りと上体を起こす。
「ガルゥ、なぁに避けてくれちゃってんのぉ?」
「キャインッ! チュ、チュチュリナ、避けなきゃ死んじまうだろぅ⁉」
チュチュリナと呼ばれた美女に凄味のある笑みを向けられ、ガルゥさんは尻尾を足の間に入れて全身の毛を逆立てながら訴えた。
「大丈夫よ、多分。ほら、トーロンは平気そうだし?」
チュチュリナさんは満面の笑みを浮かべ、ハンマーで横殴りにしたトロール――トーロンさん? を指差す。
「ごめん、ごめん、チュチュリナ。異世界人の嬢ちゃんが怯えてるから人間ぽい見た目のやつのほうが話しやすいだろうって言われて連れて来られたんだけど、やっぱり俺じゃ駄目だったみたいだ」
さっき思いっきり吹っ飛ばされたはずのトーロンさんは軽く頭を振った後、まるで何事もなかったかのように立ち上がり、乱入してきたチュチュリナさんに謝った。
「ほら見ろ」と言わんばかりに腰に手をあてて、その豊満な胸を張るチュチュリナさんに、ガルゥさんがキャンキャン吠える。
「トーロンは頑丈だからだろぅ⁉ 俺は繊細なんだよ‼ チュチュリナのハンマーなんてまともに受けたら確実にお陀仏だってぇの‼」
……うん、吠えるっていうのが凄くぴったりくる。
そんな光景を暫く呆然と見た後、私はハッとしてチュチュリナさんに向かって走り出した。
「や、やっと会えた! 人間っぽい人‼ っていうか、人間っぽい魔族‼」
「……あら?」
勢いよく抱きついた私を、チュチュリナさんは難なく受け止めてくれる。巨大ハンマーを片手で振り回せる腕力を持っているだけある。
彼女はちょっと意外そうな表情はしているけれど、優しそうな笑みを浮かべてくれた。
問題なのは、その他大勢の魔族の人達。
ガルゥさんを筆頭に、口がある人は皆、口をあんぐりと開けている。ちなみに口がない人……フルルさん以外のスライムさん達は、全身をトゲトゲにして驚きを表現してた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ⁉ おいぃぃぃ、こいつの何処が人間っぽいって言うんだよぉぉ? こいつに比べたら、俺のほうがまだ人間っぽいだろうぅぅ?」
「異議あり!」とばかりに、ガルゥさんが私に詰め寄る。
私はチュチュリナさんに抱きついたまま、クルリッと彼女の後ろに隠れる。そしてひょこっと顔を出した。ちなみに、チュチュリナさんは私より頭一つ分くらい背が高く、隠れるのには丁度いいサイズだった。
「……見た目です、見た目! 耳がちょっと尖ってるだけで、凄く人間っぽい美女さんです‼」
私は文句を言うガルゥさんに言い返す。少しこの状況に慣れてきて、更にチュチュリナさんという人間っぽい上に強そうな仲間を得た事で、余裕が出てきた。
「お前ぇ、こいつがさっきした事見てなかったのかよぉぉ⁉ 見た目が多少人間っぽくっても、こいつの狂暴さは、魔族でも折り紙付きだ……ブフッ……」
ガルゥさんが吹っ飛んだ。……チュチュリナさんの手に握られたハンマーによって。
「フフ……尖っているのは耳だけじゃないわよぉ?」
自分が吹っ飛ばしたガルゥさんに一切見向きもせず、チュチュリナさんは笑顔で尖った歯を自慢げに見せてくれた。
私は抱きついたまま、ジッと彼女の人間でいう犬歯にあたるものを見つめる。
「……尖った歯……美人さん……吸血鬼さん⁉」
私の脳はすぐにその答えを導き出した。頭に浮かぶのは、以前ファンタジー系の映画で美人女優が演じていた、妖艶な吸血鬼。
うん、チュチュリナさんのイメージと重なる。
「正解よ! フフ……美人さんだなんて久々に言われたわ」
ニコニコと嬉しげな笑みを浮かべるチュチュリナさん。
その背後では、吹っ飛ばされて気絶しているガルゥさんが他の魔族に助け起こされていた。
……見た目はともかく、確かにチュチュリナさんは間違いなく魔族だ。
「さて、その格好からして誰かにお手紙でも持ってきてくれたのかしら?」
コテンッと首を傾げて訊ねてくるチュチュリナさんに、ブンブンと勢いよく何度も頷く。
「ヒュ、ヒューマ国の王様から、魔王様にお届けものです‼ 渡すんで、さっさとお家に帰らせてください‼」
私は必死に訴えながら鞄の中身を取り出して、チュチュリナさんに託そうとした。
しかし、そんな私の様子を見て、チュチュリナさんは少し眉尻を下げた。そして申し訳なさそうに私を手で制する。
「悪いけれど、ヒューマ国の王から魔王様宛てのお届けものなら、直接渡してもらえるかしら? こうやって異世界のお客さんに届けさせるって事は、大切なものでしょうしね。それに、ここからヒューマ国への転移は、魔王様にやってもらうのが一番安全よ?」
苦笑を浮かべたチュチュリナさんは「他人を転移させる時、精度が低いと体が千切れたり王都から離れた森の中に落とされたりする事があるのよねぇ」と、とても恐ろしい事を口にした。
……ええ、もちろん、鞄の中に入れた手はすぐに下ろしましたとも。
ただ不安な思いをする時間が延びるだけなのと、命の危険度が増すのだったら、怖くても安全なほうを取ります。命大事。
「……えっと、魔王様はどちらに?」
上目遣いでチュチュリナさんを見ると、「あら可愛い。お人形さんみたいね」と意味のわからない事を言って、私の頭を撫でてくれた。それから機嫌よさそうに彼女が飛んできた方角を指差す。
「魔王城の執務室で仕事しているわよ。連れて行ってあげるわ」
なんの気なく指し示されたほうに視線を向ける。険しい岩山のようなところの上に、如何にも魔王城といった雰囲気の、黒くおどろおどろしい巨大な城が建っていた。
「……えっと、連れてってくれるって、まさか徒歩であそこまで行くんですか?」
私は運動は嫌いではないけれど、決して体力があるほうではない。軽く眩暈を覚えた。
「え? 飛んでけばいいじゃない」
チュチュリナさんは私の言葉に、キョトンとした表情を浮かべる。
彼女は「何を言ってるんだこいつは」と言うように私を見た後、バサリッと音を立てて蝙蝠のような黒い翼を広げた。一体何処にしまっていたのだろう。
視線で早く羽を出すように促されて、頬が引き攣る。
「私、飛べないんですけど……」
まるで翼があって当たり前みたいな口調で言うから、ないと答えるのは凄く気まずいけれど、ないものはないのだから、正直に伝えるしかない。
「魔法で飛ぶのは?」
「私の世界に魔法はありません」
次の提案にも、首を横に振るしかなかった。
私を心配してくれたらしいフルルさんが、いつの間にかドーナツ状に変形して私の足元を囲い、私の顔を窺っている。
……うん、多分窺ってるんだと思う。表情が変わらないから、よくわかんないけど。
「フルル……モグモグシテ……ハコブ?」
「いえ、モグモグは勘弁してください」
さっきまで私を癒す役をしてくれていたフルルさんには大分慣れてきた。だから、『モグモグ』は捕食ではなく別の行動なんだろうというのは、なんとなく察する事が出来る。
でも、モグモグという時点で、たとえ安全ではあったとしても絵面的に非常に微妙そうだから、全力で遠慮させていただく。
「う~ん、俺が運んでもいいけど……嬢ちゃん、俺じゃあ怖いよなぁ?」
ガルゥさんを救出していたトーロンさんが、無事彼を柔らかそうな草の上に寝かせた後、こちらの会話に入ってくる。
さっきまで怯えていた私に気を遣ってくれているのか、少し距離を置いての参加だ。
……トーロンさん、大きいから見た目は怖く感じるけれど、もしかしたらこの中では一番気性が穏やかで紳士的なのかもしれない。
ちなみに、草の上に寝かせられているガルゥさんは、骸骨さんに治癒魔法的なものを掛けてもらっているようだ。生きてはいるみたいだけど、チュチュリナさんのハンマーの威力は見た目通り強力で、結構な打撃を受けたっぽい。
こうしてみると、ガルゥさんの言いたかった『人間っぽい』の真意が、少し見えてきた気がする。
0
お気に入りに追加
406
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。