ノンケの光一くん〜ノンケだけどお金が欲しいからお尻を開発する話〜

あしまる

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不器用な友人

後悔させんなよ

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「もうわかったからとりあえず離せよ」

 相変わらずおれは駿に後ろから抱きつかれたままの状態になっている。いくら冷房が効いてるとはいえ夏場にこれは暑苦しい。

「まあその前に俺の提案を聞いてくれ」

 駿はお構いなしといった様子でスマホを操作しとある画像フォルダを開く。

「え、なにこれ……?」

 そのフォルダには数々のゲイビデオの表紙のパッケージの画像が並べられていた。

「ビデオに出るためのお勉強だよ」
「お勉強?」
「AVにも色々なジャンルがあるからな、例えばこれ」

 駿が開いた画像には「猥褻ノンケ○校生」といかにもそれっぽいタイトルがついたビデオの表紙が載っていた。

「高校生のノンケが先生や生徒に犯されるっていう設定」
「へー、こういうのが人気なの?」
「俺の趣味じゃないが、人気シリーズだし光一の見た目なら違和感ないだろう。ただ」
「ただ?」
「こういう設定ものは演技をする必要がある」
「うーん、おれ演技とかやったことねぇし自信もないぞ」

 「それなら」と言って駿は別のタイトルを探す。次の作品は「ノンケ生搾り」とかいうこれまた変態チックなワードが並べられている。これはシチュエーションは特になくノンケの反応を映すことを一番の売り文句にしている。射精メインの動画で挿入はないようだ。

「え、こういうのあるならケツの練習とかいらないじゃん」
「あー言われてみたらソウダネー」
「棒読みじゃねぇか絶対わかってただろ!」
「せっかくノンケならちゃんと挿入までみたいだろ?」
「いやおれは見ないし!」

 始めからこのジャンル薦める気ないのにわざわざ見せてくるあたり意地悪だよなほんとに。

「まあ、ここからが本題なんだが」
「始めから本題に入れ」

 駿が指で画面をフリックすると別の作品が現れる。そこにはやけにガタイの良いゴーグルをかけた男がでかでかと映っている。おれはその姿を見てはっと気付く。

「えっこれ、駿?」
「おお、よく分かったな」
「まじ!?」

 目元が隠されていても流石に駿だとすぐに気付いた。いやすぐに気付いたのはハヤトのアカウントで駿の裸体を見まくったせいなんだが……。

「駿ってやっぱ出てたんだ……」

 ハヤトが昔ゲイビデオに出てたと駿は前に言っていた。冗談なのかもと思っていたけど本当だったようだ。

「高校卒業してすぐだから18の時に」
「なんで出たの?」
「俺のタイプの男が見つからなさすぎて飢えた結果」
「……駿って変な方向に思い切りいいよな」
「お前に言われたくはない」

 駿がゲイビデオに出てたのは驚きだけど、この作品はゲイ同士の普通のセックスって感じの作品でおれとは特に関係なさそうに見える。

「それで、このビデオがどうしたの?」
「実は俺、事務所から凄い再出演のオファー来てるんだよね」
「ほー人気なんだ?」

 確かにあの裏垢の動画を見たら駿のセックスの上手さは一目瞭然だ。その上体格も顔もいいとあれば向こうも放っておかないだろうな。

「出たらいいじゃん」
「別に俺いま相手にも金にも困ってないし」
「うわー言ってみてぇ」
「でも」

 そう呟くと一瞬間を置いた。顔を上に向け駿の方をちらと見ると駿はおれの顔をじっと見ながら腰に手を回してぎゅっと掴んで言う。

「光一の相手なら出てもいいよ」
「……へっ?」

 何を言っているのか理解ができずしばしフリーズしていると駿の指が服の上から乳首をなぞる。

「あっ……おいっ!」

 思わず高い声が漏れてしまった。あれから一人でシコる時に乳首をいじる癖が出来たせいで敏感になっていたのだ。離れようとするも駿の力には敵わずされるがままとなってしまう。

「嫌なら構わないけど」

 乳首をゆっくりと撫でながら駿は言う。

「あ、そんなのっ、ん……嫌にきまってんだろ……」
「本当に? 俺が相手ならきっとギャラも弾むよ」
「そ、それは……あんっ」

 乳首を摘まれて先端をぐりぐりと擦られる。力加減が絶妙で声が我慢できない。

「俺なら光一の痛がることしないし安全だよ」
「ぅあっ……ちょ、ちょっとストップっ……!」

 気持ちよさでじんじんして話が頭に入ってこない。おれは力の入らない手をなんとか動かして駿の腕を掴む。するとようやく指が乳首から離れる。

「はぁ……はぁ……」
「にしてもちょっと触っただけで感じすぎだろ」
「し、しかたないだろ!」

 また触られないように腕で胸をガードする。すると今度は下半身の方に手を伸ばして太ももを撫でてくる。

「だからそれやめろって……!」
「足触ってるだけだろ。それともこれでも感じちゃうの?」
「し、しねーよ!」

 じゃあと言って楽しそうに足を撫でてくる。ぞわぞわとこしょばゆい気持ちが広がるが会話に支障が出るほどでもないので放っておく。

「つーか、駿っておれタイプじゃないんだろ……?」
「タイプじゃないな。でもヤれないわけではない」
「なんだよそれ~」
「じゃあ光一はリョウタさんがタイプだったのか?」
「え? いや、違うけど……」

 そもそもおれは女の子が好きだし、男はタイプじゃないからありえないけど、でも普通に男とセックスしたんだよな……。じゃあ駿がタイプじゃないおれとヤるのもおかしくはないのか……?。

「でも駿に悪いよ。友達同士でヤるの気まずいし、駿だって嫌だろ?」
「俺は別に構わないけど」
「え!? 何でだよ!」
「それは……記念に?」
「はあ?」

 自分でもめちゃくちゃなことを言っている自覚があるのか発言の後にふふっと笑みをこぼす。 

「せっかく光一が男とヤれる体になったんなら一度はヤってみたいだろ」
「俺はならねぇよ!」
「ふーん」

 駿の大きな手がおれの短パンの中へするりと入って直に内ももを撫でる。その刺激にびくっと体が震える。

「光一、俺の動画で抜いてただろ」
「っ!……し、してねぇよ……っ」
「ほんと素直だよな、嘘ついてもすぐ分かる」
「う、うそじゃ、あんっ」

 内ももから更に中に進みパンツ越しにおれの陰茎をさっと触る。一瞬の強烈な快感に腰が浮いてしまう。

「あの動画みたいにセックスしたいって思わなかった?」

 指でさわさわと上下に撫でられると思考が快楽に引きづられる。己の快楽への耐性の弱さに恥ずかしくなりながらも、もっとして欲しいという気持ちがこみ上げてくる。声を漏らしながら動画の内容を思い出す。駿のデカマラで中を激しく犯されたらどれだけ気持ちいいだろうか。想像しただけで尻の穴がキュンと狭まってしまう。でもいくらなんでも友達とセックスするなんて、そんなの恥ずかしすぎる。

「ぅあ、し、しゅんっ……やめ……あっ」
「……分かった」

 かろうじて絞り出した声で頼むと駿は指を止める。自分で言っておきながら離れていく駿の手を物欲しそうに見つめてしまう。

「光一が本当にしたくないならやらない」
「へ……?」

 駿は俺の肩に頭をうずめて呟く。俺を抱く体がわずかに震えているような気がする。おれは少し戸惑ったのち、なんだかむかむかしてきて駿の額にデコピンを食らわせる。

「いたっ!」
「お前なぁ、ここまでやっといて揺れるなよ!」
「だって……嫌われたらいやだし……」

 親に叱られた子供のようにしょんぼりとする駿に再びデコピンを浴びせる。

「じゃあ最初からこんなことすんな!」

 駿は反省したのかおれの体をそっと離す。おれは向きを変えて向かい合うようにして座る。

「別に今更嫌いになったりなんかしねぇから落ち着けよ」
「……悪い、なんか光一の動画見てたらヤりたくなって……。」
「……あっひょっとして、最近やけにボーっとしてたのってそれが原因?」
「うん、今まで小動物みたいに思ってたのがなんか急にエロく見えて」
「小動物みたいだと思ってたのかよ」

 それはそれで腹が立つがおれもあまり人のことは言えない。何故ならおれも駿の動画を見て以降少なからず駿に性的な魅力を感じてた部分はあったし、抱きしめられてるのもなんだか心地よかった。

「……はあ~~~」
「なんだよ、深いため息ついて」

 駿はなんでも器用にこなす癖に人間関係のことになると途端に不器用になる。正直に打ち明けて引かれるのが怖いからと遠回しにビデオに出演しようと口実作りを図ったり、おれが快楽に流されやすいのを利用してなし崩し的に行為に及ぼうと試みたりしておいて結局自分が耐えられなくなってしまったのだ。

 おれが思うよりずっと駿にとっておれは大事な存在なんだろうなと思うと軽率に見知らぬ男とセックスしたことは悪いことだったのかもしれないと反省する。
 
 駿は何も言わないおれの顔をじっと眺めている。恐らくあのまま続けていたらおれは間違いなく流されていたしそれが原因で駿を嫌うこともなかっただろう。そこにおれの答えが出ていることに気付く。

「……いいぜ、ヤっても」
「え、え?」
「その代わり、後悔させんなよ?」

 ニヤリと笑って駿の手を掴み、恋人繋ぎのように絡める。驚いて口を開けていた駿はその手を見つめるといつもの不敵でクールな表情に戻り喉を鳴らす。そしておれの体を力強く引き寄せ抱きしめると耳元で呟く。

「後悔するぐらい気持ちよくしてやるよ」

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